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SEEDATA

【エスノグラフィーの事例】介護の現場のエスノグラフィーから生まれたプロダクト

今回はSEEDATAアナリストの岸田さんに、介護の現場のエスノグラフィーと、そこから生まれたプロダクトについてお話していただきました。

犬をかわいがることで人は自発的に健康的な状態を維持できる

岸田(以下:岸)「KMD1年のときに先輩がメインで立ち上げたウェルネスプロジェクトに入っていました。ヘルスケアの中でもとくにウエルネスの文脈で、でも、いかにも介護介護したものではなく、人間と動物の関係によってプラスに変わることがあるんじゃないかということを考えていたんです。

そこで、犬と人間の現場ってどんなものがあるのかを調べていたら、横須賀の老人ホームで、もともと飼っていた犬や猫と一緒に入居できるという施設がありました」

-飼い犬や猫だけでなく、殺処分になりかけた犬や猫たちも一緒に暮らしている、素敵な取り組みですね。

岸「そこでエスノグラフィーをさせていただいたのですが、施設の中では、犬や猫とおじいちゃんおばあちゃんが分け隔たりなく共存・同居していたんです。

それまでペットを飼ったことがない人でも、犬をかわいがっているおじいちゃんおばあちゃんがたくさんいて、すごくいい空間でした。

あるとき、驚いたのが、車いすのおばあちゃんに犬が近づいたら、おばあちゃんが急に立ち上がったんです。

その瞬間を切り取ってみると、どうやら「犬をかわいがる、世話をする」というモチベーションが、車いすに座って楽にしているという行為よりも、優先度が高くなるということがわかったんです。

犬をかわいがるためなら、多少の苦痛を伴っても、車いすから立ち上がれるという不思議な力が人間の中にはあると気が付きました。

ほかにも、遠くにいる犬の名前を大きな声で呼んで一緒に座ってテレビをみたり、犬にたくさん話しかけたりして、犬も入居者の心や身体に寄り添い、助け、入居犬と入居者の間には深い絆やコミュニケーションがうまれていました。

その中でも、特に人間と犬の関係の深さに驚かされましたね。この世界感を一般社会でもぜひ実現したいと思うようになったんです」

-動物には人間を癒す力があるといわれていますし、納得です。実際どんなプロダクトができたのでしょうか?

岸「この気づきをもとに、先輩が、『犬をかわいがることで、人間は自発的に健康的な状態を維持できるのではないかと』いうことをプロダクトに落とし込んでいきました。ひとつは、骨の形の首輪形デバイスを犬につけて

骨の形のデバイスで犬をかわいがることで、犬も楽しめるし、人間も自発的な運動ができたり、笑顔になったりするので、身体的だけでなく、情緒的な健康状態も保てるというものです」

-たしかに、朝夕と犬の散歩をしているご老人をよく見かけて、自分も歳を取ったら犬を飼いたいなあと思ったりしますね。

「歳をとって一人でいるより、犬を飼っているほうが肉体的にも精神的にも健康でいられる可能性があって、自分がみてあげなきゃという気持ちが、自発的な行動を促すんですよね。動物の世話するという行動は、する側の人も健康状態が保てるのだと見ていて感じました。

年老いて、昔自分が世話をした子どもにお世話されてるだけだとつらいと思うけど、自分がかわいがることができる犬が身近にいてくれることで、自分も誰かの役に立っていると感じられるんでしょうね」

-犬はすごく賢い動物なので、かわいがった分懐いてくれるのも嬉しいですよね。

岸「懐くだけでなく、犬は飼い主が教えることで「お手」や「待て」など、色んなことを学習する力もあります。そこで、飼い主と犬がなにか一緒に目標を達成するということに注目して、もうひとつのは電子絵本のデザインに落とし込みました。

犬と人間が一緒に犬のしつけの絵本を読むことで、犬も育っていくし、その行為が回り回ってご老人の健康状態をよいものにするというプロダクトです」

-犬と人のための絵本ということですか?

岸「あくまで目的としては犬のためですね。エスノグラフィーをしているとわかるんですが、やはり、人が犬によって健康状態をよくしてもらっているというのは違和感があるんです。

あくまで目的は犬のためにする行動であって、犬のためにしたことが、飼い主の健康状態をよくするという形でかえってきているということに重要な意味があるんです。その関係性に注目してデザインを考えました。

犬に「お手」とか、ご飯ができても「よし」というまで食べちゃだめとか、しつけを教える技術は色々あるんですけど、その中でも有名なものにクリック音があります。iPadアプリの絵本を犬と一緒に見ながら、クリック音の要素を入れて、ご飯を出して、この音がするまで食べちゃダメというのを絵本を読み聞かせるような形で教えていくという仕様にしました」

-犬は絵本を聞いて理解することができるんでしょうか?

「どちらかというと、人が犬にしつけをするための教え方の本に近いんですが、犬もiPadには興味深々でタッチしたりするんですよね(笑)。

iPadアプリにしたことの意味は、動いてるものを表示させたり、クリック音を流したり、インタラクションにすることができるからですね。

アプリの対象年齢は70代以降というイメージです。字も大きいのでiPadのほうがご老人は使いやすいというのこともあり、iPadを持っている人も多いんですよね」

老人と犬とiPad。人間と動物の触れ合いが人間によい効果をもたらすことはこれまでも知られていましたが、今後、介護の文脈で動物との関わりがさらに活かされていくかもしれません。今回ご紹介したiPadアプリのようなデバイスが、あくまでさりげなく、その手助けをしてくれることでしょう。

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