SEEDATAではこれまでも当HP内で、エスノグラフィーについての独自の記事を20回以上にわたり掲載してきましたが、2017年12月7日(木)、株式会社NTTテクノクロス様、株式会社マーシュ様と共同で、企業対象のエスノグラフィーのセミナーを開催しました。
SEEDATAアナリスト大川が登壇し、SEEDATA独自のジョブ理論やそこから得られる機会領域について語った前回に続き、今回は当日行われたエスノグラフィー体験の様子をレポートします!
これまでのレポートはこちらから↓
化粧体験を豊かにするヒントを探る、エスノグラフィー体験
セミナーの最後は、当社宮下が登壇し、参加者のみなさんに8分間の化粧動画を見ていただき、気になった行動や疑問に思った行動をどんどん書き出し、「なぜそのような行動を行ったか?」という点を分析をするという、プチエスノグラフィー体験をしていただきました!
エスノグラフィー体験の目的は、インタビューでは見ることのできない生活者の行動を実際に見て、結果として、参加者のみなさんにエスノグラフィーの有効性を肌で感じていただくことです。以下が、動画の詳細になります。
〇動画について
使用された動画は本セミナーのために撮影したものだが、すべて仕込みというわけではなく、SEEDATAが普段行っているインタビューから出てきた内容をもとに作成。また、実際に素の化粧行動も含まれている。
〇観察者(セミナー参加者)の設定
化粧会社に勤務、新商品のタネを探すプロジェクトにアサインされた。商品カテゴリは決まっておらず、化粧体験を豊かにするヒントを探すというミッションがある。テーマが化粧体験と広いため、複数のセグメントを選定し観察をすることにした。今回はその中でも、ポーチの中に入りきる化粧品だけを持つポーチ女子の観察。
〇対象者プロフィール
今回はRさんの自宅に伺い、アルバイト出勤前のメイクの様子を観察させていただき、自己紹介からファンデーションまでの様子を撮影させていただいた動画を上映しました。
また、当日は実際に使っているワークシートを使用、以下のように記入していきます。
左側:FACT→観察の現場で興味深かった行動をメモ
右側:FINDINGS→メモした行動について、主観的な解釈や疑問点を記入
宮下「たとえば、『アイシャドウを引く際に、チップと指を使い分けている』という行動が気になったのであれば、右側にその理由を分析的視点をもって記入。『チップを使い続けることで、色が混ざってしまう、それを指を使うことで防いでいる』、または、『色によって塗る面積を変えたいので指のほうが一度で塗れる』などです」
もっとも重要な観察のポイントをは「なぜ〇〇したのか」と問い続けること
宮下「観察をする際に我々が重要視している点は『なぜ彼女は〇〇したのか』とつねに問い続けてみることです。観察の現場でいちばん危険なのは『この行動は知ってる』と生活者の行動を無意識に見過ごしてしまうこと。自分の中で自己完結している中に、意外と重要な行動が隠されています。
行動観察では『なぜ』というマインドでいなければいけません。いつもはこんなことは気にしないくらいのマインドセットにして、観察することが重要です」
動画と観察ポイントの説明のあとは、実際に8分間の動画を視聴していただく、エスノグラフィー体験のスタートです!
個包装された乳液を、2度にわけて塗るRさん。
手に付着した乳液や化粧を都度丁寧にふき取っている。
動画上映後は、5分間のワークシート記入時間を設け、興味深かった行動や、事前に想像できなかった行動を記入。その後、実際に会場のみなさんに、動画を見て気になった点を発表していただき、それに対して宮下が回答していきました。
参加者「興味深かった点は、化粧をする前に〇〇からつけていた点。保湿をすごく気にしているということがわかりました」
宮下「〇〇と化粧水の場合、化粧水からと常識としてみなさん考えていると思いますが、これは仕込みではなく、実際に対象者が行った行動で、これから僕らもインタビューで掘るべき行動だと思っています。ほかのトライブリサーチのインタビューでも〇〇からつけるという人は存在しますし、ほかの観察でも見られた行動ですね。『では、化粧水を先にするのと何が違うのか?』という質問を投げることで、彼女らにとっての化粧体験を豊かにするヒントが見つかるのではないでしょうか」
参加者「乳液と商品Aを混ぜて顔に塗るという行動が印象的でした。実際どういうかんじになるのか自分でも試してみたいと思いました。普通はやらないような気がします」
宮下「この行動は今、若い女性にすごく多くて、ニュースにもなったりしていますね。商品Aと商品Bをまぜるとものすごく効果があるとか。これはまだ仮説ベースではあるんですが、女子大生などに話を聞いていると『商品Aは保湿力は高いけど、テクスチャーが重い、ベタベタしてしまうのを化粧水で調整している』という話が出たりしています。そうなってくると、保湿剤のテクスチャーをもう少し工夫できるのではないかという点を切り口として、観察後にヒアリングを行うヒントになると思います」
会場からの意見に回答したあとは、SEEDATAが注目した”ある行動”について共有を行いました。
宮下「我々がとくに注目したのは■■(※詳細はお問い合せください)です。彼女は化粧中、■■でかなり頻繁に手を拭いていました。象徴的な行動としては、手についた商品Dを落としていたシーン。
ポーチ女子なので、外出先も想定して、手についた商品Dを落とし切らなければ、容器も汚れて、ポーチの中も汚れてしまうということを気にしている。つまり、毎回丁寧に手を拭くのは、次に化粧を行うときの化粧体験が悪くなるのではないか、という仮説を持ちました。
また、細かい点ですが、「なぜティッシュではないんですか?」と観察者が聞いたときに、「ティッシュだと繊維が残ってしまう」と回答していました。つまり■■のように繊維が強いものでなければ、次に手のひらに乗せる化粧品に繊維が混ざって、汚くなってしまうのではないでしょうか。
さらに、水分が多いウェットティッシュを使うと、手が湿ったことにより、次にパウダーなどを使う際に発色が悪くなるなど、複合的な理由が考えられます」
ここから「〇〇を使わずに〇〇できるもの(※詳細はお問合せください)」という機会領域が考えられます。
実際の化粧体験の中で、「〇〇を使わず〇〇したい」瞬間はたくさんあるのではないかと発想を広げてみました。
宮下「たとえば化粧室が混んでいる、時間がなくて〇〇できないという場合には、『〇〇に付着しないが、〇〇には乗せやすい〇〇』の開発が考えられるかもしれません。
また、容器が汚れたままポーチにしまいたくない場合、『〇〇を使用しない〇〇』などで手を拭くことで、化粧ポーチに毎回しまう際の化粧体験をよくできるのではないでしょうか。
技術的な開発が進めば、手を拭いく際には〇〇はあるが、すぐ〇〇するような、『手専用の〇〇』というような商品開発ができるかもしれません」
今回のエスノグラフィー体験は30分という短い時間でしたが、参加者のみなさんは動画を見ながら、「生活者は想像もつかない行動をしていた」「なぜああいう行動をするんだろう?」とたくさん疑問を発見することができたようです。
実際に行動観察をすることで、いろんなアイデアやディスカッションのタネが見つかることが、エスノグラフィー体験を通して感じていただけたのではないでしょうか。
このように、行動観察を行い、ジョブを見つけることにより、インサイトより深い、商品をどういう仕様にしていくかという具体的なヒントが見つかりやすい点が、エスノグラフィーの有用性であるといえます。
SEEDATAでは今後もこのようなエスノグラフィーセミナーを行っていく予定です。今回参加できなかった方や、本レポートで興味を持たれた方はお気軽にお問合せください!
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・
SEEDATAでは、独自のエスノグラフィー調査を行っています。ビジネスにエスノグラフィーを取り入れたいという方は
info@sd-g.jpまで、件名に『エスノグラフィーについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。
・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・