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SEEDATA
公開日:2017.12.15/ 更新日:2024.08.14

エスノグラフィー(ethnography)

なぜエスノグラフィーでジョブを見つけることができるのか?-SEEDATAエスノグラフィーセミナーレポート③

SEEDATAではこれまでも当HP内で、エスノグラフィーについての独自の記事を20回以上にわたり掲載してきましたが、2017年12月7日(木)、株式会社NTTテクノクロス様、株式会社マーシュ様と共同で、企業対象のエスノグラフィーのセミナーを開催しました。

前回レポートでは、SEEDATAアナリスト大川が登壇し、SEEDATAがより実践に使えるよう解釈したクリステンセンのジョブ理論について、また、ジョブには機能的、感情的、社会的な側面があるということ、ジョブとインサイトの違いと、それぞれが適しているものなどについて語った様子をご紹介しました。

今回はコトラーのマーケティング理論とジョブ理論の違いや、エスノグラフィーからジョブを発見し、実際にアイデアを生み出す方法について語った様子をご紹介します!

コトラーのマーケティング理論とジョブ理論の違い

一般的にマーケティング理論は、ウォンツ(欠乏)、ニーズ(欲求)、デマンズ(需要)、の3つで語られることが多いですが、このマーケティング理論とSEEDATAでもちいられる、ジョブとハイヤーとはどのように違うかについて、SEEDATAアナリストの大川が詳しく説明しました。

 

大川「コトラーのマーケティング理論を簡単に説明すると、ニーズは喉が乾いている状態、それに対してウォンツは具体的にコーラを飲みたいという状態、デマンズは実際にそれが買えるかどうか、この3つで生活者の購買行動を見るというものです。これはすごくわかりやすいのですが、調査対象となる商品(コーラ)、サービスを中心に考えられています。

一方、SEEDATAエスノグラフィーのジョブ理論をこれに当てはめてみると、「喉の渇きをうるおさなければならない」というジョブがこの生活者にある場合、「何を雇用して喉の渇きをうるおすか」ということを考えます。

コーラを雇用する可能性もありますが、水道水やトマトを雇用する可能性や、ほかにも、アイスクリームで喉の渇きをうるおすなど、我々のまったく想像も及ばないものを雇用する可能性、そういったことがジョブ理論のフレームでは見えてくるのです。

『生活者はジョブを解決するために、さまざまなものを利用している』という前提に立っているため、見るべき範囲が広がり、同時に、今まで見えていなかった新領域を発見、探索することが可能になるのです」

 

一般的なインタビューではニーズ主導で、よく聞かれる質問は『どんな時にコーラを飲むか』『コーラを飲むのはなぜか』『コーラがないときは何を飲むのか』というように、商品やサービスを中心に進めているといいます。

大川一方、SEEDATAエスノグラフィーのジョブアプローチでは、『喉の渇いている状態をどのように解決しているのか』というところから観察を始めます。そして、『飲み物を飲むというのはどんな課題(ジョブ)があるからかと』いう点をあらためて考えます。『そもそも喉が渇いているから飲み物を飲んでいるわけではないかもしれない』という視点を持つこともエスノグラフィーではとても重要です。

結果として、ニーズ主導のアプローチでは『この生活者はどんなコーラなら購入してくれるか』が考えられるのですが、ジョブアプローチでは『そもそもこの生活者が持つジョブを解決する最適なアイデアとはなにか』というところまで考えが及びます」

 

インタビューではジョブは見つけられない?なぜエスノグラフィーではジョブが見つかるのか

では、なぜエスノグラフィーではジョブを見つけることができるのでしょうか。ここからは、飲料メーカーからの依頼で、生活者がどのような飲食を行っているかをエスノグラフィーしたという設定で話が進みます。

大川「ジョブを見つけるためには、まず雇用されているものが何か観察する必要があります。たとえば喉の渇きをうるおすために、ある生活者がトマトを雇用していることが分かったとします。トマトを雇用しているということが分かった場合、逆算的にヒアリングを行っていくことで、彼らは喉が渇いているからトマトを雇用しているのではなく、『喉の渇きと〇〇を同時に満たさなければならない(詳細はお問合せください)』というジョブが、何らかのコンテクスト上で発生しているということが分かりました。

このように、ジョブを見つけるためにはまず生活者の行動を観察して、どのような状況で、どのような商品を雇用しているのかを発見しなければいけません。

インタビューでは、こういった行動は見られず、そもそも喉の渇きをうるおすためにトマトを雇用しているということに想像が及ばない可能性もあります。まず自分の頭をリセットして、行動を観察する、そしてハイヤーされたものから逆算して、彼らのジョブとはなにかというこ考える必要があります」

 

ジョブ+インサイト+コンテクストから機会領域を探索

 

ここから、さらにアイデアを生み出す方法の核心ともいえる、機会領域について話が及びます。

大川「では、SEEDAAではどのようにアイデアを生み出しているかというと、ジョブとインサイトとコンテクスト、これらすべてを統合してアイデアのもととなる機会領域を探索しています。機会領域とは、商品やアイデアのもととなる、顧客に提供すべき価値のことです。

先ほどの例で話すと、『喉の渇きと〇〇を同時に満たさなければならない』というジョブが生活者の中にあることが分かりました。そのときに大事なことは、「そもそも生活者がジョブを解決するために雇用しているものはすべて代替的である」と考えることです。ここでトマトに代替されているジョブを、自社の製品、領域でいかに実現するかということを考えなければいけません。

トマトが彼にとって最善の選択ではないという立場に立ち、トマトの代わりとなる『喉の渇きと〇〇を同時に満たせる商品』は何かを考えるのです。たとえばこの会社がコーラを作っているのであれば、飲めるだけでなく〇〇できる、〇〇なコーラというようなアイデアなど、自社の製品を転用することできます。トマトからはいったん離れて、ジョブを中心に商品アイデアを考えるということが必要です。

つまり、機会領域を考えるにはまず代替されている行動を探すこと、次に代替行動からジョブを探すことができれば、そのジョブをいかに解決するかを考えることができます。そして、インサイトやコンテクストを踏まえ、この3つで自社の製品や技術ならどのように実現可能か考える、機会領域を探索していくことができるのです」

 

ジョブさえ分かればさまざまな領域に転用することが可能なため、まずは行動観察を行って、彼らの抱えているジョブを見つけていくことが重要、と大川は締めくくりました。

 

このように、SEEDATAが実際に行っているエスノグラフィーでは、コンテクストを把握したのちに、行動観察を行ってジョブを見出し、その後インタビューを行ってインサイトを発見し、コンテクスト、ジョブ、インサイトすべてそろったところで、アイデアのもととなる機会領域を探索していくという一連のフローと、そのアウトプットを提供しています。 (次回に続きます)

 

次回は引き続き、大川が登壇し、SEEDATAが実際に行ったエスノグラフィーの事例について語った様子をレポートします!

※セミナー内容の一部を伏せさていただいていますが、お問合せいただければ詳細はお伝えいたします。

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SEEDATAでは、独自のエスノグラフィー調査を行っています。ビジネスにエスノグラフィーを取り入れたいという方は

info@sd-g.jpまで、件名に『エスノグラフィーについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

SEEDATAエスノグラフィーのご紹介

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