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SEEDATA
公開日:2017.12.25/ 更新日:2021.06.11

トライブ(tribe)

SEEDATAがエスノグラフィーでジョブを見つけだせるのは、トライブリサーチによるインサイトの蓄積があるから【前編】

SEEDATAエスノグラフィーではインサイトとジョブが重要であるということを当Blog内の記事で解説してきました。しかし「なぜSEEDATAはエスノグラフィーでジョブを見つけることができるのか」ということを考えるためには、そもそもSEEDATAの定義するトライブとはなにか、トライブからインサイトをどのように導き出しているのか、さらに、導きだされたインサイトがエスノグラフィーにどう影響を与えているのかという背景を理解する必要があります。

そこで今回は、SEEDATA代表の宮井氏に、あらためてSEEDATAの定義するトライブとジョブの関係についてお話していただきました。

数年後あらわれてきそうな価値観や行動をすでにしている人=トライブ

-今回は、そもそもトライブがどのようにできたのかという経緯を教えてください。

宮井「僕は博報堂の中でも変わったキャリアで、広告の作戦をたてることより、広告のもとになる商品やブランドの設計という広告の前段階の業務を受け持つことが多かったんです。なので、よい商品やサービスのコンセプトや、よいブランドコンセプトつくるにはどうすればいいかとかということをずっと考えてきました。

それを具体的にやるための手法として、以前はリードユーザー法というものに着目していました。リードとは、そのジャンルの中で先をいっているという意味ですね。たとえば医療機器で、聴診器の開発をしたければ、3~5年後に直面しそうな問題にすでに直面しているユーザーをリードユーザーと呼び、この場合、お医者さんの中でも先進的な取り組みをしている内科医がリードユーザーにあたります。おもにBtoBの場で先進的なユーザーを開発の場に招いて、プロトタイプをみせながら開発していく方法です」

-リードユーザーは具体的にどのように定義されているのでしょうか?

宮井「リードユーザーの定義はおもに2つあり、ひとつは数年後に直面するニーズや課題にすでに直面しているユーザーというものです。もうひとつは、その課題を克服するために自分でカスタマイズしているユーザというもの。昔でいうとLinuxのOSをボランティアで開発しているとか、そういうことをしている人たちですね。

ところが、リードユーザー法にも弱点があります。それは限られた分野でしか応用できないということ。たとえば、医療機器や建設現場のツールなど、誰がリードユーザーなのかはっきりとわかっている限られた現場ないと活用が難しかったのです」

宮井「一方で僕が働いてきた広告業界では、商品を作るのはもちろん、商品をどう届けるか(インサイト)を大事にしなければならないという側面があります。リードユーザー法は原則として商品の機能や仕様の開発や精緻化に焦点が当てられがちで、なかなかインサイトまで導出するプロセスには注意が払われないケースも散見されます。リードユーザー法を行うのはマーケターではなくエンジニアや研究者ですのでこれは仕方ない側面もあります。

なのでリードユーザー法をそのまま丸呑みしても、広告会社としての商品開発サポート業務や、どう届けるかというインサイト開発にはちょっと適用し難いという課題に直面しました。

そこで、リードユーザーの定義のうち「自分でカスタマイズしている」という点を外して考えることにしました。まずは「どう届けるか」というインサイトがわかれば、商品に対してのコンセプトや届け方をクライアントさんに伝えることができので、カスタマイズは商品の機能や仕様に関わってくるものなので、いったん置いておいて、目の前のものにどういう価値を感じればいいかを掘っていこうと」

-そこでトライブが誕生するわけですね!

宮井「数年後あらわれてきそうな価値観や行動をすでに体現している人にインタビューして、その価値観や行動がわかれば、いろんな会社のお手伝いができるようになるだろうと思いました。こうしてリードユーザの一部の定義だけ取り出して、トライブを作ったという歴史があります。

トライブを調査していくとその人たちの価値観がわかるんです。価値観って心の問題なので、ある商品で『こういう価値のあるものとして届けてはどうか』というインサイトができれば、そのインサイトは業界関係なく応用できるんです。

住まいだったらこう、お菓子ならこうって業界横断で使える、業界横断で仕事をしている僕たちにとって、生活者のインサイトはすごく重要なものなので、トライブレポートにためこんでいるんです」

機能や仕様を考えるにはインサイトだけでは限界があった

宮井「こうしてトライブレポートがたくさんできていったんですが、今はさらなるチャレンジをしています。これまではトライブから導出したインサイトの部分をクライアントに伝えて、どういう機能が必要かという部分はワークショップを行い、先方とともに考えていました。実務における機能や仕様に落とし込む際には、個別の技術的な知識が必要となるためです。この状態だと、どうしても属人的になってしまいます。個別の技術的な知見とインサイトをブリッジするリテラシーが必要になってしまうためです。

そこで、我々はインサイトを更に有効に活用するために、技術的な知見とインサイトをブリッジするための情報取得を体系的に行うべきだと考えるようになりました。」

-SEEDATAエスノグラフィーの中でたびたびお話に出てくる、インサイト=モノと心の関係、ジョブ=モノと行動の関係というのはそういうことですね。

宮井「そうです。そこで、SEEDATAのいうジョブが必要になったんです。

ジョブは具体的なモノと行動の関係なので、こういう行動をさせるためにはこういう機能が必要とか、こういうことをできるようにしなきゃいけないとか、具体的な商品やサービスの仕様につながるような情報を作らなければならないんです。ただ、具体的な機能や仕様につながる情報は、カテゴリーごとに異なるので、エスノグラフィーを僕たちが勝手にやっても意味がないなと。ここがインサイトと違うところなんですね。

ですから、ジョブの導出に関してはあくまでカスタマイズ。クライアントや業界・カテゴリごとにジョブを導出し、幅広く使えるインサイトデータベースと組み合わせていくことで、何を作ってどう届けるかがわかり、ビジネス・デザインがスムーズになります。このような経緯でSEEDATAのエスノグラフィーは、業界ごとにカスタマイズして、おもにジョブを出すところに特化することになりました」

一般的なエスノグラフィーはゼロからインサイトを探さなければならない

-では、一般的な会社が行っているエスノグラフィーと、SEEDATAの行うエスノグラフィーはどう違うのでしょうか?

宮井「通常のエスノグラフィーでは、ジョブだけでなく、インサイトもゼロからしっかり見つけなければいけません。インサイトとジョブを両方見つけようとすると、全体的に手薄になりがちなんですよね。対してSEEDATAは、トライブリサーチの蓄積でインサイトはすでにたくさんもっているので、「これはこういうインサイトだよね」とインサイトの埋め合わせが早くできる分、より行動にフォーカスしてジョブを見つけだすことができるんです。あとはジョブの背景にある理由を深堀すればいいくらいなので、インタビューの負担も少なくすみます」

-トライブリサーチの蓄積があるからこそ、エスノグラフィーで成果が出せるという背景があるわけですね!

宮井「だから、勘違いしてほしくないのは、これを読んで『ジョブとインサイトが大切』だと理解したとして、SEEDATAのやり方をいきなり真似するのは危険だということ。

いきなりエスノグラフィーをやっても、インサイトが見つけられずジョブしかわからなければ、どう届ければいいか、どう見せればいいか、どういうライフスタイルを提案すればいいかがわからず、結果、売れないということになってしまいます。

そこがゼロから行う一般的なエスノグラフィーとの根本的違いです。トライブはそもそもインサイト中心でできていて、SEEDATAはすでに多くのインサイトをもっているということを前提として理解してもらいたいですね。なのですでに自社でエスノグラフィーをやっている部隊と我々が共同でエスノグラフィーをやることにも非常に意味が出てくると思います。」

-エスノグラフィーを行う場合、インサイトとジョブを両方見つける必要があるが、それをゼロベースでやるのはかなり大変なので、SEEDATAのエスノグラフィーを活用したほうが効率がよいということですね。

(後編に続きます)

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