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SEEDATA
公開日:2019.12.24/ 更新日:2021.06.11

D2C

【1/5更新】D2Cとは?D2Cブランドの特徴とD2Cまとめ一覧

SEEDATAではこれまでD2C(Direct-to-Consumer)の成り立ちといった基礎知識からD2CとECの違い、SPAとの関係、さらにD2Cの進化系ともいえるDNVB(Digitally Native Vertical Brand)などについてさまざまな角度からご紹介してきました。

ここではそれらの記事を再編集し、あらためてD2Cについて解説していきます。

↓ブランディングの観点からD2CやDNVBを解説した記事はこちら↓

デジタル時代のブランディングとしてのD2C・DNVB

↓日本のD2Cブランドまとめ記事はこちら↓

【1/17更新】日本のD2Cブランドまとめ

D2Cとは

ECに加えて、SEO対策をしてアクセスを誘導したり、SNSを使って広報・販促をしたりして、それをきっかけに消費者が購入したり、場合によってはショールームのようなものがあり、それをきっかけにオンラインで購入するようになるパターンをD2C(Direct-to-Consumer)と呼びます。

単なる販売としてのチャネルだけでなく、原則ほかのメディアを介さず、自分たちのストーリーやブランドのベネフィットなどの情報をできるだけ直接伝えていく情報のチャネルと、EC的なチャネル(モノを直販するチャネル)をミックスしたのがD2Cです。

典型的なD2Cのパータンはたとえば、アプリがあり、インフルエンサーがいて、インフルエンサーの情報に消費者が直接触れ、アプリやECサイトで直接購入するという形です。

情報は直接消費者に届けられるような形で、なおかつECの形がとれるのがD2Cの特徴です。

これまで主流だったECとD2Cは、マーケティングの世界では「どんな投資をすれば何人くらいの購入があり、何円売り上げる」というように、効率を上げ利益を追い求める、パフォーマンス・マーケティングの考え方が中心です。

ECやD2Cにももちろんブランディングもありますが、良い悪いといいうことではなく、パフォーマンス・マーケティングが支配的でした。パフォーマンス・マーケティングはコストはかさむ一方でリピートも望めず、いずれ縮小していきます。

この課題を解決するべく生まれたのがDNVB(Digitally Native Vertical Brand)なのです。

これまでEC、D2Cは一方的に商品や情報を届けるチャネルだったのに対し、サービスを届けるということと、インタラクティブに届けることができるようなチャネルを複数持っていることがDNVBの大きな特徴といえるでしょう。

また、DNVBがその略称にverticalを含んでいるのはすべての顧客体験から一次情報をとることを目指していることを表しています。

当然、情報をとることは労力がかかり、スケールしにくくなるため、パフォーマンス・マーケティングの世界では、データをとるよりとにかく売上・利益を上げようという考え方をしますが、DNVBは必ずしもすぐにパフォーマンスを上げようとはしていません。

なぜならDNVB投資はビジネス投資ではなくブランド投資だからです。

D2CとDNVBの違いを端的に表現するのであれば、

D2C→利益の効率性を求める=ビジネス投資

DNVB→利益の効率性は求めない=ブランド投資

ということができます。

ECとD2CとDNVBの違いとは?

D2Cとは取引形態を示す言葉

まず、昔からおなじみのBtoB(B2B)、BtoC(B2C)といった取引形態を示す言葉の類語としDtoC(D2C)は登場しました。

ご存じだとは思いますが、

B2B→Business-to-Business

B2C→Business-to-consumer

の略語です。

ほかにも最近では消費者が直接工場にオーダーメイドできるCtoF(Consumer-to-factory)や、D2Cを発展させたDNVB、DWC(Direct-with-consumer)なども登場しています。

では、D2Cとは一体どんなもので、従来の取引形態と何が違うのかをみていきましょう。

B2BやB2Cということをあらためて考えると、「誰と誰の取引か」という取引形態を表しています。B2Bは企業間、B2Cは企業がコンシューマーに商品やサービスを提供しています。ここからビジネスという言葉が抜けてDirect-to-Consumer=D2Cになったわけですが、D2CもB2Cの一貫です。

つまり、B2CとD2Cはまったく異なるものではなく、取引形態としてBusiness-to-consumerなのです。

 

しかし、これまでのBusiness-to-consumer、とくに製造業の場合、間に流通や小売りが入っていたため、B2Cと言いつつも、取引形態自体はB2Bでした。それが、本当にダイレクトに消費者に商品を届けていることを表しているのが、Direct-to-Consumer=D2Cなのです。

B2Cの中でも厳密に「直接届けている」ということを取り出して「Direct-to-Consumer」と表現しているのです。つまり、D2Cとは狭義では、「流通業者などの他者を介さずに製造業が自分たちで直接商品を販売し・配送手配する業態」といえるでしょう。

 

今更聞けないD2C①D2CとB2C、D2CとECの関係

 

D2CとECの違い

D2CはEC(ElectricCommerce)とほとんど同じと思っている人もいますが、D2CとECとの違いを厳密にするのであれば、「製造業が自社で企画製造した商品を直接売る」という取引形態がD2Cの特徴です。

一方、自社で作ったものでも仕入れたものでも、インターネットを介して売っていればECです。言葉の中にはD2Cも含まれる場合がありますが、ダイレクトでないものも含んでいるのがECなのです。

つまり、B2B、B2C、D2C、ECあたりを厳密にすると、製造業というのは間に卸しや小売りを挟んでいるので、実はB2B2Cだったのです。それが直接consumerに売ることが可能になったため、D2Cと呼ばれるようになったという背景を押さえておきましょう。

 

さらに、D2CとECではEC業界はどちらかというと効率重視で中抜きの文脈でネットで販売を捉えていました。

一方D2Cは、考え方としてはブランドや顧客エクスペリエンスを大事にしたいという観点からインターネットを活用しています。

もちろん、D2Cは以前ご紹介した「哲学のチャネル」などがあることも形式的な違いですが、そもそもの持つ「価値観が異なる」という意味でも、別の言葉で表現しているのです。

中間コストを削減していることは同じでも、ECは安さや効率性の文脈がメインでしたが、D2Cは中間業者がいない分付加価値を高め、よりよい商品を作ったり、直接つながってブランド体験を高めたりすることができることを重要視しています。

D2CはECをしている人からすればECの発展形であり、製造業をしている人からすれば直接販売の発展形という風に考えると分かりやすいかもしれません。

直接販売という言葉の具体的定義は、企業において消費者に対しておこなわれている販売の形式であり、通常の流通業者システムを介さず直接消費者に対して送付するということです。

D2Cも形式としてはほぼ直接販売といえるでしょう。

スモールマスに向けたD2Cの「群戦略」とは?

D2Cはあえてスケールを目指さないという特徴もあります。

成熟した現代社会では消費者のニーズは細分化していることから、マス向けの商品では満足できない消費者に向け、シャンプーやコスメ、サプリメント、お菓子などの商品を、スモールマスのニーズに合わせて開発し、直接販売することが可能です。

スモールマスに向けたD2Cをおこなう際に重要なのが「群戦略」というキーワードです。

これまで:マス向けブランドで大ヒットを狙う(売上規模100億円)
これから:スモールマス向けブランド「D2C」群で売上拡大を狙う(売上規模10億円x10ブランド)

群戦略をとることで、たとえひとつひとつの売り上げ規模はスモールビジネス並みでも、マス向けと同様の売り上げ規模を確保することが可能となります。

D2CとSPAの関係

D2Cを理解するうえでもうひとつよく聞かれるのがSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)についてです。

SPAとは商品の企画製造から販売まで一貫しておこなう業態を指し、取引形態のことではありません。

「D2CとSPAはどんな関係ですか」と聞かれれば、

D2C→取引形態

SPA→アパレルの業態

のことです。

端的にいえば、SPAとはUNIQLOやZARAなどアパレル業界の話です。一方、D2Cの中にはアパレルもインテリアも、食品も含まれています。

SPAは業態としてはD2Cに近いものですが、D2Cの場合はOEMでも構いません。SPAという場合は必ずしもネット販売だけとは限りません。つまり、これらは重なっている部分と重なっていない部分があり、SPAは必ずしもDigitally Nativeである必要はないのです。

D2CとSPAはアパレルにおいてはほぼ同じものと捉えられますが、DNVBの場合、基本的に製造直販を目指し、すべての体験がDigitally Nativeなので、SPAとはまったくの別物です。

D2CとSPAの違いをより理解するために、それぞれの登場の背景をみていきましょう。

SPA登場の背景

ファストファッションの流行により、消費者のアパレルに対するニーズは目まぐるしく変化するようになりました。それに伴い、製造を外部に頼んでいては間に合わなくなったため、企画から製造販売まで一貫しておこない、スピードに対応することを目的としてSPAは誕生しました。

D2C登場の背景

一方、D2Cには哲学があり、単に流行を追おうとは考えていません。どちらかというと商品数は少なく、浮いた中間コストを付加価値のために使うという考え方を持っていることが特徴です。

つまり、D2Cはトレンドを追うことよりも哲学を大事にし、ひとつの商品に注力して売っているため、やっていることはSPAと似ていますがSPAの延長ではありません。

さらに、D2CがDNVBまで発展すると、すべてがDigitally Native Verticalになりますが、SPAの場合はオンライン上ではなく店舗で売ることも、大きな違いといえるでしょう。

 

このように、D2CもSPAも製造直販であることは同じですが、基本的にまったく異なるものです。

D2CやDNVBなど、似ているようで異なる新しい言葉が登場することには必ず意味があり、それぞれ背後にある文脈、達成したい目標、提供したい価値が異なります。「取引形態が製造直販だから同じようなもの」と考えてしまっては、そこで思考停止して本来の大切すべき点を見落としてしまいます。

SPAをしていた企業がD2Cをやればうまくいくとは限りませんし、ECをDNVBにすればをうまくいくとも限りません。何故これらの言葉が出てきたのか、その理由を考えることでD2Cをより理解することができるでしょう。

今更聞けないD2C③D2CとSPAの違い

D2Cの成功の理由

D2Cが広がっている理由として「これまでより起業のハードルが下がった」という点があげられますが、もっと具体的にいうと、

①ECをやるハードルが下がった

②ソーシャルメディアが日常化した

という2点が大きな理由としてあげられます。それぞれについてみていきましょう。

①ECをやるハードルが下がった

商品を見るために店舗に行き、購入は安いネットでするという行動をショールーミングといいますが、いよいよECでなんでも買える時代になりました。

しかしECの台頭の理由は、単に種類の多さだけではありません。品揃、利便性、価格以上に、「店員に話しかけられないですむ」ということがECを選択する理由として明らかになっています。

つまりECは、顧客が接客レベルを自らで選択できるものであり、それが買い物のしやすさにもつながっているのです。

②ソーシャルメディアが日常化した

商品を知る場所や機会が、CMや屋外広告、店舗などに加え、SNS上で知るということが圧倒的に多くなり、そのままオンラインで購入するという流れが一般化しています。

また、カメラ、編集、写真素材、決済システムなど、何もかもが進歩し、自らハイクオリティに発信することが可能になったことで、哲学を伝えることが容易になりました。

上記の2点以外にも、小ロット生産が可能になったという点もあげられます。

ベンチャーのsitateru(シタテル)や、OEM工場でも、かなり小ロットに対応できるところが増えています。3Dプリンターのfablab(ファブラボ)のような技術も含め、成型や生産が小ロットでできるようになったこともD2Cが伸びている要因といえるでしょう。

③顧客はストーリーを求めている

最後にSEEDATAが考える、EC企業の文脈からみたD2Cの成功の最大の背景は、消費者がECや普通の商品に飽き、ストーリーを求めるようになってきているという点です。

つまり、これまでのECプレイヤーはストーリーよりも効率性や即効性あるキーワード伝達を求めていました。一部のプレイヤーを除いてストーリーを丁寧に発信していくという手法はなかなか馴染まないものでした。

簡単にいえば、そこに顧客体験やストーリーを重視したECとしてD2Cが登場したのです。

機能の高い商品を効率よく配給するということを多くの人が追及した結果、消費者のECへの飽きや、同じような商品ばかりでストーリーがないことへの飽きといった過満足(過剰に満足させられることへの飽き)が起きました。

そこで、よりエッジの効いた哲学やストーリー、効率性以外の体験を強く求めるようになったというのが、D2C成功の大きな要因だと考えます。

今更聞けないD2C②D2Cが成功をおさめた背景

D2Cコスメ界隈で盛り上がる「クリーンビューティー」というトレンド

化粧品のD2C、DNVBの分野では「クリーンビューティー」という大きなトレンドが訪れています。この流れを受け、先日資生堂がアメリカのスキンケアブランド・Drunk Elephant(ドランクエレファント)を買収しました。

記事にあるとおり、Drunk Elephantは、ミレニアルやGeneration Zと呼ばれる若年層を含む幅広い顧客の価値観の変化を捉え、高い支持を得ているスキンケアブランドです。資生堂は、アジアの生活者が今後ますますクリーンビューティー求めていくことを予測して、Drunk Elephantを買収しました。

 

では、そもそもクリーンビューティーの定義とは何なのでしょうか? ナチュラルとは何が違うのでしょうか?

近年日本の化粧品では「オーガニック」「ボタニカル」というコンセプトは一般的になりつつあり、もはやこのコンセプトが付いているだけでは商品を購入しないといわれています。

 

「オーガニック」「ボタニカル」であることに加えて、自分と環境にとってよりクリーンな品質(製造工程、環境など)、パーソナルで安心感のあるブランドの存在感を人々は求めているのです。

「ナチュラル」と「クリーン」の違いでいうと、「クリーン」ビューティー商品は決して、自然な成分だけとは限らないということがポイントです。なぜなら自然な成分=身体に良いとは限らないからです。それ以上に、あなたにとって、そして地球にとって、有害な成分が含まれていないことを「クリーン」と表現しています。

クリーンビューティーはもはや、この言葉がついているだけで生活者の購買意欲を掻き立てるようなビッグコンセプトのひとつといえるでしょう。

しかし、化粧品において「どのようにクリーンさを演出するか」は、多くのブランドが試行錯誤している最中です。

そもそもクリーンブームは、もともと食品において見られたコンセプトでした。食品分野で、オーガニック、無添加、ノン化学調味料などを人びとが求め出したことが、化粧品分野にも転用して生まれたトレンドです。

そこで、食品以外の化粧品のジャンルでも、食用成分を使うことでクリーン感を出そうと試みるブランドが増えています。

クリーンビューティーやクリーンスキンケアは新しいブランディング方法です。今後ますますクリーンビューティーがもてはやされるようになれば、それだけでは差別化できないため、どのようにクリーンであることを証明し、生活者の信頼を勝ち取るか?というブランディングで差別化していく必要があるのです。

Bybi

スキンケア製品のDIYレシピを紹介する「Clean Beauty Insiders」というポッドキャストから生まれたDNVB「Bybi」。

Bybiの商品ラインナップには、アボカドのフェイスマスク、ウコンのボディスクラブ、ブルーベリーオイルといった身近な食材がずらりと並んでいます。

現代のマーケティングでは「何を作るかより、誰が作るか」のほうが重要視されるようになってきていますが、これは化粧品においても同様です。

肌に悪いものはなるべくつけたくないという人々は、よりクリーンなものをつけたいと考えるようになります。そこで、もともとスキンケア製品のDIYレシピを紹介する「100 レシピ for skin」という本を出版している人々が作ったブランドだからこそ、ユーザーは身体に無害なモノ以外は使用されていないという安心感、信頼感を得ることができます。この安心感こそが「クリーン」さにつながっているのです。

Bybiの強みは「もともとDIYコスメを作っていた」という点であり、彼らが作っているものなら良いものに違いないと、生活者から共感を集めています。

Bybi以外にも、食用成分を使用してクリーンビューティーを謳うブランドは数多くあります。

frank body

frank bodyはコーヒー豆を使ったボディスクラブをメインプロダクトとして販売しています。

www.frankbody.com

彼らの哲学は「Clean, not complicated skincare」です。

つまり、複雑なスケンケアはいらない、よりシンプルなものを追求しようという哲学を掲げています。

typology

フランスのスキンケアD2Cであるtypologyは、「基本に戻ること」を哲学としています。

www.typology.com

これまで化粧品は化学物質によって発展してきましたが「基本に戻る」、つまり化学物質以前の原始的な手法に戻るということで、plants=植物や食物の成分から開発をおこなっています。

原材料に使われているのも、サボテン、ヘーゼルナッツ、ピスタチオ、ローズヒップ、アボカド、アスパラガス…と実にさまざまです。

 

このように、クリーン、お手製、手づくり…といったようにスキンケア商品も食べ物に近いトレンドが生まれています。

実際は「クリーン」や「クラフト」といったコンセプトもブランドが生んだものであり、世界共通の厳密な定義はありませんが、ブランディングの一環として日本でも今後確実にブームが訪れることでしょう。

クリーンビューティーというトレンドは日本でも今後広がっていくと予想されますが、当然、単純に食材だから、自然由来だから、環境に優しいから、というだけではなく、ここにスキンケアとしての確かなエビデンスがなければ、ブランドとしては成り立ちません。

これらの要素に加え、これまでご紹介してきたような、サスティナブル、エシカルといった、地球にとっても有害ではない商品であるかということも抑えておく必要があるでしょう。

D2Cコスメ界隈で盛り上がる「クリーンビューティー」というトレンド

国内のD2C成功事例

では実際に国内外のD2Cブランドの成功事例をみていきましょう。

FABRICTOKYO

FABRICTOKYOの特徴は、採寸体験に特化したリアル店舗があり、採寸データはクラウドに保存され、その後オンラインオーダーが可能なD2Cブランドです。

D2C事業に関する関係者向け資料「なぜやる?どうやる?進撃のD2Cスタートアップ(2019年版)」を一般公開しました

このスライドを作ったFABRICTOKYO代表の森氏は、2007年からファッションメディアなどの立ち上げをおこない、7事業に携わったのち、2010年にFABRICTOKYOを立ち上げました、典型的なシリアルアントレプレナーといえるでしょう。

スライドの中でも特徴的なのが「完全連動」という言葉です。

DNVBには

①通販のチャネル

②サービスのチャネル(顧客体験)

③哲学のチャネル

という3つのチャネルが必要と解説しましたが、森氏も「3つのチャネルが完全連動する必要がある」と考えているのではないでしょうか?

この完全連動の意味するところは、たとえば、slackが既存のチャットより使いやすいのは、ひとつひとつの機能がきちんと連動しているからです。

「ひとつの機能だけが尖がっていてほかと違う」というのは典型的な差別化の考え方ですが、単機能にサービスを分解して考える形の差別化は現代のサービス競争では通用しません。ひとつひとつの機能軸を全部ひとつの体験として、顧客データや顧客のフィードバック(=ファーストパーティデータ)を根拠に統合していく必要があります。この「すり合わせ」の概念には日本の製造業にはもともとあったものですので、製造業の方はしっくりくる考え方なのではないでしょうか?

FABRICTOKYOのD2Cの定義

スライドの中ではFABRICTOKYOの考えるD2Cの定義がいくつか紹介されています。

ECで直販する(卸さない)

まずオンラインから始める

売るための店舗ではなく顧客体験のための店舗を持つ

その店舗をテクノロジーのアプローチで作る(一次情報がとれる、一次情報が活用できる)

ECサイト前提で店舗のUXを設計

オンラインとオフラインで直接顧客と接する

FABRICTOKYOの場合、アクセスデータをもとに出店エリアを決めていて、これはまさに一次データの取得と活用ですし、DNVB的考え方といえるでしょう。

 

カスタマーとの距離を近くすることのメリットはこれまでもお伝えしていますが、直接つながることで、哲学のチャネルができ、これによりブランドビジョンが伝えやすくなります。

いくら費用をかけて企業広告をうったりブランドブックを作っても、ブランドのビジョンは伝わりにくいものですが、熱狂的なユーザーと繋がる哲学のチャネルがあれば、ユーザーが独自に口コミし、広めてくれます。

 

オンラインだけでなく、cotopaxiのようにイベントをおこなう方法も効果的です。

FABRICTOKYO自体は自社のビジネスを「D2C」と定義していますが、SEEDATAの考えるDNVBと限りなく近い考え方といえるでしょう。

 

では、アメリカのD2C事情はどうでしょうか。

オンライン上から始まるのがD2Cとはいえ、アメリカではテレビ広告も増えたり、VCの投資も増えています。

D2Cの広がりは、既存プラットフォームのシェアが拡大し、それらにすべておさえられてしまうことへのカウンターがベースです。自社で流通チャネルを持たず既存プラットフォームを活用している小規模事業経営者たちは、「自社の商品をどんな人が購入されているかほぼ答えられない」という現状があります。これが「DNVBやD2C」と「EC」の根本的な差といえるでしょう。

 

自社で流通のチャネルを持ち、ファーストパーティーデータを取得することがいかに重要か、その点に気づき始めた人々がD2CやDNVBを始めているのです。

【D2Cの事例②】FABRICTOKYOに見るD2Cの立ち上げ方

D2Cは「スモールビジネス」なのか

米国でのD2C、DNVBの躍進やメディアの盛り上がりを受け、この何年かは日本国内でもD2Cバブルといってもよいほど、新たなD2Cブランドが勃興しています。

もともとはアパレルから始まったD2C、DNVBですが、現在では食品、飲料(アルコール)、健康食品、化粧品、スキンケアなど、ありとあらゆる日用雑貨に広がってます。

一方、「D2Cの売上高規模は3~30億程度でたいしたことはない」「スモールビジネスだ」と指摘する人もいます。このような記事を見かけたり話を聞いたりした際に、注意すべきことは、以下の2点です。

 

①記事を書いているのは誰か

例えば、アパレル関係の人が書いているのであればアパレルのD2C、コスメ関係の人が書いているのであればコスメのD2Cのことを指しているのであり、D2C全体のことではないこともあります。注意してください。

②売り上げが高い低いというのは誰にとっての話か

たとえば、ある程度知名度もあり、女性用下着で月間1000万ほど売り上げているD2Cがあったとしても、大手下着メーカーと比べれば当然額が低いといわれてしまいます。しかし個人のスモールビジネスとしては、十分なレベルといえるでしょう。

問題はそこからスケールのために大きな投資を受け入れようと考えているのか、スモールビジネスのままでいこうとしているのかで、スタンスもまったく異なるということです。

つまり、スケールを目指しているがうまくいかなくてスモールビジネスに甘んじているのか、そもそもスタートアップを目指していないスモールビジネスなのかで、1000万円の持つ意味はまったく変わるということです。

また、「D2Cは年間30億が限界」という人もいますが、実際にはシャンプーの分野で月5~6億を売り上げているブランドも存在します。

もちろん「D2Cは絶対儲かる」と煽るのは間違っていますが、「D2Cは下火」「D2Cはスモールビジネスだ」と揶揄することは、どの業界の、誰にとって、そしてどこを目指しているかで変わってくるため、こういった批判や煽りを真に受けて右往左往したり、「D2Cはダメだ」と考える必要はありません。

重要なのは「D2Cのような流れはもはや止められない」ということです。

SEEDATAはアメリカのD2C、DNVBを数多く調査していますが、消費者は規模の大小は関係なく、「哲学と商品とサービスを直接企業から受け取りたい」と考えています。

どんな規模かはさておき、D2CやDNVB的な形態が標準になるという流れには抗うことはできないのです。

たとえば、中国のKOL(Key Opinion Leader)のリサーチによると、すでに「モノは店を通じてではなく人を通じて買う」といわれています。つまり「何を買うかではなく、誰から買うか(from who)」が重要で、これが流通の一形態となっています。

P&G、wacoal、Wal-Martなどの大企業が軒並みD2Cに取り組んでいるのは、時代の潮流に合わせた消費を届けていく必要があることを理解しているからにほかなりません。

「D2Cは下火」「D2Cは儲からない」の真実

また、SEEDATAではスモールビジネスをD2C、DNVB化する支援もおこなっています。詳しくはこちらの記事をご覧ください。

【DNVBの事例④】事業承継をお考えになられている小規模企業とSEEDATAの提携について

 

D2Cを作りたい企業の担当者必見!D2Cより新しいDNVBとは?日本最速でDNVBに取り組むSEEDATAのDNVB解説(全73ページ・1320KB)

DNVB開発大解説(ラブラドールレトリバー)