D2Cを理解するうえでもうひとつよく聞かれるのがSPA(Speciality store retailer of Private label Apparel)についてです。
今更聞けないD2C①(リンク)で、B2CやD2Cは取引形態のことであると解説しましたが、SPAとは商品の企画製造から販売まで一貫しておこなう業態を指し、取引形態のことではありません。
「D2CとSPAはどんな関係ですか」と聞かれれば、
D2C→取引形態
SPA→アパレルの業態
のことです。
端的にいえば、SPAとはUNIQLOやZARAなどアパレル業界の話です。一方、D2Cの中にはアパレルもインテリアも、食品も含まれています。
SPAは業態としてはD2Cに近いものですが、D2Cの場合はOEMでも構いません。SPAという場合は必ずしもネット販売だけとは限りません。つまり、これらは重なっている部分と重なっていない部分があり、SPAは必ずしもDigitally Nativeである必要はないのです。
D2CとSPAはアパレルにおいてはほぼ同じものと捉えられますが、DNVBの場合、基本的に製造直販を目指し、すべての体験がDigitally Nativeなので、SPAとはまったくの別物です。
D2CとSPAの違いをより理解するために、それぞれの登場の背景をみていきましょう。
SPA登場の背景
ファストファッションの流行により、消費者のアパレルに対するニーズは目まぐるしく変化するようになりました。それに伴い、製造を外部に頼んでいては間に合わなくなったため、企画から製造販売まで一貫しておこない、スピードに対応することを目的としてSPAは誕生しました。
D2C登場の背景
一方、今さら聞けないD2C②(リンク)でも触れましたが、D2Cには哲学があり、単に流行を追おうとは考えていません。どちらかというと商品数は少なく、浮いた中間コストを付加価値のために使うという考え方を持っていることが特徴です。
つまり、D2Cはトレンドを追うことよりも哲学を大事にし、ひとつの商品に注力して売っているため、やっていることはSPAと似ていますがSPAの延長ではありません。
さらに、D2CがDNVBまで発展すると、すべてがDigitally Native Verticalになりますが、SPAの場合はオンライン上ではなく店舗で売ることも、大きな違いといえるでしょう。
このように、D2CもSPAも製造直販であることは同じですが、基本的にまったく異なるものです。
D2CやDNVBなど、似ているようで異なる新しい言葉が登場することには必ず意味があり、それぞれ背後にある文脈、達成したい目標、提供したい価値が異なります。「取引形態が製造直販だから同じようなもの」と考えてしまっては、そこで思考停止して本来の大切すべき点を見落としてしまいます。
SPAをしていた企業がD2Cをやればうまくいくとは限りませんし、ECをDNVBにすればをうまくいくとも限りません。何故これらの言葉が出てきたのか、その理由を考えることでD2Cをより理解することができるでしょう。