これまで情報インプットのノウハウ編として着想型リサーチと検証型リサーチ、ツール編ではトライブデータとデコンテの紹介、分析編では水平的分析思考と垂直的分析思考についてご紹介してきました。
これまでの商品開発のプロセスに関する記事はコチラ
機能価値と情緒価値とは
SEEDSTAで商品開発をする際は、これらから得られたヒントを生かしてそのまま商品のアイデアを考えるのではなく、さらに一段回クッションをはさむことでアイデアを考えやすくしていきます。
順番としては、
・ファクト(情報インプット)
・価値(機能価値or情緒価値)
・アイデア
という順で行います。
まず情報インプットがあったうえで、そこにはどんな価値があるかという分析を一段階はさみます。
たとえば、前回の話であれば、「母親の罪悪感を払拭できる」だけでは少し弱いので、「自分で味付けすることで母親の罪悪感を払拭できる」というように「どうやって払拭できるのか」の「〇〇できる」という価値の部分までしっかり描く必要があります。
この価値部分をより明確にするためのフレームワークとして、機能価値、情緒価値という2つの価値にわけて考えます。
・機能価値
製品のもつ仕様や性能によって得られるベネフィット
・情緒価値
商品を使用することで得られる商品に対する印象や感情
ファクトを元に商品が持つ2種類の価値(機能価値/情緒価値)を設計し、商品アイデアを考えます。先ほどの例では、「自分好みの味に味付けできる」というのが機能価値で、情緒価値は「〇〇な気分になれる」という感情的側面です。たとえば、「仕事中に少し疲れを癒せるようなひとときの休息感」が情緒価値です。
この段階では、機能価値と情緒価値はセットで考える必要はなく、あえてどちらかひとつで構いません。最終的にアイデアを設計する時は両方が必要ですが、この段階で両方を設計してアイデア発想することも可能ですが、どちらかを足がかりとしてアイデアブレストしたほうがスムーズだと考えます。
SEEDATAの考え方では、機能価値を重視する商品開発と情緒価値を重視する商品開発の2パターンがあり、それぞれのアイデアを出すための1ツールとして活用するために機能価値と情緒価値というのを分けて考えています。
機能価値を重視するのは、R&D系のセクションがメインで商品開発を行う場合です。その場合、新しい技術を使ったり、次なる技術の研究テーマを探すことが目的になるため、技術を起点にした商品開発が多くなります。
この場合は情緒価値からではなく、「技術的に何ができる必要があるか」という商品が持つ機能を大事にしていかなければ、今後研究所で活用する技術素材や応用技術は見えてこないため、まずは機能価値から発想していきます。
機能価値起点で商品開発を考える場合は、今までの市場にない新しい技術を活用したり、今までの商品とは見栄えもアイデアも異なるような飛んだアイデアが出しやすいです。
一方、情緒価値をメインとするのは、事業部やマーケティング系のセクションが商品開発を行う場合です。この場合は、既存の技術を活用するため、商品の特徴や機能的にはそこまで変化はありませんが、生活者に新しい世界観や感じてもらうなど、どちらかというとコミュニケーションの部分を重視したアイデア発想です。
どちらをメインにするかは読者の方が取り組みたい課題によって変えていくほうがよいでしょう。いずれにしろ、まずファクトがあり、ファクトからどんな機能価値が大事か、どんな情緒価値が大事かというところを抽出する作業なので、やり方自体に変わりはありません。
価値を設計する作業の段階では、まだアイデアの内容は考えなくてOKです。この段階でアイデアの内容まで考えてしまうと、「この機能価値はアイデアになりにくいからあまり意味がないかも」と発想をストップさせてしまうため、まずは機能価値か情緒価値、いずれかを創出することだけを考えましょう。
SEEDATAでは創出する商品数の約2~3倍の機能価値、情緒価値を出すようにしています。機能価値、情緒価値を出しきった段階で、「これはアイデアを思いつくor思いつかない」と取捨選択すればよいので、ブレストではなるべく大量にいろんな観点から機能価値や情緒価値を出すことをメインにします。
また、機能価値、情緒価値の出し方としては、ひとつのファクトからひとつの価値というような1対1構造にする必要はありません。
たとえば2つのファクトを組み合わせて1つの価値を出す、もしくは1つのファクトから2つの価値を出してもOKです。論理的につながりを考えるというより、2つのものから「こういうものが大事なのではないか」とある種のひらめきを大切にします。
ただし、少し飛んだアイデアを出したい場合は、2個以上のファクトから1つの価値を出すという意識づけをしましょう。1つのファクトから1つの価値を出す場合は、比較的発想のジャンプが少なく、ファクトからそのまま読み解けるものを価値として解釈している可能性があり、あまり広がりがありません。2つ以上のファクトから掛け合わせて得られたひらめきのほうが、発想は飛躍しやすいのです。
new SEEDATA流商品開発コンセプト開発(ゾウガメ)
当連載をまとめたホワイトペーパーができました。商品開発のプロセスを分かりやすく解説しています(全31ページ・1.86MB)
【関連記事】