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SEEDATA
公開日:2021.03.19/ 更新日:2021.06.09

商品開発(product development)

女性向けブランド開発を行ううえで重要な2つのポイント

SEEDATAではさまざまな企業のブランド開発、商品開発などを支援していますが、近年はとくに「女性に向けたブランド開発」に注力しています。

「女性に向けた」サービスやブランドを作る場合、まずはターゲットとなる女性像の把握から始まるのが一般的です。
しかし、一口に女性といっても、既婚・未婚、子どもがいる・いない、働いている・働いていないなど…ライフスタイルや価値観はさまざま。現代の女性像を十把一絡げするのは困難です。
結果、実態のない女性像になってしまったり、「〇〇女子」などステレオタイプな女性像を作り出したりしてしまい、反感を招いてしまうこともあります。

そこで、今回は、今後女性に向けてブランド開発をおこなう企業が、どんなポイントを重視すればよいのか、共感されるブランド作りのポイントをSEEDATAの知見をもとに解説します。

ターゲットではなく、義憤から探す

まず、前提として「女性向けのサービスを女性に向けて作る」という考えをいったん無くし、「どんな女性に向けた」というプロフィールやペルソナから入る代わりに、SEEDATAがDNVB開発の基本としている「義憤から探す」アプローチを提案します。

たとえば、「〇〇女子」のようなターゲット作りや、「働く女性」など、ライフステージのざっくりとした括りで女性を捉えるアプローチをされたことはないでしょうか。
しかし、前述したとおり、このような括りの中でもライフスタイルや価値観は多様化しているため、大まかなターゲットやペルソナから女性像を捉えることは困難です。

そこで、新たな着眼点として、「働く女性は何に困っているのか」ではなく、「世の中の女性にはどんな義憤があるのか」という観点からリサーチをこおないます。

SEEDATAのトライブは、まずは義憤からスタートし、結果的にその義憤を抱えるターゲットが誰なのか、次にビジネスボリュームはどれくらいあるのかをみていくというステップで作られています。

押しつけ、決めつけをしない

二つ目に重要な点は、「女性はこういうもの」「これが正解」という押しつけはしないことです。
正しい情報やオススメの情報は正直に伝えたうえで、選択はユーザー自身に委ね、

・女性はこうあるべき
・これが唯一の正解

というようなコピーや提案をしないことが大切です。

一方、健康などに関わる情報はエビデンスベースで正しく伝える必要があります。業界や商材の特性やルールに合わせてご検討ください

以前は受け入れられていた「20代、30代、40代になったら〇〇をしなければ(してはいけない)」などの共通認識とされていた年齢による女性のポリシーや暗黙のルールも、今後は「それぞれ自分の意志で決めること」が重要です。

以上の2点が、今後女性に向けてブランドを作っていくうえで外せないポイントです。

では、このふたつのポイントを抑えながら、私たちはどのようにブランド開発をしてくべきでしょうか。
後半はSEEDATAのブランド開発支援の事例をもとにたどり着いた、女性に愛されるブランド開発のための仮説を解説していきます。

共感されるブランド開発のポイント=issue in, fun out

2つのポイントを押さえた、女性に共感されるブランド開発のポイントは、issue in, fun out(義憤から入り、Funな体験で返す)です。
解決策はファンな体験ですが、きっかけは義憤から入ることが重要です。

では、具体的に「issue in, fun out」を実現するための4つのティップスをご紹介します。

まずは義憤を捉える

前述したとおり、一般的な「女性の悩み」から入るのではなく、世の中の具体的な義憤を探して、その義憤を抱えるターゲットはどんな人か?を考えていきます。
デスクリサーチやアイデアワークのブレストでも、どんな義憤に着目するか?はオススメのテーマです。

その際、一般的な女性ならではの悩みとして
・生理痛がひどい
・家事育児に忙しい
・ホルモンバランスの乱れ
などざっくりとした悩みから入るのではなく、できるだけ具体的な義憤を最初に出していきましょう。
ターゲットではなく義憤から探すことで、ペルソナなどを考えるよりも、より具体的な女性像を捉えることができます。

アパレルブランドのCOHINAは「小柄な人はサイズ的に着られる服か、おしゃれな服、どちらかを犠牲にしなければならない。小柄でも着られる服と、おしゃれな服とどちらかを犠牲にしたくない」という義憤に着目しています。

女性の義憤をきちんと捉えているブランドは、あえて「女性」という言葉を使っていない場合が多いのもひとつの特徴で、COHINAの義憤も「女性」という言葉を使わなくても女性ターゲットの共感を集めることが可能です。
「女性はこんな課題を抱えてる」ではなく、「小柄な人はおしゃれを楽しめない」という義憤から着目することで、強い義憤を捉えることができます。
結果的にこの義憤を抱えているのは女性ですが、「これは女性だけの義憤ではない」という気づきや問いが生まれた場合、そのうえでターゲットを女性に向けるのか、男性にも広げるのか考えるとよいでしょう。

「働く女性」や「多忙な女性」の課題をという切り口では強い義憤はなかなか見つかりません。
もっとミクロな視点を持つことで、たとえば「足が小さい人は、子ども用の靴しか履けるものがなく、パンプスが履けない」という義憤が見えてきます。
n1の義憤から、「足のサイズに合わない靴に無理やり足を合わせている人は多い」という世の中全体に通じる義憤が見つかります。

義憤を義憤のまま終わらせるのではなく、自己肯定感を高めるようなFunな体験として商品やサービスを届ける手法については、➂④で詳しく解説しています。

いきなりFunから入らない、Funの押しつけ・決めつけをしない

前述したとおり、かつては「20代はこう」「30代はこう」「40代はこう」など、女性特有のルールが当然のように受け入れられていた時代がありましたが、現代ではそれぞれが自分の意志でなりたい姿を決める方向にシフトしています。
そのために、まずは「(あるべき姿を)決めつけない」ことが重要です。

OHINAは、最初から「身長なんて気にするべきでない」「低身長でもおしゃれを楽しむべき」という決めつけをしていません。
いきなり「もっと楽しもう」「もっと輝こう」というFunを提案してしまうと、「したくてもできないのに」というプレッシャーや反感を呼んでしまう可能性もあります。
あくまで、一度義憤を受け止めたうえで、どんなファンな形で解決していくかというステップが重要で、義憤を捉えているかどうかで見え方がまったく変わってきます。

もちろん、健康などに関わる場合は正しい情報を伝える必要があります。業界や商材の特性やルールに合わせて押し付けにならないようご検討ください。

では、具体的にどのようにファンな体験を作っていくのかを次で解説します。

悩みは認めるが、隠すよりも活かすアプローチ

プラスサイズのブランドからは、これまで欠点と言われてきた部分をいかに活かし、プラスに転換していくかを学ぶことができます。

AKB48の衣装デザイナーがプロデュースする、プラスサイズのアパレルブランド「アクチェ」。
さまざまな体型やコンプレックスがあってもかわいく見せることを熟知している彼女は、「1番のコンプレックスは隠してもいいけど、それ以外は出してもいい」と言います。コンプレックスがあることを認めつつも、隠して終わりではなく、活かす方法を提案している点がポイントです。
このように、ブランドが一度義憤に共感してくれているからこそ、Funな提案を押し付けに感じることなく、安心して受け入れることが可能になります。

また、タレントの渡辺直美さんがプロデュースするアパレルブランドも「悩みを隠すだけではなく、かわいく着る方法がある」ことを提示しています。
プラスサイズの人は「欠点を隠す服しかきれない」という義憤を抱えているからこそ、義憤を一度受け止めたあとの提案に安心感がもつことができるのです。
「ファンな体験で返す」は、「自己肯定感を高めてくれる」と言い換えることができるでしょう。
入口は悩みや義憤でも、悩みを悩みのままで終わらせるのではなく、結果的に自己肯定感を高めてくれる体験が理想といえます。

モテよりも、自分のご機嫌

「女子はこうしなきゃだめ」「モテるため」とは言わず、あくまでも「自分を好きになるために、自分のご機嫌をとるためにメイク」をしようと提案しているのが、元NMB48の吉田朱里さんプロデュースのコスメブランド・BIDOLです。コンセプトは、「素のままの「わたし」も大好きだけど、可愛くなっていく「わたし」はもっと好き」。
「女子力」をうたっていますが、モテるため、周りによく思われるためではなく、あくまで自分を好きになるための「女子力」と捉え、それが共感を集めて、プチプラながら10代だけでなく20代、30代の大人世代にもファンが多いのも特徴です。

BIDOLは20代がメインファン層ですが、30代以上やデパコス好きからも支持されてるのは、質がいいからだけではなく、モテや周りのためではなく、「自分のため」のメイクを打ち出しているといえるでしょう。
近年のトレンドとして、「モテ」以外にも、「きちんと見える」「恥ずかしくない」など、周りから見た自分を高める言葉は雑誌から消えつつあります。
代わりに「自分が好きなものを着る」「アゲ色を着よう」などの自己肯定感を高めるための言葉が目立つようになりました。
昨今はコロナの影響により人に会わない日々で、すっぴんでも支障はないはずですが、メイクすることで「かわいくなりたい」「気分をあげたい」と願う女性が多いことが分かっています。

これまで多くの人から見られることを生業としてきたアイドルたちが、自己のブランドで「自己肯定感」「自分をご機嫌をとる」というコンセプトを打ち出しているのは、実に興味深い点です。
もしかすると、アイドルとして周りから見られたり、客観的にファンに応える自分はやり尽くしたからこそ、今はクローズドな場所で本当に好きなことを実現したいと考えているのかもしれません。
そして、このコンセプトに共感する女性が多いからこそ、支持されているのでしょう。

本記事でご紹介した、女性の義憤を捉えたブランド開発アプローチにご関心を持たれた方は、ぜひSEEDATAへご相談ください。

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