前回、一億ギグワーカー構想にいたった背景について解説しましたが、今回はそのビジョンを踏まえた上で、今後のマーケターという職種の重要性と広がりについて解説します。
まず、ビジネスを推進していくための職種には、ざっくりと、製造、ファイナンス(経理、財務)、リスク管理(法務)、人事(労務)、研究開発、生産、営業、マーケティングなどといった分野に分類できます。
これまで、営業とマーケティングの仕事は基本的に分業で、営業の仕事は自ら顧客にプッシュをし、購入してもらうことが求められてきました。
一方マーケティングの仕事は、どちらかといえば、まだ自身のニーズに気が付いていない潜在顧客に「自分に必要かもしれない」と思ってもらうアプローチをします。広告、メール、イベントなどを通して、営業をかけやすくしたり、自ら買いたいと思ってもらう仕組み作りがおもな役割でした。
極論をいえば、職種全体の中でのマーケティングは軽視される時代もありました。
しかし、今後5~10年先を考えた場合、大きく二つの側面から、マーケティング関連職種こそイノベーションの要になっていくと私は考えます。
①消費者が力を持ち始めている
インターネット上で口コミができたり、直接購入手段ができたことで、消費者に力が集り始めています。これはB2Bもそれほど変わらないです。
そうなると、消費者と直接つながり、情報をとってくる人がもっとも重要なポジションであり、このエンド顧客と接点を持つのが営業とマーケティングです。
営業といえば、これまで直接接客がありましたが、コロナ禍でデジタル化が進んでいます。これにより営業の仕事は、パンフレットやメールの送付といった、マーケティング的側面が強くなりました。
つまり、以下のように整理することができます。
1.インターネットの発達により、顧客が力を持ち始める
2.これにより、顧客接点を持つ人がより重要になる
3.接点のうち、リアルな要素を持っていた営業の仕事がマーケティングの仕事に広がってきている
このように、マーケティングが営業と融合し、マーケティング活動自体の地位が高くなり、職能としての有用性も高まっているといえるでしょう。
②どの職種もマーケティングを知る必要が出てきた
これまでは製造は製造、営業は営業が担当する製販分離体制が主流でしたが、融合したうえで、今後はマーケティング以外の職種であっても、マーケティングのトレンドを抑え、理解する必要が出てきました。
ファイナンスや生産技術、研究職などは、直接的にはマーケティングをおこなわないとしても、最終的に力を持っているのはエンド顧客である以上、マーケティングを理解していなければ効果的な活動はできません。
その結果、これまでの営業職と、販促、PR、マーケティングの間がグラデーテョン化し、複雑化しています。
営業の中でも分業が進み、フィールドセールスとインサイドセールスが登場しましたが、インサイドセールスもある種マーケティングの職種といえるでしょう。
これまでは外勤業務がおもな営業活動と考えられ、新規の見込み客を獲得(リード獲得)してきていました。獲得したリード顧客は、すぐに商品を買いたい場合もあれば、そうではない場合もあるため、FaceBook広告、オンラインセミナー、ホワイトペーパーなどを用いて、その顧客との関係をナーチャリングしたり、商談したりまでもっていくのがインサイドセールスの仕事です。
インサイドセールスの仕事に必要なのは、プレゼンスキルや営業スキルと思われがちですが、たとえばwebマーケティングやオンラインセミナーを運営する知識、ホワイトペーパーを作る能力も、顧客を理解し、課題解決をすることに十分役立ちます。
このように、営業とマーケティングが混ざり合い、リード顧客を獲得することに特化した職種もあれば、実際に商談の受注まで持ち込む職種もあり、広がりと細分化が進んでいます。
さらに、マーケターもデジタル・非デジタルにそれぞれに広がりを見せています。
デジタルマーケターは、単に見込み客を連れてくるだけではなく、リード獲得〇%、商談〇%、ナーチャリング施策により何%コンバージョンしたかという全体の数字をファネルで追い、どこにカネ、リソース、時間を割くか分配を考え、競合他社に勝つための戦略に落とし込む必要があります。
一方、おもに製造業やサービス業に多い伝統的なマーケターは、ブランドマネージャーとも言われます。ブランドマネージャーの仕事は、ブランドに対し、消費者に強く、好ましく、ユニークなイメージをもってもらい、ブランド側から売り込まなくても買いたいと思ってもらったり、それによりインサイドセールスの商談を簡単にするような施策を管理します。
当然、マーケティングの基本であるSTP分析や4P分析も理解し、ミックスしていくスキルも必要です。
このように、一言で「マーケター」といっても、現在では随分と解釈が広く、営業もブランドマネージャーも飲み込んでいます。
本来はデジタルマーケティング戦略と伝統的なマーケティング戦略、どちらもおこなう必要がありますが、現状はそれをひとりで担える人材はほとんど存在せず、分断されています。
そして、このような職種の広がりと知識の必要性が増す一方で、これらを身に着けるためにすべての職種を経験することは困難です。
そのうえで、われわれがこれらの職種を包括して「イノベーター」と表現しているのは、新市場を創造するイノベーションにおいては、実際にエンドユーザーとつながり、新規顧客を獲得する、営業やマーケターといった職種こそ重要な役割を果たすからです。
ここまで長々とマーケターの重要性について説明してきましたが、単なるマーケターからイノベーターに進化するためには、相応の教育が必要です。
ジェネラリスト(横軸)とスペシャリスト(縦軸)の特徴を併せ持つT型人材になるために、これまでは分断されている職種を転職して経験するしかありませんでしたが、我々は、これを二種類の継続的なインプットで補うことに挑戦します。
①職種特有スキル
例:デジタルマーケティングであれば、ECの運用、楽天・Amazonの特徴、FaceBook広告・Twitter広告の運用やダッシュボードの特徴、技術的なルールのインプットなど
②トレンド
職種特有スキルの勉強をしながら、新製品・新サービスや技術トレンドをひとりで収集しインプットするのは困難なので、SEEDATAのデータベースには、未来洞察だけでなく、自律分散的に勉強できる教育動画のデータベースを準備しています
①②を合わせておこなうことで、一般的な会社務めを続けたり、転職を繰り返してスキルを身に着けたりするよりも、スピーディーかつ効果的にイノベーティブなマーケターへの変貌が可能です。