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SEEDATA
公開日:2020.07.21/ 更新日:2021.07.12

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介63】家庭・ビジネスにおけるタスク管理ツール開発へのヒント(プライバシーシェアラー)

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング支援を行っています。トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

近年、高校生などの若者を中心に、SNSやアプリ(zenly)を通じて位置情報を共有する行動がみられます。互いにリアルタイムの位置情報を常に公開し合うことで、待ち合わせの時や合流したい時などに便利に利用でき、無駄なコミュニケーションを省略することに繋がっています。
位置情報などの個人情報は、これまで守るべき個人情報でしたが、最近は若者を中心に個人情報に対する捉え方が変化し、友人間やカップル間などで、位置情報に加えてスケジュールや身体情報など幅広い種類の情報を共有しています。
彼らの特徴は、コミュニケーションの際に相手の都合を直接相手に聞くのではなく、共有情報を先に把握することで、コミュニケーションを簡略化しているという点です。
SEEDATAでは彼らのように、常に個人情報を共有する人たちをプライバシーシェアラーと名付け、コミュニケーションの変化や、タスク管理、自己管理の考え方の未来について調査しました。

プライバシーシェアラーのセグメント

プライバシーシェアラーは大きく、①GPSによる位置情報のシェア、②タスクのシェア、➂スケジュールのシェアをおこなっている人びとに分類されます。
彼らはSnapchatやZenlyといったGPS機能つきアプリを用いて、友人たちとリアルタイムで位置を共有しながら過ごしたり、Torelloなどのアプリで今自分がプライベートと仕事でそれぞれどんなタスクを抱えているかリスト化し、友人や家族間でタスクをつねにシェアしています。また、Fitbitやルナルナなどをカップルでシェアして、お互いの体調を管理している場合もあります。

これまで社会全体的に「プライバシー意識は高くあるべき」と考えられてきましたが、近年これらのアプリの登場により、プライバシーの捉え方に大きな変化が見られました。それは、「友人やカップル間でのコミュニケーションを円滑にするためであれば、(その関係の中で)プライバシーを解放してもいい」という考え方です。
本レポートでは、アプリによって取得された多くの個人情報がどのように活用されうる可能性があるのか、また、C2C(ユーザー間)でどのようにプライバシーが活用されどんなコミュニケーションが生まれるのか、プライバシー解放の先にある、個人情報を介したコミュニケーションの未来を洞察しました。

今回の調査はプライバシーシェアラーを下記3つのセグメントに分けて調査しています。

GPSシェアラー
位置情報共有アプリ(ex. Zenly)を使い、自身の現在地をリアルタイムで公開する生活者。日程調整など、繰り返し発生するコミュニケーションの手間を無くしたいと考えている。

カップルシェアラー
恋人同士で互いの個人情報(ex. カレンダー、銀行口座、写真)を共有する生活者。可能な限り全ての情報を共有することで、いざこざの元を無くし、互いに気遣い合える環境を作りたいと考えている。

アノニマスシェアラー
オンラインサロンなどを通じて、自身の生活やスケジュールを不特定多数の人々に公開する生活者。自身に似た境遇の人たちに向けて情報を公開することで、互いの悩みの解消や、知見の共有をすることを目的としている。

 

彼らの調査から見えてきたプライバシーシェアの大きな価値は、「コミュニケーションの手間をいかにはぶけるか」という効率性の意味でのベネフィットです。位置情報をシェアしているからこそ、待ち合わせ時間に遅れることなどをわざわざ伝える必要はなく、コミュニケーションの数が削減されるというベネフィットは想像しやすいのではないでしょうか。
一方、効率性とは逆に、「ディスコミュニケーションを避け、相手の感情や状況をおもんばかるためにお互いのデータを活用する」という価値もあります。今回はとくに後者の価値に注目しました。

SEEDATAが分析したプロファイルの一部をご紹介すると、プライバシーシェアラーは、それぞれがどれだけタスクを抱えているかをお互い可視化することで日々相手を思い合っているという価値観を持っています。

たとえば、たとえ一緒に暮らしていても表情や言動だけでは分かりえないも部分も多々あります。相手がイライラしていると感じたとき、その原因が仕事の忙しさか、気圧の低さか、体調不良によるものなのか、まったく別のことに対してなのかは、想像することしかできません。これまでは、この見えない部分をうまく推し量ることができず、ディスコミュニケーションが生まれがちでした。
しかし、例えばお互いのタスク量を可視化することができれば、仕事やプライベートのタスク量やストレス感情の原因が分かり、代われる家事を引き受ける、リラックスできる飲み物を淹れてあげるなど、コミュニケーションをよりスムーズにすることが可能です。

また、このプロファイルから「データベース活用による思いやり」というお互いのデータをもとに相手の感情や状態を想像して交流する生活者変化行動仮説が考えられます。
たとえば、相手の位置情報が分かることで「今は誘わないほうがいい」または「誘おう」と想像したり、繁忙状況や身体情報が分かることで、相手と自分の家事量を調整したり、気圧やバイオリズムなどが分かることで、シンプルにストレスの原因を察知したりすることが可能になります。

これまでもさまざまなデータのシェアはありましたが、あくまで目的はデータをシェアすることでした。しかし、今後は、お互いの心身の状態や繁忙状況を知るために自分のデータをシェアし始めるという変化が起こると予想されます。

さらに、機会領域のひとつをご紹介すると、たとえば、現在共働き家庭向けに、Time Treeを始めとする家事シェアアプリはさまざまなものがありますが、今抱えているタスク量だけではなく、今何かを依頼する余裕があるか、総合的な相手のステータスをシェアできるようなタスク管理ツールが考えられます。

お互いの繁忙状態により、育児や家事の分担を考える際、お互いのスケジュールだけを知るのではなく、さまざまなデータから、今タスクをおこなう余裕があるかないかだけが端的に抽出され、お互いがそのステータス状況を把握できるようなサービスデザインが今後求められていくことが予想されます。
もちろん家庭だけではなく、ビジネスにおけるタスク管理ツール開発へのヒントにもなるでしょう。
たとえば、上司が部下に仕事を依頼したいとき、現段階ではスケジュールに入れてある予定を見ることでしか判断できませんが、さまざまなソースをもとにオートメーション化されたステータス機能があれば、仕事の依頼の可否を端的に知ることができます。
現在ステータスを手動で設定するアプリもありますが、日々手動で設定することは、便利のために手間が増えてしまっているため、手間とベネフィットがつりあっていません。
今後、カレンダーアプリと体調管理アプリや位置情報アプリなどの複数のデータを連携させることで、自分のステータスを周囲に知らせることもおそらく可能になっていくでしょう。

プライバシーをシェアするミレニアル世代は、コミュニケーションのすれ違いや意図していない伝わり方をすることを極端に避けたいと考えています。
LINEなどのチャットツールを通したオンラインでのコミュニケーションが発達しすぎた結果、文字情報だけで発した言葉やスタンプは歪曲してとらえられ、ディスコミュニケーションを生む原因ともなってしまっています。
そこで、これまで今までオフラインで知ることができた相手の表情や空気感など、ノンバーバルな言語でない情報を、データで補完していきたいと考えているのです。プライバシーを守りつつ、お互いの今の状況が正しくシェアされることが、今後の求められる社会の在り方になっていくでしょう。

トライブレポート本編の内容につきましては、information@seedata.jpまでお問い合わせください。

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