SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング支援を行っています。トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
当リサーチでは、ライフステージが進んだミレニアム世代の価値観から、今後の働き方・キャリア観・コミュニティ運営・住まいについて洞察をしています。
2019年から働き方改革が施行され、日本の働き方は大きな変化の時を迎えています。SEEDATAでは副業や複数の仕事を持つ人たちの時間の使い方、休息のとり方に着目し、「ワーク」を新たに捉え直している人を「リワーカー」と定義しリサーチしました。
リワーカーは企業単位ではなく、個人単位でもリデザインしたり、新しいスタイルに変革し始める人びとです。
デスクリサーチ
日本の人口は減少を辿り、今後も労働人口は減少していくことが分かっています。それに対応するために、労働力不足に備えて、労働生産性を向上するための施策として打ち出された働き方改革には以下の3つの柱が掲げられています。
①労働時間の是正
長時間労働や過労死が社会問題となり、労働時間を見直すための指標を設定。時間外労働の上限を原則で月45時間・年360時間に設定。
②格差解消
正規・非正規雇用者の賃金格差を是正。正規・非正規にかかわらず、労働内容が同じであれば、同等の給与を支払う同一労働同一賃金の制度を設定。
➂多様で柔軟な働き方の実現
時間給で対価を設定するのではなく、成果により、評価・収入を得る働き方を本人の意思で選ぶことのできる高度プロフェッショナル制度を設定。
➂はとくに副業解禁の流れで、多様な働き方が登場し始め、制度だけではなくワークスタイルにも大きな影響を及ぼしています。
これまで働き方の変化として、プライベート時間を軸に働く時間を考える「ワークライフバランス型」がありましたが、最近では趣味や自分のスキルを活かし、本業とは異なる仕事や、将来のキャリアを考えて、関係するスキルを伸ばすための仕事など、複数の職に就く「ライフ拡張型」という働き方が登場しています。ワークとライフのバランスをとるということを目的とするより、自分のやりたいことを実現していることが、ライフ拡張型の大きな特徴といえるでしょう。
また、『マルチプル・ワーカー 「複業」の時代:働き方の新たな選択肢』著者・山田英夫氏は、副業をケイパビリティ(能力)と収入で以下のように4つに分類しています。
伏業・・・内職やネットで不用品を売るなど、極めて低単価の仕事。会社に伏せてやることが多い。ケイパビリティも収入も低く、続けてもキャリアには繋がりにくい。
副業・・・昔から言われてきたサイドビジネスで、コンビニの店員、警備員や肉体労働など。時給に換算すると、会社の残業代より安いことが多い。収入の補完、お小遣い稼ぎのために行うような仕事。
幅業・・・ボランティアやNPO活動など、多くの収入は期待できないものの、社会的意義ややりがいを感じられ、人間の幅やスキルの幅を広げるもの。
複業・・・起業に代表される仕事で、収入もスキルの幅も広がるもの。ケイパビリティも収入も高い。
<参照>https://biz.moneyforward.com/blog/34784/#4
幅という意味での副業をSEEDATAではサイドハッスルとも呼んでいますが、収入よりもスキルをいかしていきたいという働き方が広がり始めています。
デスクリサーチにより、今回のセグメントは以下の3つに分類しました。
STYLE1.SUB 副業
本業に活かせるスキルを副業を通して得る。副業を通して、自分自身の市場価値を高めようとする。
例:webマーケティングをしている人がフリーで似たような仕事をしてスキルを得ていく
STYLE2.DOUBLE 複業
今後のキャリアゴールがあり、スキルや人間関係を得るステップとして複業を行う。
STYLE3.HAPPY 福業
キャリアやゴールに関係なく、自分のやりたいことや好きなことを見つけて福業する。
これらの3つのセグメントは完全に独立したものではなく、重複している部分も多くありますが、この3つのいずれか、あるいは複数に当てはまる人びとにインビューをおこないました。
リワーカーの詳細なプロファイリングについては、トライブレポート本編にてご紹介しています。トライブレポート本編をご希望の方info@sd-g.jp までお問い合わせください。
生活者変化行動仮説
仕事と休息の垣根がなくなっていく「ワークライフグラデーション」という考え方はこれまでもありましたが、これはSlackなどスマートフォンやPCで常時接続するコミュニケーションツールが登場したことで、完全休息や完全にひとつのことに集中できる時間がとりにくくなっているという背景があります。
リワーカーの働き方調査から、一口に仕事といってもなにかひとつのことをおこなうのではなく、同時にマルチタスクをこなすことが前提となっていることが分かり、われわれはワークライフグラデーションをさらに6つに分類し、整理して分析しました。
この分類はもっとも休息に近い時間設定から、もっとも仕事に近い時間設定まで、休息と仕事を同時におこなっていくものまで、事例をもとに分類したものですが、今回はこの中から2つをご紹介します。
①リラクション
リラックス&アクションというSEEDATAの造語で、リラックスしながらインプットする時間で、具体的にはネットフリックスの鑑賞、読書などがあげられます。
たとえば、ネットフリックスで興味のあるドキュメンタリーを見ることは、くつろぎたい気持ちもありつつ、仕事や業務における情報収集や会話のネタを探している時間でもあります。このように、休憩と考えながら仕事のことも考えている時間をリラクションと呼んでいます。
また、リラクション行動は家中など、気持ち的にリラックスして集中できる空間でおこなわれます。機会領域としては、たとえば、オフィスの空間設計やオフィス内での働き方のデザインへの活用が考えられます。今後の働き方を考える際、ワークライフグラデーションの中にある具体的なパターンを実際の空間設計、体験設計に落とし込むことで、デジタルに常時接続する人びとのスムーズな働き方を実現することができるでしょう。
また、これはオフィスでの空間設計、体験設計だけではなく、消費財にも活用できます。リラクションは休息行動でありつつ、働く気持ちもあるという相反する概念のため、たとえば飲料や食品などを食べながら、リラックスしてお酒を飲みながらインプットすることも可能なので、食品や飲料を考える際のコンセプトの参考にもなります。
②ブレインブレイク
仕事時間ではあるものの、メールの返信、経理処理、家中での掃除時間など、単純な作業時間は頭を使わないため、比較的休憩に近い時間と捉え、リラックスしたい際におこなっています。
これまでの休息は、完全に気分転換となるよう仕事以外のことをしていましたが、メールや雑務処理が休息の時間となっているのは大きな変化といえるでしょう。背景としては、仕事中の頭を使う時間が以前より増加していることがあげられます。そのため、業務の中でも「頭を使う時間」と「頭を使わない時間」を使い分けているのです。
この、ある種の新しい休息の発見は、オフィスの中で飲食する食品や飲料の開発にも活用できます。これまでのリラックスは完全に仕事のことを忘れる時間でしたが、100%休息ではなく仕事に取り組みながらリラックスできる、ちょっとした休息気分を感じながら仕事をするという生活者の変化であり、このリラックスのグラデーション部分に着目することも、今後の商品開発やサービス開発のヒントとなるでしょう。
このように、リワーカーのトライブレポートでは、働き方の中でも、オフィスの空間設計だけでなく、休息やリラックスという観点で詳しく分析しているため、生活用品の商品開発、サービス開発のインプットに幅広く活用していただくことが可能です。
トライブレポートの本編をご希望の方はinformation@seedata.jpまでお問い合わせください。