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SEEDATA
公開日:2019.01.10/ 更新日:2021.06.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介38】Makuakeなどのクラウドファウンディングサイトを利用した新商品・サービス開発アイデアのヒント(クラウドファウンダー)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

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これまでビジョンを持った起業家や開発者が、新たにサービスや商品を開発をしようとした場合、一番ネックになるのは資金でした。 想いに共感するスポンサーがいるか、あるいはキャッシュがある場合しか開発できないというような状況を解決するために登場したのがクラウドファンディングというシステムです。

SEEDATAの定義するクラウドファンダーとは、このようなクラウドファンディングに積極的に投資する応援者たちのことで、このような行為をスポンサード行為と考えると、今までは多額な支援金が必要でしたが、クラウドファンダーは少額の投資をさまざまなプロジェクトに行なっているという点がポイントです。

また彼らの中には応援したいという気持ちよりも、先進的な商品を好み、リターンのプロダクトが欲しいために出資する人も存在します。クラウドファンダーに目を向けることで、メーカーから商品を購入しないC2Cの新しい消費体験を発見することができるはずです。

クラウドファウンダーを調査した2016年当時は、日本にクラウドファウンディングが登場して5年ほどで、ようやく一般的になってきた頃です。

2018年現在ではさらに一般化し、大手企業がクラウドファウンディングを活用しイヤホンや電動バイクなどの新しい商品を出すなど、すでに新たな流通チャネルのひとつとして浸透していることはみなさんご存知のとおりです。クラウドファウンディング発で世の中に出てきた商品を見たことがないという人はいないほどではないでしょうか。

調査当時から我々が意識していたことは、「人は今目の前にあるものを買っているのか」ということです。「ドリルを買っている人が欲しいものはドリルではなく穴である」というマーケティングにおける有名な格言がありますが、これはSEEDATAが日頃から活用しているジョブ理論にも通ずる考え方です(参照記事:なぜエスノグラフィーでジョブを見つけることができるのか?-SEEDATAエスノグラフィーセミナーレポート③)。

つまり、モノを買うためにクラウドファウンディングにお金を出しているのではなく、どちらかというとモノ自体ではなく、消費者はクラウドファウンディングの情報やプロセスにお金を払っていると考えられるのです。プロダクトそのものではなく、クラウドファウンディング自体が商品化し、消費の対象となっているということをマーケティングに関わる人や新規事業の担当者は理解しなければいけません。

そもそもクラウドファウンディングとは、クリエイターや起業家、組織などが、 不特定多数の人々に資金の提供や協力 などを募るという意味を持つ、群衆 (crowd)資金調達(funding)を組 み合わせた造語です。

起案者がWEBサイトを通じて「こんなモノやサービスを作りたい」「世の中の問題をこんなふうに解決したい」といったアイデアやプロジェクトを世の中に呼びかけ、不特定多数からの資金出資 や協力を募る仕組みのことをクラウドファウンディングと呼びます。

一般的な資金調達では、銀行やVC、投資家などから借り入れを行う際は株式や担保金などが必要です。しかし製品やサービスのアイデアや制作スキル もあるが、そのための資金や元手がな かったり、そもそも知名度がないクリ エイターや起業家でも世の中の共感を得ることで資金調達ができるのがクラウドファンディングの大きな特徴であり、メリットの一つです。

そもそもクラウドファンディング自体の歴史は古く、17世紀初頭のイギリスにまで遡ることができます。当時活躍した書籍編集者のジョン・テイラーは書籍の印刷代を寄付によって集め、寄付の見返りとして、寄付者の名前を書籍に掲載するという権利を提供しました。このように寄付に対して、何かしらの価値を提供するという形式は、現在行われているクラウドファンディングの取り組みにも通じるものがあり、クラウドファンディングの元祖ともいわれています。

また、アメリカの「自由の女神」は、アメリカ合衆国の独立100周年を記念してフランスより贈呈されたものですが、自由の女神を載せる台座を建設していたアメリカ の「自由の女神製作委員会」が、台座製作の建築資金を使い果たすという事態が起こりました。この問題を解決すべく立ち上がったのがジョセフ・ピュー リッツァー氏で、自身が経営する新聞で広く一般市民に台座建設の費用を寄付するよ うに呼びかけました。その結果、約6ヶ月で10万ドル近い寄付が集まり、無事台座は完成したのです。見返りの品はなかったものの、少額を多くの人から集める例としてクラウドファウンディングの考え方としてとらえられています。

その後、インターネットを利用した クラウドファンディングサービスが登場します。

2003年に登場したArtistShareという音楽レーベルは、アーティ ストが自身のCD制作に投資してくれるファンを探すことができるという当時としてはユニークな取り組みを行いました。利用者はこのレーベルを介することで、好きなアーティストに投資することが出来たのです。投資したファンはパッケージ化されたCDに加え、音楽制作のプロセスを見届けることができたり、ビデオや音声でのプロジェ クト最新情報、写真ダウンロードなどのボーナスが提供されました。 このレーベルはクラウドファンディングの仕組みをインターネッ トで行った最初の事例であり、クラウドファンディングサービスのパイオ ニア的な存在といえるでしょう。

また、2009年にアメリカで創業された「Kickstarter」という企業では、自社サイトでクリエイティブなプロジェクトに向けてクラウドファンディングによる資金調達を行う手段を提供しています。現在世界最大規模のクラウドファンディングサイトになっ ており、クラウドファンディングという言葉を世界に広めることになりました。

Kickstarterは「B-Corp」と呼ばれる株主の利益よりも公益を優先することが法的に認められた企業形態を取っており、この形態を取っていること自体が、クラウドファ ンディングという仕組みそのものの社会貢献性を象徴しているといえるでしょう。

クラウドファウンディングサービスの分類

SEEDATAではクラウドファンディングサービスを以下のように分類しています。

購入型

購入型クラウドファンディングとは、ファン(支援者)がプロ ジェクトへ出資することで、そのリターンとして支援金額に応じた金銭以外の商品やサービスが手に入る最もスタンダードなタイプ。 前のページまでのCFサービスは全て購入型。様々なジャンルのプ ロジェクトが魅力である。

<代表サービス>

CAMPFIRE、MaKuaKe、READYFOR?

寄付型  

寄付型クラウドファンディングとは、プロジェクトに対して出資を行うが、あくまでも「寄付」であるためリターンは発生しない。被災地支援や途上国の支援など、社会貢献系のプロジェクトが多い。いわゆる募金とは異なり、プロジェクト主が資金をどの ように活用したのかが分かりやすいのが特徴。

<代表サービス>

JAPANGIVING

金融型

金融型クラウドファンディングとは、出資者が特定の企業などに出資を行い、リターンとして金銭(配当や利益の一部)または株式が発行されるというタイプ。ソーシャルレンディングや投資型クラウドファンディングとも呼ばれる。個人投資家から資金調達しやすく投資家からしても小口投資が可能なため注目を浴び ている。

<代表サービス>

Crowdcredit

新規事業創出型

企業が自社サービスや製品の立ち上げのためにクラウドファン ディングを利用するもの。中小企業であれば、既存のクラウドファンディングサイトを利用することが多いが、大企 業の場合は自社の製品やサービス開発のためだけのクラウドファ ンディングサイトを立ち上げ、そこでクラウドファウンディングを実施する場合が多い。

<代表サービス>

Wonderfly

SEEDATAではこれまでほかのトライブレポートでも応援消費を調査してきましたが、株式交換型のクラウドファンディングにポテンシャルがあるだろうということで金融型の日本クラウドキャピタルに出資をしています。

また、上記の中でも2013年にサイバーエージェントがスタートさせた購入型のMakuakeは Amebaの強大な告知力を背に急成長を見せるクラウドファンディングサービスといえるでしょう。

購入型クラウドファンディングにおいては業界最速である、サービス開始3年以内 で累計調達金額15億円を突破したことは有名ですが、金額だけではなく、キュレーターと呼ばれるスタッフが起案者とミーティ ングを行うなど、プロジェクトの成功に向け手厚いサポートを行っているのも特徴のひとつです。

出資者側のメリットとしては、決済手段が多様であること、スマホでの閲覧や決済にも対 応していることなどが挙げられます。プロジェクトのPRやテストマーケティングの場としての活用も推進しており、実際にプロダクトがMakuake提携先の店舗で取り扱われるなど流通販路の連携も大きな強みとなっています。

近年、Makuakeで人気漫画『この世界の片隅に』の映画化に3000人以上が支援が集まり映画化が実現した事例は記憶に新しい方も多いと思いますが、当プロジェクトは2015年3月に募集を始め、初日だけで750万円を集め、8日後には目標の2000万円に達し、最終的 に3374人のサポーターから、3900万円を超える額を集めました。

映画ジャンルのクラウドファンディングとしては、当時の国内最高額を記録し、上映開始されてから新たに海外上映を盛り上げるための新規プロ ジェクトも始動し、3000万円以上を調達することに成功しています。

続いて、購入型の中でも日本最大規模のクラウドファウンディングサービスであるCAMPFIREは、クラウドファンディング黎明期である2011年6月に、家入一真氏と石田光平氏が共同創業したサービスとして注目を集めました。

アーティスト、映画監督、ミュージシャン、プロダ クトメイカーといったクリエイターや、新たに何かを始めたい一般人が資金調達を行える、日本最大規模のクラウドファンディング・プラットフォームとして機能しています。手数料は国内最安の5%で運営し、サービス開始以来累計2000 件以上の多様なカテゴリのプロジェ クトを掲載しています。

CAMPFIREではキングコング西野氏が自身が描いた絵本『えんとつ町のプペル展』の展示を表参道にあるセゾンアートギャラリーで開かれることになった際に、全てのイラストを光る仕様にするためのクラウドファウンディングが実施され成功しています。

新規事業創出型としては、SONYが新たな施策として運用しているクラウドファンディ ングとEコマースのサービスを兼ね備えたFirst Flight があげられます。柄が変わる時計「FES Watch」や”あなたになじむリモコン”というコンセプトの「HUIS REMOTE CONTROLLER」などたくさんのプロジェクトがこのサイトで人気を集めたことで、実際に製品化されるに至っています。

また、当然クラウドファウンディングでは成功ばかりではなく失敗が起きることもあります。

クラウドファンディング史上、最大の失敗ともわれているのが、超小型ドローン「ZANO」の開発プロジェクトです。スマートフォンと接続し、写真や動画の撮影ができる手のひらサイズドローンとして世界中で話題になりましたが、4億円以上集め「完成間近」と謳っていたにもかかわらず、実際には延期の連続で1,5000台の オーダーに対してようやく出荷された台数は600台程度という結果に終わっています。完成品も壁にぶつかったり、画質が悪すぎるなどの状態でまともに飛ばすことすらできない状態だったといわれています。

また、クラウドファンディングにおいて初の返金命令が下された詐欺まがいのプロジェクトがAsylum Playing Cardsです。このプロジェクトは「レトロ・ホラー」デザインの限定版トランプの制作という内容で、約300万円を集め成功しましたが、プロジェクトが成功し、発送予定を過ぎても支援者に商品が 届けられることはなく、最後には完全に“音信不通”となるなど悪質な対応をとり続けたことで裁判に発展しています。

以上はクラウドファウンディングの基礎知識ともいえる部分ですので、クラウドファウンディングを始めたい個人や企業の担当者は必ず理解しておく必要があります。

では、ビジネスという視点に立ったとき、近年クラウドファンディングを利用している大企業が増えてきた理由としては、購入型クラウドファンディングの存在があげられます。

実際どのようにビジネスで活用されているかというと、ひとつは新規サービスの市場調査です。しかし、SEEDATAでは「クラウドファウンディングは市場調査にはならない」と考えています。

何故なら、クラウドファンディングを使っている人のインサイトは、冒頭でもご紹介したように「商品そのものではなくプロセスを買っている」からです。

クラウドファウンディングは商品やサービスを大がかりに売っていったときに生活者の意見をもらえるという意味では機能しますが、新規事業や新商品開発を行う人はクラウドファンディングが市場調査になると考えることは大きな間違いです。

一方で中小企業の場合、市場進出支援にはなるでしょう。クラウドファンディングを使うことで、試行錯誤するプロセスを喜んでくれる人を見つけられたり、開発するときの仲間を見つけたりすることは可能になります。

たとえば、会員制の馬肉屋をやりたいときに常連客を見つけたり、コミュニティに対して売っていくことに対してクラウドファウンディングは非常に相性がよいといえるでしょう。

ただ、繰り返しになりますが、大手企業にとってはPRや広報にはなりますが、将来的に量産を見据えたターゲットに対するテストマーケティングや市場調査にはなりません。クラウドファウンディングで可能なのは開発資金の確保と常連客ないし初期採用者の確保の2種類と考えましょう。

今回のセグメントは、基本的にクラウドファンディングに出てくる商品を買うという体験は同じですが、アプローチは以下の4つに分類されます。

ナレッジコンシューマー

自分が購入した商品のストーリーやウンチクを自慢したい人。 クラウドファンディングでは、生活必需品やブランド品ではなく人に知識を語れるものを購入しているのが特徴。 たとえ購入した後に使わなくても良いと考えている。

ニューバイ

新奇性のあるものを買うという体験自体を消費している人。

クラウドファンディングで取り扱われている商品は、 まだ実際に販売されてはいないため、新規性のある商品を好む人にとって、クラウドファンディングは親和性が高い。

トレンドフォロワー

クラウドファンディングで話題になった商品や、金額が集ま っている商品を狙って購入する人。周囲の人にセンスが良いと思 われたい理由で、クラウドファンディングを利用している。

マイクロスポンサー

お金を払った商品を応援する気持ちが強く、 商品が世の中に誕生する瞬間に自分が貢献したいと感じている人。 出品した人を応援するのではなく、モノを応援していることが特徴。

クラウドファウンダーからSEEDATAが分析したマーケティングコミュニケーションのヒントをひとつご紹介すると、「商品が到着するまでを楽しみたい」というプロセス消費があげられます。

彼らにとって大事なのは、商品が届くことよりも、起案から応援が集まり、 商品がどのように作られ、どのような苦労を経て自分たちの手元に届くのか、というストーリーを感じられるかどうかなのです。価値を感じるのは商品そのものよりも、むしろ商品が届くまでのストー リーであり、また、手元に届くまでにどんな使い方ができるか考えるのが彼らにとっての楽しみともいえるでしょう。

ではそのストーリーをどのように作っていけばよいかというと、プロセス消費に着目し、完成の前段階で商品開発当初のコンセプトや、開発途中の商品が消費者に手元に届くまでの過程を公開することに価値が生まれていきます。

クラウドファンディングでより多くの資金を集めるためには、どのプロセスを伝えれば喜んでもらえるかを考えることで、ストーリーを作ることも可能です。

クラウドファウンディングを活用して新商品を作りたいという企業の方はぜひSEEDATAにご相談ください。我々はクラウドファウンダーのレポートをもとに、より多くの人たちに共感してもらえるストーリーを作っていくことが可能です。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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