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SEEDATA
公開日:2019.01.25/ 更新日:2021.06.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート41】マインドフルネスに着目した新規事業や新サービスアイデアのヒント

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

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ストレス対策や仕事の能率向上など、日常の様々な場面でマインドフルネスに注目が集まってきています。SEEDATA ではマインドフルネスを通じて、身体の調整を超えた「心のコンディショニング」に取り組む人々を、マインドチューナーと名付けました。

その方法は座禅からヨガ、ランニングに至るまで様々ですが、その先に辿り着く自己、そして他者への「気づき」が、他者との関わり方や、 社会における自分のあり方の意識に変化を及ぼしていると分析しています。

今回は「気づき」によって、ス トレスや迷いを乗り越えた心の健康、さらにはよりよい組織や社会づくりを追求するマインドチューナーをご紹介します。

日本でマインドフルネスという言葉がビジネスの文脈に取り入れられ始めたのは数年前ですが、そもそもはアメリカからスタートしたものです。マインドフルネスは日本人の感覚では昔から座禅でおこなっていたことと近い部分があり、なかば逆輸入的にビジネスマンに注目されてきたという背景があります。

「リラックスを提供したい」「癒しを提供したい」というお題で商品開発やサービス開発をおこなうことはよくありますが、消費者行動でみるとニーズとウォンツは異なります。

ニーズは「癒しを得たい」「リラックスをしたい」ということですが、ではどういう風に自社商品やサービスに向けられたウォンツ開発につなげればいいかが分からず開発担当者のみなさんは困っているわけです。

そこで、このマインドチューナーのレポートを活用することで、リラックスや癒しとは具体的にどういう価値観で、どういうアプローチで、どういう行動かという全体像を知ることができます。つまり、癒しやリラックスしたいというニーズを持っている人に対して、どうウォンツにつなげて開発していくか、もっというとジョブを見つけられるかというヒントになるでしょう。

マインドチューニングとは「心の調整方法」を意味する言葉です。

今回主に取り扱うマインドフルネスに限らず、方法には様々なものがあります。広義では筋力トレーニングや、自然浴もマインドチューニングの手段として捉えることができます。

多くのマインドチューニングは大きく2種類のカテゴリーに分類することができ、1つはビジネスなどのパフォーマンスを 高めたいという「ブースト」欲求に基づくもの。もう1つは日々の疲れや傷ついた心を癒やしたいという「ヒーリング」欲求 に基づくものです。

しかし、それらはどちらも最終的に自分の健やかな心の状態を達成するために行っている ことであり、本質的には同じゴールに向かう行動であると考えることができるでしょう。

そして、それを叶えるための具体的な手法として、筋トレ、トレイルラン、アンガーマネジメント、瞑想、ヨガ、自然浴などがあげられます。

トレイルラン

土手や森林公園、山地など、舗装されていない不整地を走るスポーツ。凹凸や傾斜の 激しい道を走るため、ペース配分や足運び、バランス感覚などのテクニックが問われ る。欧米では山地を1~2日間かけて走る長距離レースも開催されているが、タイム や距離を競わないアウトドアレジャーの一環としても広く普及している。

不整地を長時間走るため、身体のバランス感覚に常に集中している状態が続く。また、斜面を下るなどの激しい運動によって呼吸が活発になる。このような雑念を捨てて地面に接する足と自らの呼吸に集中できるフロー状態に加え、都会の喧騒から離れ、大自然と一体化できる没入感も魅力の一つといわれている。

近代的なトレイルランのレースは20世紀頃から開催されていたが、2009年にクリストファー=マクドゥーガルが出版した「BORN TO RUN」が世界中で大きな反響を呼び、トレイルランブームの火付け役となった。

瞑想

瞑想では調息、調身、調心と呼ばれる「整える」動作が重要。調心では心を整えるために目を閉じ、呼吸に意識を集中することで無心な状況を作り出している。そのためにもお香やアロマ、音楽などの体験者を取り巻く環境面の整備が必要となっている。

以前までは宗教の修行の一環として使われていたが、科学的に効果が認められるようになってから脳機能の向上・仕事の効率化・集中力アップといった能力面での目的やストレス解消・免疫力アップ・安眠・美容など、身体&精神面の活用もされている。

元々の瞑想は仏教、キリスト教、イスラム教などの宗教と深く結びついている傾向が多く、特に仏教においては紀元前に遡る古い時代から行われていたといわれ、日本の伝統的な瞑想としては座禅が挙げられる。

初心者向けにスマホの瞑想アプリが人気を博していて、音声ガイダンスで準 備から実践まで座禅をナビゲートしてくれるもの、眼鏡と連動することで瞑想を可視化するもの、忙しくてあまり時間が取れない生活者でも継続できるように5分間の瞑想がおこなえるものなどがある。

ヨガ

元々はインドの諸宗教で用いられていた修行法の1種だったが、現在では複数の姿勢、ポーズを取ることで身体の筋力を鍛えるフィットネスの一種として実践されてい る。ヨガ実践者の多くは、美容や健康の動機で始めた女性である。

身体と心の両方に効果があり、身体は歪みが矯正され、柔軟性や体力が向上する。また、心は集中力が高まり、おだやかで揺るぎない精神状態を作りだすことができる。 体全体が引き締まった美しいプロポーションを手に入れられ、活力に満ちた前向きでおだやかな気持ちを得られるのがヨガの特徴。

ヨガはサンスクリット語の「ユジュ」(牛や馬と車をつなぐ軛)が語源。現在世界中に普及しているヨガのポーズは、ハタ・ヨガ(伝統的なヨガの手法)を基礎として生まれた。その後、様々な流派が登場し複雑に交じり合いながら、心と身体をリラッ クスさせ、健康的で充実した生活を送るためのツールとして、現在のヨガが完成した。

マインドチューニングの中でも、おそらく最も浸透している方法であり、全国各地にヨガスクールがあり、気軽に実践することができる。また出勤前の朝ヨガなどのイベ ントも頻繁に開催されており、日常の中で気軽に実践することができる。

アンガーマネジメント

ストレスに伴う「怒りの感情」や行動の背景にある認知に焦点を当てより穏やかなも のに変えていくことで、自分の力で感情をコントロールできるようになることを目的 とした、「認知行動療法」の理論に基づいた方法。

単に感情を押さえつけるのではなく、混沌とした気持ちを整理したり、状況を客観的に見る力を育てることを通じて、衝動性が高まっても自分で沈静化し適切な表現や問題解決ができるようになること。

アンガーマネジメントは、1970年代のアメリカで、DVや差別、軽犯罪者への矯正プログラムとして開発されたものだが、その後、教育や職場の環境改善、学習、業務パフォーマンスの向上のために長年活用されている。

ニューヨークに本部をおく「ナショナルアンガーマネジメント協会」の日本支部があり、 より健康的な生活、住みやすい社会の実現のためにアンガーマネジメントのプログ ラム開発、社会貢献活動、プロフェッショナルの育成などを行っている。

MBSR

MBSRとはマインドフルネス・ストレス低減法(Mindfulness-Based Stress Reduction)を指し、ジョン.カバットジン博士が1979年に開発したストレス対処 法である。1990年代にはうつ病治療を目指すMBCT(マインドフルネス認知療 法に発展する。主に、身体全体に意識を集中させる呼吸瞑想やヨーガ瞑想がある。 現在では教育、企業、スポーツとあらゆる分野に適応され、普及されている。

意識を今の身体に集中させることで痛みや苦しみ、不安、悩みなどに振り回されず、 ストレスと上手な付き合い方ができるようになる。具体的には不安障害、喘息、心 臓病、ストレス障害、睡眠障害などに効果がある。

禅やヨガの考え方がMBSRのベースとなっており、1979年当初はマサチューセッツ 大学医学部の「ストレス低減クリニック」で慢性疼痛に悩む患者に実施された。

MBSRをつくったジョン・カバットジン博士のマサチューセッツ大学医学部マイン ドフルネスセンターがアメリカでは中心であり、日本では日本マインドフルネス学 会が科学的・学術的研究と社会普及を行っている。

マインドフルネスの定義と浸透の背景

マインドフルネスは、運動をして身体的な健康を高めるのと同様に、心や精神の健康を高めるための取り組みです。

マインドフルネスとは、生じる全ての事柄に対して、瞬間瞬間に「今」に注意を払っていくことにより、これまでとは違った自分や周囲との関わり方が築かれていくことをいいます。具体的には五感、体内に生じる感覚、思考、感情、周囲の状況に 意識的に注意を向けることにより「反応から気づきに基づいた対応」を瞬間瞬間におこなっていくことを実践として日常生活に取り入れてくことを目的としています。 この実践により、マインドの働きの中の刺激と反応の間に選択の空間が生みだされ、こ れまでとは違った物事との関わり方ができるようになるといわれています。

ジョン・カバット・ジン博士によって、マインドフルネスは仏教や禅の手を離れた、科学的な治療法へと進化を遂げていったといえるでしょう。

マインドフルネスについては、様々な場所で著名人が定義について語っていますが、それらはどれも実践した本人だからこそわかる定義であり、未だマインドフルネスをやったことがない人たちにとっては分かりにくいものになっています。

そのためSEEDATAでは、インタビューとデス クリサーチを踏まえてメタファーを活用することで、未経験者にとっても分かりやすいよう、以下のように定義します。

脳の筋トレ

複数の研究者の実験によれば、瞑想の熟達者の脳をMRIによって測定したところ、 前頭前皮質と島皮質における脳組織の体積が一般の生活者と比べて大きいことが分かりました。瞑想を続けることで、これらの部位を鍛えられる点から、マインドフルネ スは脳の筋力トレーニングともいえるでしょう。

鳥俯瞰的視点の獲得

マインドフルネスをしている最中は、瞑想を通じて自分の心を客観的に、俯瞰して見つめます。視点を空を飛ぶ鳥のように高いところにもっていき、自分の状況とその時の状況を、眼下に広がる街のように把握するイメージです。

また、マインドフルネスという言葉は聞き馴染みがないため、その意味や使い方が誤って理解されている場合がまだまだあります。通俗的な定義では、「座禅を組み、瞑想を通じて集中する行為」という意味で動詞として「マインドフルネスをする」「マインドフルネスを行っている」という風にもちいられます。マインドフルネス=瞑想、という誤解をされがちですが、瞑想だけがマインドフルネスな状態ではないということを理解しましょう。

一方、本来のマインドフルネスは「今この瞬間に集中しながら、現在を評価したり感情的に反応しない状態 」(その結果、ストレスがなく、落ち着いた心を得る事ができる)という形容詞であり、「心がマインドフルネスである」「マインドフルネスな心の状態」ということができます。

つまり、マインドフルネスは状態であり、手段ではなく目指すゴールなのです。 瞑想はあくまでマインドフルネスな状態を手に入れる手段のひとつにすぎません。

マインドフルネスの浸透には2つの大きな背景があります。

ひとつはアメリカに渡った禅僧の尽力により、Appleの創業者であるスティーブ・ジョブズのような著名人に浸透していったこと。アメリカに渡った禅僧が禅の普及に努め、その 結果、ジョブズをはじめ、ビジネスマンの間で禅が少しずつ注目されるようになりましたが、宗教的な側面から敬遠する人も多くいました。

もうひとつはシリコンバレーを中心に長時間労働や働き方に関する不満の高まりがあったことです。

そしてマインドフルネスが世 の中に広まっていく大きな契機となったのは、Googleで開発されたメンタルケアプログラム、Search Inside Yourselfです。

これはGoogleエンジニアのチャディー・メン・タンがメンタルケアを兼ねた社員の生産性や創造性の向上の一環として開発したプログラムで、宗教ではなく、科学的な手法であることが多くのユーザー獲 得につながりました。現にアメリカの大学でも禅や瞑想という講義名よりもマインドフルネスと書いたほうが、学生が集まりやすいといいます。

その後、Facebook、Intel、ゴールドマンサックスなどの企業でも次々にマインドフルネスが導入されたり、マイケル・ジョーダンなどの著名人が実践したり、商業利用する企業が増加していきました。

マインドチューナーのセグメント

マインドチューナーは大きく3つのセグメントに分けることができますが、悟りの構造のような段階になっていて、入口は2パターンあり、静と動という風に言い換えることができます。

どんなマインドチューナーも、最初はまずブースト、もしくはヒーリングの目的でマインドチューニングを始めます。やがてマインドチューニングを続けていく うちにアウェアネスの領域にたどり着き、進化していきます。マインドチューニングがライフスタイルの中心にあるという価値観は同じでアプローチ方法が異なります。

ブースト

自分の集中力アップ、身体能力アップ、パフォーマンスアップのために実践しているベンチャー系、IT系の人など。個人の生産性アップのためにおこなっている。

ヒーリング

ストレス解消、心と体のコンディショニング、精神状態を安定させる、精神的満足度を高めるためにマインドフルネスを実践する人たち。 もともとは、うつ病気味だったりストレスがたまってた場合が多い。

アウェアネス

マインドフルネスの実践を積み重ねることで、自分自身を理解から他者への 理解、共感の段階にたどり着いた人たち。他人に対するコンパッション(思い やり)をもって行動するひとたち。

基本的には自分のために実践することから始まり、それをやり続けていくうちに座禅と同じで、よりヘビーユーザーになり、自分自身のためや自分自身の理解から他者への理解や共感にたどりついていきます。

これは美容系でマインドフルネスを取り入れている人にもよく見らますが、アウェアネスの段階になると他者に与えられた基準ではなく自分らしさがあればいい、みんな違っていいと認めたうえで自分の美や健康の追求するという段階につながっています。

これはマインドフルネスに限らずある種のヘビーユーザーにみられる現象です。

マインドチューナーのレポートは多く活用されている人気のレポートのため、マインドフルネスをビジネスに取り入れたい企業の方などはお問い合わせください。

最後に、マインドチューナーの人が実践している価値のひとつで、商品開発、サービス開発で必要といわれていながらまだ手がつけられていないアンガーマネジメントについてご紹介します。

アンガーマネジメントはもともと欧米ではわりと有名でしたが、日本でも2010年にフォレスト出版から発売された『怒らない技術』という本がヒットしました。

つまり、この数年で感情というのは抑えきれないものからコントロールするものへと認識の変化があり、その認識の変化を支える技術が言語化されてきたため、コンテンツやマインドチューニングによりアンガーをマネジメントするというような事例が出てきたのです。

たとえば、ウォンツは「本を読むことによってアンガーマネジメントを身に着けたい」「座禅でそのようなメンタルになりたい」というセルフマネジメントできるものに対して向かっています。

そしてこのレポートから分かるアンガーマネジメントのウォンツは、今ある消費財やサービスのリラックスとはまったく別の観点です。ということは、まだこの観点でサービス開発の余地があるといえます。

マインドフルネスというと大抵リラックスや癒し、もしくはパフォーマンスアップの方向へ向かいますが、今からマインドフルネスでサービスや商品を考えようという人は、アンガーマネジメントで作れないかを考えると重要なヒントとなるでしょう。

アンガーマネジメントのアイデアがある人はSEEDATAにご相談いただければ一緒に事業化も考えられます。

マインドチューナーのレポートには、リラックスについての分析とヒントが数多く掲載されていますが、このレポートと一緒に読むことをオススメしたいのが今作っているアーバンサウナです。この2つを併せて読むことで、幅広くパフォーマンスアップやリラックス、マインドフルネスなどについて考えることができるでしょう。

 

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたい場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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