Written by
林 直也
アナリスト

海外進出をサポートするSEEDATAのアジア・トライブセミナーレポート

SEEDATAではこれまでも、企業の海外進出ならびにアジア市場進出のヒントとなる”アジアの旬な生活者”をリサーチ、サポートし、その一部をブログにてご紹介してきました。本記事では、日系企業のアジアでのイノベーションを支援するサービスSEEDATA ASIAを担当する弊社アナリスト林が登壇した「アジア・トライブセミナー」(2018年7月27日(金))の様子から、アジア市場攻略のヒントを、現地の旬な生活者から見出す手法を内容をレポートいたします。

”旬なトライブ”をヒントに、既存商品を現地で適用するための”意味”をデザインする手法とは?

当ブログを読んでいただいている方はすでにご存じかと思いますが、あらためて、トライブの概念について説明しておきますと、SEEDATAの定義するトライブとは、3~5年後の未来に多くの人が直面するであろう課題に現在すでに直面している人たちを指します。一般的な消費者の先をいく価値観をもっているトライブをSEEDATAではすでに400種類定義しています。

SEEDATAではこれらの人々を定性的に調査し、データベース化し、国内では100社以上に新商品新サービス、新規事業の支援を行っているのですが、これをアジア進出、ならびに海外進出のサポートに応用するために設立されたのがSD/SAです。

本セミナーでは、アジアトライブ(アジアの旬な生活者)を見る必要性から、アジアトライブをヒントに既存商材を現地で適用(市場攻略の機会)するための意味をデザインする手法(見出す手法)を中心に語られました。

セミナーでは、まず、ある有名な日本のスポーツ飲料のアジア進出成功事例が紹介されました。

日本で1980年代に発売されたこの商品は、1989年からインドネシアでの販売をスタート。2018年においては日本での売り上げの約半分をインドネシア市場で達成しているヒット商品ですが、進出当初は日本国内と同じ売り出し方をして現地では受け入れられなかったといいます。

林「もともとこの商品は体の渇きを癒す飲料というコンセプトで売られており、日本国内ではスポーツの前後、あるいはお風呂上り、二日酔い後に体の渇きを癒すことが生活者に提供している価値でした。

しかしインドネシア進出は結局うまくいかなった、何故なら今でこそインドネシアの人々の健康志向の高まりなどの価値観の変化があるものの、当時は熱帯気候である現地ではスポーツ習慣はなく、湯船につからないので喉は乾かない、また、イスラム教徒が多いため飲酒の習慣がないなど、そもそも日本と同じような利用シーンが存在しなかったため、日本と同じ価値提供では訴求できなかったのです」

そこで現地の生活者の生活の中で目をつけたのが、ラマダンという1年に一度、約1か月間、日が昇ってから沈むまで飲食できないというイスラム文化ならではの断食の習慣でした。

林「現地の人びとはラマダン後にティムンスリというスイカのような果実とシロップを混ぜて作る料理を食べていました。ラマダン後に何故これらを食べているのか、それはからっぽの胃に刺激を与えず、栄養と水分を効果的に摂取するためではないかという解釈ができます。

この解釈から、スポーツ後の体の渇きを癒す飲料として売っていた飲料は、ラマダン後に体の渇きを癒す飲料として価値を変え、現地でも受け入れられたのです」

この話のポイントは現地の生活者の行動に解釈を加え、自社商品の意味の変化を起こしたという点。自社商品の仕様はなるべく変えず、そのまま生活者が受け入れてくれるように変えることで市場攻略の一助になったのです。

ティムンスリを食べるという事実に着目しただけではなく、そこから彼らが胃に刺激を与えないように栄養と水分を吸収したがっているという解釈をした点が重要です。

さらに、この飲料の進出例を海外市場進出の基本的な3つのアプローチから紐解いていきます。

林「拡張はコストは少なくてすみますが現地の生活者に受け入れられるか分からないというリスクがあります。また、革新はもっともコストがかかるうえ、進出国が増えれば増えるほど、コストも増えていく方法です。先ほどの例で行われたのは「適用」で、現地の生活者に向き合い、単なる拡張ではなく自社商品の適用をさせたことが、成功につながったといえるでしょう」

また、適用する対象には商品仕様と受け入れられ方の2つがあり、商品の仕様は味、パッケージ、形など製造プロセスに影響のあるもの。受け入れられ方は、ラマダン明けに飲んでもらうなど、どういう風に現地の生活者のその商品を受け入れてもらえるかという点だと林は説明します。

そのため、一口に適用といっても、、

①商品の仕様は変えず受け入れられ方だけ変える

②商品の仕様だけ変えて受け入れられ方は変えない

③両方変える

という3パターンが存在するのです。

林「先ほどの例は商品の仕様は変えず、意味だけを変えることでアジア市場の攻略を果たしました。受け入れ方だけを変えるのはコストをもっともかけず、現地の生活者に受け入れてもらう方法といえます。

「ラマダン後の体の渇きを癒す飲料」という現地の生活者の価値観に沿う形で新しい意味づけを行ったというのが成功のポイントなのです」

アジア市場における自社商品の意味づけをどうすべきか

これまで「新しい意味」という言葉が何度か出てきましたが、そもそも「意味」とはどのような定義を持つのでしょうか。このことに関して林は、意味に関連する研究をしている関西学院大学商学部の川端基夫先生の言葉を引用し、「消費者がその商品を買いたくなる合理的理由」と説明しています。この定義を用いて、商品の仕様は変えず、現地の消費者の価値観に沿い、彼らがその商品を買いたくなるような合理的理由を発見し伝えることが大切だといいます。

ただし、川端先生は意味付けの重要性は説かれているものの具体的なメソッドの提示をしていないため、SD/SAではアジアの旬な生活者たちを調査し、彼らから意味づけの手段を見出す独自の手法を提唱しています。

林「我々の使う「アジアの旬な生活者」とは、新たな意味を自分で見出しつつある人たちのことを指します。簡単にいうと価値観や行動が一般の人とは違い際立っているため、彼らを調べることで意味を発見しやすく、彼らをうまくとらえることで意味を見出すヒントを得ることができるのです。

彼らは一般的な生活では満足できていない、ある意味欲望が高いため、市場にすでにある商品を独自の方法やカスタマイズするという行動をしています。私たちは何故そのような行動をしているかを探ることで彼らの価値観を知ることができると考えています」

林「たとえば、先日中国で現地調査を行った際は、汚染された空気を極度に嫌うエアセレブというトライブを調査してきました。

PM2.5などが健康を害するというのはある意味当たり前になっていますが、彼らは美容にまで影響を与えると考えていて、美容と空気の質の関係性に新たな意味を見出しつつあるのがエアセレブです。

実際に上海で行ったインタビューで対象者は「街中を歩くたびに自分の顏にPM2.5がついているような気がしてむずむずする」と答え、外を歩くたびに、カフェなどで日本で売られている化粧直しシートを顔につけてふき取るという行動をとっていました。もちろん彼女は化粧直しがしたいわけではなく、自分の顏の上についているPM2.5をとりたいのです」

林「つまり、日本では汗や落ちかけの化粧をふき取るシートという意味を持った商品ですが、彼女からすると、化粧を崩さずに顔の上についたPM2.5をふき取るシートになっているのです。これが現地で特異な価値観を持つ人々の変わった行動に隠れている意味であり、彼らをヒントに、既存の商品を現地で適用させるために、新たな意味をデザインする方法を発見することこそが、SD/SAのアジアトライブリサーチの手法なのです」

セミナーでは、その後アジアにおけるトライブリサーチ方法の詳細と、視察で見られた中国の先進的な購買行動、また、トライブリサーチの追体験ができるワークが行われました。

アジアのトライブリサーチ手法とトライブの紹介については過去記事をご一読ください。

また、海外進出のサポート事例、中国視察のレポートについては今後ブログで更新していきますのでお楽しみに!

【SEEDATA ASIAにてリサーチをすることができるアジアの国や都市一覧】

東アジア地域:中国(北京、上海、杭州、深圳などの主な都市部)、台湾、香港、韓国

東南アジア地域:タイ(バンコク・チェンマイ)、インドネシア(ジャカルタ)、ミャンマー、カンボジア、ベトナム、シンガポール、マレーシア、フィリピンなど

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SEEDATAでは、独自に定義した先進的な消費者群(=トライブ)のリサーチを通じて、企業のイノベーション支援を行っています。また、SD/SAでは海外進出のサポートにも取り組んでいます。

また、当記事に関するご質問、企業様からのアジアの共同リーサチの相談はinformation@seedata.jpまで、件名に『アジア共同リサーチについて』、御社名、ご担当者名をご記名いただき、お気軽にお問合せください。

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