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SEEDATA
公開日:2020.10.23/ 更新日:2021.06.09

DNVB

ブランドの世界観を表現する場「デジタルガーデン」

これまでの広告LPはコンバージョンを目標とした縦長のサイトが用いられてきましたが、ダイレクトマーケティングを行うブランドが増加したことにより、オンライン上の顧客獲得単価=CPAが高くなり、コストが見合わなくなってきている、というお話は以前解説しました。

そこで、これまでのような消費者を説得するための広告LPではなく、消費者に共感してもらうためのサイトが重要になっています。今回は海外のブランド、poolside.fmの事例を紹介しながら、これからのブランドサイトのあり方を解説します。

poolside.fmは名前のとおり、夏のプールサイドやビーチを思わせる曲を季節を問わず、一年中配信するインターネットラジオ局です。80~90年代のビーチを彷彿とさせるような世界観を作り上げ、初期のMacОSのデスクトップを模したデザインのブランドサイトになっています。そのブランドサイトでは、プールやビーチで着たくなるTシャツ、帽子、キーチェーンなどが販売されています。四季折々の季節に合わせるのではなく、あえてひとつの季節の世界観、商品に絞り込み、1年中プールサイドやビーチ気分が味わえることを売りとしています。

サイト上では、80~90年代のCMを流すことで、無邪気に前に進むしかなかった、経済成長の時代を懐かしむ、レトロモダンな世界観を作り上げているのが特徴です。ミレニアル世代がこの時代の世界観を指示している背景として、レトロモダンブームがあげられます。例えば、Netflixで配信されている「ストレンジャー・シングス」という大ヒットドラマは、80~90年代のデザインを反映していますが、視聴者のZ世代は直接その時代を体験していないにも関わらず、過ぎ去った時代に対する郷愁に触れることで、癒しを感じているといいます。

 

サイト内には他にも、とくに中身のない会話をする「プールチャット」という掲示板、運営メンバーが作ったミックステープ(MP3データ)をダウンロードできるなど、細かな仕掛けが施されています。公式Instagramは、夏のビーチを表現した写真がアップされており、Instagramをフォローすることでブランドとの繋がりができ、サイトに再訪してもらうことが可能になっています。

このように、ユーザーが集いたくなる、定期的に訪れたくなるような、作りこまれた世界観のブランドサイト=デジタルプレイスを作ることが今後重要になってきます。最近ではそのような場所のことを「デジタルガーデン」と呼ばれています。

デジタルガーデンとは、さまざまな情報が溢れる、オープン過ぎるSNSではなく、情報疲れしない、価値観の合う人のみが集る、穏やかで半オープンで半クローズなデジタル上の場所のことを指します。このような静かな場所をデジタル上で作っていこうという動きです。リアル空間でたとえるのであれば、知らない人同士、その場限りのポップアップコミュニティが生まれるバーのような場所です。その場だけの関係だからこそ、気を遣わずにリラックスして話せるというのも納得です。

DNVBのブランドサイトは、モノを売る場所ではなく、ブランドとの絆を深める場所です。そこでファン同士が繋がるデジタルガーデンのような世界観を持った場所を作ることが重要になります。それがきっかけとなり、世界観に共感した人びとが集り、多くの人が集まる場所ができれば、そこで商品やサービスの購入につながります。InstagramやLINEのようなプラットフォームは、フレームが決まっていて世界観を作りこむことはできないからこそ、DNVBでは自由自在にデザインが可能なブランドサイトやニュースレター、アプリが好まれるのです。

例えば、SEEDATAが支援するライフスタイルブランド・mirariは、専用アプリの中にこのブランドの世界観を構築し、デジタルガーデンを作ろうとしています。

混同されがちですが、オンラインサロンとデジタルガーデンはSEEDATAでは峻別して考えています。オンラインサロンはサロンのオーナーという人自体がブランドであり、人を中心に集っているため、Facebookページなどプラットフォームを使っても問題ありませんが、ブランドはプロダクト自体が人格を持つ必要があるため、独自のブランドサイトやアプリを作るなど、世界観構築が必要なのです。

 

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