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SEEDATA
公開日:2021.08.12/ 更新日:2021.08.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介73】テンションモチベーターから読み解く、セルフマネジメントの未来

COVID-19の影響によりリモートワークが広がり、通勤時間がなくなり可処分時間が増えたことで、生活にゆとりを持てる人が増えた一方で、一日の大半を自宅で過ごしていることで仕事に集中できないという悩みも増加しています。
これまでカフェ、大学、オフィスなどで、さまざまな場所(オフライン)で人とつながりながることで集中力を維持してきた人たちにとって、自宅で一日中ひとりで集中力を維持していくことの難しさは大きな課題です。
本レポートでは、自宅などでオンラインツールを用い複数人で繋がりながら作業をすることで、あえて自分にプレッシャーをかけ、集中力やモチベーション維持の工夫をしている生活者を「テンションモチベーター」と名付けてリサーチし、彼らの作業の工夫や意識、セルフマネジメントの方法について調査しました。

社会背景

在宅勤務の増加により、多くの人のモチベーションや集中力が低下していることの理由として、これまで人びとはオフィスや図書館、カフェなど、周囲に人がいる状況で相互監視をすることで互いに適度なプレッシャーをかけ合い、作業に集中できていたのではないかと分析できます。

自宅ではその緊張感を作り出せないことが昨今の集中力やモチベーションの低下につながっていると考えられます。

 

この問題を解決するため、既に一部の企業では、タイムマネジメントツールを活用して社員やチームの働き方を管理することを始めています。たとえば稼働時間だけでなく、チャットツールで誰と誰がコミュニケーションどの程度とってるかまで自動収集して可視化することが可能です。組織の生産性を上げることを目的としたこれらの管理システムですが、社員側からの評判はあまりよいとはいえません。

 

一方でリモートワークが広がり新たに注目されているのが、場所による集中力違いです。実際にオフィスとカフェの集中力の違いについての研究では、カフェのほうが集中力の持続時間が長いことが明らかになりました。オフィスと違い、メールや電話、会議など、集中が断絶される要因が少ないことが原因と考えられています。

つまり、これまで暗黙知的に「カフェや図書館のほうが仕事がはかどる」と言われてきましたが、リモートワークが広がれば「自分の環境は自分で整えられる」という利点があるといえるでしょう。

セグメントとインサイト

今回は、気が散る要因を自ら排除するように工夫したり、人と繋がりながら自分が集中しやすい環境を工夫して作ることを進んでおこなう人びとを調査しました。

①ウィズミーモチベーター

「もくもく会」という黙々と作業をするだけの会をおこなったり、オンラインで知ってる人や知らない人とつながったりすることで、集中力を維持している

 

②オーディエンスモチベーター

自分の勉強風景を毎日タイムラプスで撮影して配信することで、勉強のモチベーシヨン管理をおこなう。フォロワー数が増えることで、見えないオーディエンスの存在により勉強や仕事などの日々のルーティンをおこなうモチベーションを維持をしている

 

➂フィードバックモチベーター

知り合いなど特定の人とつながり、自分の課題などを投稿し続け直接的なフィードバックを得て、自分と違う観点を取り入れてモチベーションを維持している

 

彼らを調査する中でとくに興味深かったトライブプロファイルが、「一緒に作業している他者の締め切りを自分の締め切りのように感じることで緊迫感を多く経験しながら作業の集中力を保っている」というものです。

これまでは自分ひとりで作業していることが多かったため、自分の締め切りに余裕があればあるほど、緊張感を持つことは難しく、中だるみしがちでした。

しかし、オンラインで他者とつながることで、他人の締め切りを目の当たりにすることで、他者の緊迫した状態を一緒に感じ、自分もプレッシャーを感じて集中できる回数を増やしているということが分かりました。

 

これまでの集中力を高めるためには、リラックスや気分転換をおこない、ネガティブな要因を排除していかに自分のコンフォートな状態を作るかに焦点が集まっていました。

しかし、他者の締め切りという、これまである種ネガティブなものと捉えられていた「焦り」をコントロールすることで、自らの集中力に繋げようという新たな試みに取り組んでいる点は実に興味深い発見です。

 

生活者行動変化仮説とビジネスチャンス

これまで、カフェや図書館などの「場所」で集中力を維持していた人たちは、「なんとなく人から見られている」という抽象的な状況から緊張を得ていましたが、今後はオンライン上で具体的に誰かとつながることで、その人の状況や緊迫感をリアルに感じながら疑似体験することで、自分で焦りをコントロールできる未来がくるのではないかと考えられます。

また、ここから考えられるビジネスチャンスのひとつが、作業用マッチングプラットフォームです。

これまでのマッチングサービスは自分の趣味嗜好でのマッチングが一般的でしたが、近年は「深夜に作業している人が集まるオンライン部屋」ができるなど、今後は趣味嗜好などの個人の中身ではなく、作業内容や作業時間起点のマッチングのプラットフォームが求められていくのではないでしょうか。

作業ルームは共に作業することで他者の焦りを獲得し、結果的に自分の集中力も維持することが目的なので、緊張感を持たせるためにも、あえて知らない人同士であることや、リラックスできる状態は作らないことが重要です。

実際に作業ルームを活用しているトライブは、グループのメンバーが固定化すると雑談が増え、集中力が低下するため、新陳代謝のために定期的にメンバーの入れ替えをおこなっているといいます。

なんとなく無言の空間が許容されるため、オフラインほど気まずさ回避のために直接コミュニケーションを取る必要もなく、オンラインで適度な緊張感を得て集中力を維持するという考え方は今後ますます広がっていくのではないでしょうか。

 

本レポートについてのお問い合わせはinformation@seedata.jpまで、タイトルに「トライブレポートについて」と記載のうえ、お問い合わせください。

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