ワンストップワーカーは、コロナをきっかけに、都心から地方または郊外、地方から都心に移住した人たちです。
コロナを期に人びとの生活は、仕事をするうえではオフィスに移動することが、遊ぶうえでは自粛で外出できなくなりました。結果、自宅周辺で生活、仕事、遊びの「職住遊近接化」がはかられるのではないかという仮説をもとに、すでにこれらが一体化した生活者をみることで、数年後の未来の暮らしを見ることができると考え調査しました。
SEEDATAでは過去にもハードノマド、ネオノマドなど仕事と生活に根付いたトライブレポートはありましたが、彼らは移動しながら生活を送るトライブで、自宅を固定(定住)するトライブをあまりいませんでした。
定住しながらも先進的な行動をしている人びとを調べることで、自宅内のアクティビティや宅内消費などをより深く調べることができるのではないかと考えています。
定住や固定型の生活する人たちに注目した背景は大きく以下の3点です。
①自宅の職場化
当然コロナの影響で、仕事では多くの企業でリモート環境が整い始め、宅内の仕事環境がより充実してきたことで、職場と自宅が融合している状態といえるでしょう。
リモートワークの促進の結果、自宅の職場化が促進されましたが、どこにいても仕事ができるようになった結果として、生活者の中で都市一極集中の必要性が希薄化する変化が生じています。
②宅内消費の増加
もうひとつの生活の大きな変化は、宅内消費化の増加です。
とくに食事、ファッションなどのカテゴリの自宅内での消費が促進され、あえて家と外を切り分ける必要がなくなりました。
結果として、これまで外でおこなっていた生活のすべてが宅内で完結する商品やサービスへの期待がより高まっています。
➂余暇時間の増加による遊びの変化
外出自粛と宅内での余暇時間の増加により、これまで外や郊外でおこなわれてきたアクティビティが、自宅内やより自宅近郊でおこなわれるようになってきました。
これらの大きな社会潮流をもとに、これまで分化されていた拠点が融合していく生活が近年増加してきています。
まず、職住近接化による生活者の行動では、事前調査で以下のような変化に着目しました。
・賃貸マンションの空きスペースで家庭菜園を営む生活者
・べランピング(べランダでおこなうキャンプ。都市圏の自宅でできる気軽なキャンプ体験
・プライベートウォールを設置して自宅の壁でボルダリング
・宅内消費でサブスク需要の増加
具体的な事例として、たとえばIターン、Uターン、Jターンなどで、地方に引っ越し、農業などに取り組みながら、ミーティングはキャンプ場でおこなうなど、アクティビティの中で仕事をしたり、仕事の途中でアクティビティをするような一日の時間の使い方をしている生活者が登場しています。
本レポートでは、生活の拠点や居住場所をどう選択していくか、宅内での行動などの価値観を調査することで、最終的に宅内生活におけるサービスや商品開発のヒントを洞察しています。とくに不動産や生活用品メーカーのご担当者さまにとって参考となるレポート内容となっています。
彼らを調査することで未来の働き方と暮らし方を洞察したのが本レポートです。
記事ではこのレポートの一部をご紹介しますが、レポート本編にご興味を持ってくださった方はinfo@sd-g.jp までお問い合わせください。
ワンストップワーカーのセグメントとインサイト
今回は地域に分けてトライブを調査しています
①アーバンワンストップワーカー
都市圏でとくに都市圏や大阪でワンストップ生活している人。
家庭菜園やボルダリンクなど本来地方で行うことを生活拠点と融合させた生活者。
②ローカルワンストップ
鎌倉や逗子などの郊外で生活している人。
都内へのアクセスをある程度意識しているが、地方の良さも享受できるような場所で暮らしてしています。
➂ルーラル (完全田舎)
地方にIターン生活をしている人。
とくにルーラルは、キャンプやサーフィンなど、自分の趣味をフルに楽しむことを目的に完全地方に引っ越す傾向がありました。都内へのアクセスは悪くても、あえて地方を選んでいます。
今回の調査では、最近の働き方の変化やコロナの影響で居住地を移動した人達を対象に、コロナ禍中、または直近3年くらいで、都内から地方、地方から都内に引っ越しをした人たちを調査しているため、初めから都内(もしくは田舎)居住という方は対象外です。
合計8人のインタビューをおこない、トライブプロファイルから9つのインサイトを出すことができましたが、インサイト導出の方向性は、
①居住地域の選び方
②時間の使い方
③居住空間
④人間関係の捉え方
があります。
本記事ではその中から②時間の使い方についてご紹介しますす。
ワンストップワーカーは、一般生活者のように10時から18時までは仕事時間、退社後がプライベート時間というような、あらかじめ決められた時間軸では動いていません。自分のコンディションの軸で生活リズムを決め、仕事以外のアクティビティをいつでもできるような柔軟な生活スタイルを好むというインサイトがありました。
たとえば一般生活者は、7時に起きて身支度して移動し、8時間仕事をこなし、20時に帰宅をして家事、残りの余暇時間で趣味などに取り組むといった時間の使い方をします。
一方ワンストップワーカーは、朝の身支度後、まずキャンプ場に直行し、9時からキャンプ準備、10ー12時にキャンプ場でリモートワークをして、13時まで読書、その後キャンプ飯を食べます。
その後自宅に戻り3時間仕事をして、家事をおこなって仕事に戻り、最終的には自宅の周辺にある漁港で魚を買い、三枚におろして料理をするというような生活を送っていました。
料理や趣味の隙間時間にリモートワークを入れ込み、集中できない時間は別の作業やアクティビティにあるなど、自分が集中できるピークタイムをある程度把握しているのが特徴的でした。
ピークタイムにあわせて仕事をして、集中できないときは遊ぶという風に、マインドスイッチを明確に切り替えるような行動をしていました。
生活者変化行動仮説とビジネスチャンス
このインサイトから導かれた生活者変化行動仮説が、人びとの時間の使い方の変化を捉えた「隙間バケーション行動の増加」です。
今後、職住遊が近接したライフスタイルの中で、自分のコンディションに合わせ、仕事と仕事の合間に短時間のアクティビティや遊びを体験できるようなライフスタイルをとる人が増加するのではないかと考えられます。
われわれは、固定化された時間の中で生活を営むのではなく、「今働きたい」「今遊びたい」といった自分の気持ちに向き合いながら生活する行動が増えていくという仮説を出しました。
さらに、ここから考えられるビジネスチャンスのひとつが「非ゴールデンタイムコンテンツ」です。
たとえば、これまでバーベキューやネットフリックスなどを楽しむのは、休日、夜、移動時間と考えられてきましたが、実は14~15時台の本来は仕事をしなければいけない時間の集中力が低下しやすいことが明かになっています。その隙間時間に向け、人びとが楽しめるコンテンツを設計するのがひとつのポイントといえるでしょう。
さらに、非ゴールデンタイムコンテンツを生み出すための3つのポイントをご紹介します。
①所要時間の明確化
最終的に仕事に戻ることを前提にしているので、何分必要なコンテンツなのかを予め明確にすることで、アクティビティへの参加ハードルが下がる
②サマリー情報の提供
コンテンツに限りますが、気軽に見るために事前に結論や得られる情報を共有することで、最後まで見なくてもある程度概要や内容が分かる
➂5分圏内にその場所がある(移動できる)
オフライン行動に限りますが、5分圏内で移動できるという情報をレコメンドする。
たとえば電車移動している際に「近くにあなたの好きなキャンプ施設があります」というレコメンドをすることで、移動時間がかからないからこそ、気軽に隙間のバケーションを取り入れられる
コロナ禍で在宅ワークを余儀なくされ、プライベートと仕事が一体化することで切り替えが難しくなり、プライベートの中にずっと仕事があることにストレスに感じる人が増えたことがこれらの行動を加速させました。
今後ますます隙間隙間にバケーションを取り入れ、脳内を一度完全にリセットをする行動が求められていることを理解し、コンテンツを作ることが重要です。
本レポートについてのお問い合わせはinfo@sd-g.jp まで、タイトルに「トライブレポートについて」と記載のうえ、お問い合わせください。