はじめに~トライブレポートとは
SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。
トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。
トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。
ソロウエディングはおひとりさま旅行商品の成功例
近年、新規事業や新商品・新サービス開発を考えるうえで、重要なキーワードのひとつがこのピン消費です。ピン消費とはいわゆる「おひとりさま」で消費をすることを意味します。未婚率の上昇や晩婚化はたびたびニュースなどで話題になり、それに合わせて婚活ブームも到来した一方で、一人で暮らすことをエンジョイする層も一定数存在しています。
これまで、配偶者や所帯を持つとできないライフスタイルを満喫する彼らは「独身貴族」と呼ばれ、羨望と揶揄の入り混じった扱いを受けてきました。しかし、「本来家族や恋人がいなければできないはずのことを、一人でやってしまおう」という新たな動きが出てきています。たとえば、結婚の予定や期待を持たない30代から40代の女性が、一人でウエディングドレスを着て記念撮影をし、友人や同僚とパーティーをするソロウエディング。
また、シニア世代に向けた「おひとりさま就活」なども、本来遺されるものに対する配慮の要素が多かったはずの就活を一人で行うという点で、この大きな流れの中に位置づけられるでしょう。
冒頭に触れた未婚・晩婚の流れを受けて、ピン消費を支援するサービスやプロダクトは今後も大きな潮流になっていくはずです。現在その最先端を走るソロウエディングなどを行っている「ハイパー・おひとりさま」からピン消費を理解し、単身者世帯・独身消費の今後を考えていきたいと思います。
そもそもソロウエディングは、文字通りひとりで結婚式を行うことを指していますが、具体的には、女性がひとりでウエディングドレスを着てスタジオで撮影をしたり、ハイヤーに乗ってロケーションの良い場所で撮影したりという風に、最終的にきれいに着飾って写真を撮るということが目的の旅行商品になります。この旅行がまるで結婚式の準備をするような形で行われていくという点に我々は注目しました。
まず、今回定義したピン消費は以下の3つのアプローチに分類できます。
ソロウエディング、ソロマンション、ソロペットというアプローチの違いでセグメントされ、価値観として「必ずしも結婚は自分にとって、女性としてのゴールや目的ではなく、自分の好きなことを楽しんでいきたい」という考え方を共通点として持ち、これらの行動が40代女性を中心に行われています。
ピン消費のトライブレポートはセグメントの分け方は良いのですが、価値観ははっきりとは分析できていないため、再度分析を進めています。
これは消費者分析とは関係のない視点ですが、イノベーションを考える際に、異なる業界で使われている体験のみを取り出し、まったく違うビジネスモデルと掛け算するという方法があり、ソロウエディングはまさにそのようにしてイノベーションを起こしている良い事例といえます。
結婚式というのはそもそも旅行ではなく結婚をする際に行う儀式なので、それ自体を旅行にしようというのは話が飛躍しているように感じるかもしれません。しかし、結婚式は女性にとって一生に一度のもので、素晴らしい体験だと多くの女性が言っているという事実を踏まえ、結婚式が実際にどのようなプロセスになっているかを考えてみれば、旅行に応用できそうな体験設計のポイントにあふれているのです。
まず、きれになるためにエステに行き、誰を呼んでどんな席次にしようかという企画をし、それを大事な人たちと写真に残すという楽しみがあり、簡単にいえば自分が自分らしく輝くためのプロセスを踏んでいくわけです。であれば、その体験だけを別途味わえるものを作ろうということでできたのがソロウエディングなのです。
これはイノベーティブな商品やサービスを企画する際の視点の持ち方の一つで、「アナロジー」というプランニングの手法になります。
SEEDATAがオススメしているトライブ・ドリブン・イノベーションで考えた場合も、たとえば以前お話したティンダーでは、現在は出会い目的で使われている右脳的情報のみで相手を選ぶという体験だけをそのまま取り出し、これをOB訪問に利用するというのもアナロジーの考え方です。
実際にサービスデザインをする際は、先進的なユーザーが別の分野でやっていることの体験だけを取り出して、自社のビジネスに応用することでイノベーティブな新商品や新サービスが生まれる事例はよくあり、その典型的な成功例が結婚式の体験だけ取り出し、旅行と掛け算して生まれたソロウエディングという旅行商品なのです。
近頃は結婚式にはなるべく予算をかけないという考え方が広がっている中、ソロウエディングという旅行商品になら何十万円も使う人たちが現れている、ソロウエディングは結婚式のイノベーションとも、旅行のイノベーションともいえるでしょう。
このトライブレポートは独身女性の研究ですが、いずれにしても独身というのは今後も注目されるテーマのひとつです。
何故なら独身は既婚者と比べ金銭的にも時間的にも自由な人が多いため、おもしろい商品であれば時間をかけて使ってもらえたり、高額商品であったも受け入れてもらいやすいのです。また、趣味に関しての自由度も高いため、こだわり系の商品も使ってもらえる可能性が高いといえます。
そのため、こだわりの強い商品や付加価値の高い商品を作りたいという企業の方は、いったん独身層に着目してプランニングするとよいでしょう。何故なら世帯年収が600万円で家族が4人の世帯主より、年収が300万円でも独身の人のほうが、時間的にも金銭的にも自由度は高いのは明らかであり、彼らをペルソナにすれば自由度の高い付加価値設計が可能となるからです。
このように、ピン消費のトライブレポートを読む際は、「独身の人に向けた観点からこだわりの商品が作れないか」という風に見てもらうとおもしろい発見があるはずです。
独身に向けた新規事業や新商品開発に興味がある方はこのレポートをもとに、SEEDATAが一緒に考えていきますので、ぜひお声がけください。
マイクロ・レポートの活用法
トライブレポート全体のことになりますが、今回はマイクロレポートの構造についてご紹介します。
トライブレポートのキー・トレンドのサマリー部分がフィットしないと感じる場合は、ぜひその先にあるマイクロ・レポートを読んでいただきたいと思います。
一般的に、調査データというのは書き起こしのような形で、聞いたことをそのまま書いたものになります。そこから色々と分析していくのですが、いきなり大きな価値観やトレンド、FINDINGSを見つけるのは難しいため、我々が途中段階までの分析をしているのがマイクロ・レポートになります。
FINDINGSは事実からそのままいえることや、たとえば共通点を探ったり抽象化したり、2つのFINDINGSの間を少し言い換えたりしているものになります。
しかし、よくある一般的な調査レポートのFINDINGSはこれらに加え、「原因はこれではないか」「背景にこんな価値観があるのではないか」「因果関係」「周りの環境」などに関しての分析が混ざっていることが往々にしてあります。「事実からそのまま素直に導ける話」と「解釈の話」が混ざっていると使いにくいため、SEEDATAではある程度素直に導ける事実をFINDINGS、あえてそこから一段飛ばして解釈を付与したものをINSIGHTとしてざっくり峻別しています。
このINSIGHTのイメージは、10人が10人「そうだよね」とは思わない、「もしかしたらそうかもしれない」という内容になっています。(逆にFINDINGSの欄には10人が10人そうだよねといえる導出を記載しています。)「もしそうだと仮定するとこんなビジネスが思いつくから仮説として試してみよう」というような、議論のタネがINSIGHTとして書いてあるので、この観点を抑えてマイクロ・レポートを読んでいただければ幸いです。
そして、このINSIGHTとINSIGHTをいくつか掛け合わせて、「このトライブがこういう行動をしていたり、こういう発言をしていたりする背景には、こんな共通要素があるのでは」ということをまとめたものが、トライブ・プロファイルになります。
もうひとつ大事なのがSEEDATAではアブダクションと呼んでいる説明仮説です。「論理的には必ずしもそうとは言い切れないが、こういう仮説で物事を見ていくとおもしろそう」というが推論が説明仮説です。
先ほどINSIGHTは、読む人によっては「そうだよね」とは思わないとものと説明しましたが、「このFINDINGSからこのINSIGHTは導けないんじゃないの?」と感じた場合、各INSIGHTの下のアナリストコメントを読むことで、我々がどう考えてこのINSIGHTを導き出したのかを知る手がかりが得られます。
FINDINGS、INSIGHT、アナリストコメントを併せて読むことで「確かにそうだな」と納得したり、「自分だったらこう思う」という新しいアナリストコメントやINSIGHTが生まれてくる場合もあるので、思考のための道具としてマイクロ・レポートを活用することもオススメです。分析者としてこのように自分で思考するまでをやってみることが重要であり、企画系の方とはマイクロレポートを一緒に出しながら、プランニングを進めていくことがよくあります。
たとえば「非日常間を感じられる離れたところがいい」(ソロウエディング)、「携帯もきって、時計も外して過ごす時間がご褒美」(ソロペット)という全然違う2人の発言(FACT)から、このふたつには共通点があるのではないかと導き出したのがFINDINGSです。
ご褒美や非日常という言葉からそれらをさらに裏読みをして解釈すると、「誰も自分のことを知らない遠くの地に行くということが大事」とこの人たちは考えているのではないかというところまで飛ばしたものがINSIGHTになります。
記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されており、おひとりさま向けのビジネスであれば、このトライブレポートひとつで新規事業や新サービスに展開できるはずなので、ぜひSEEDATAへお問い合わせください。
お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。
あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品を・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。
たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。
SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。
【この記事の監修者】
宮井弘之。SEEDATA代表。
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あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。
たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。
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