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SEEDATA
公開日:2020.08.17/ 更新日:2021.06.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介66】ノンアルコールドリンクの消費にみる、商品開発・体験設計のヒント(ノンアルエンターテイナー)

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング支援を行っています。トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

ノンアルコールドリンクの未来

ノンアルエンターテイナーはポジティブな文脈でノンアルコールドリンクを飲用する人びとの調査レポートです。

これまでノンアル消費は、ビールやハイボール、カクテルなどに似せたもので、どちらかというとお酒の代替として捉えられることが一般的でした。しかし、近年飲料の中でもアルコール以外の嗜好性の高いノンアルコール飲料が続々と登場しています。ノンアルエンターテイナーたちは、たとえば、モクテルなどのオリジナルカクテルに近い味わい重視型のドリンクを自分で作り、楽しんでいます。

彼らは嗜好性やお酒の代替としてノンアルコールを選択しているのではなく、リフレッシュ、気分を上げる、自分の時間を重視するためといった、よりラグジュアリーに近い消費傾向がみられます。

本記事では、ノンアルコールドリンクの飲用シーンや飲用目的を理解することで、飲料メーカーが今後展開していくべきノンアルコールドリンクのヒントや、料飲店が生活者に対して提供すべき空間設計に関するヒントを得ることを目的として調査したトライブレポートの一部をご紹介していきます。

ノンアルコールが広がる背景

まず、大きな社会背景として、アメリカで広がっている、(お酒は飲めるが)あえてお酒を飲まない「Sober Curious」というムーブメントがあげられます。

Sober Curiousについてはこちらの記事でもご紹介していますが、ミレニアル世代の単純な健康志向の高まりというだけではなく、お酒を飲まずにシラフの状態でいることによって自分の体調がどの様に変化し、その結果として生活が好転するという価値観が広がっています。

また、ノンアル業界では、「モクテル」と呼ばれるノンアルコールカクテルが人気となっています。似せた、真似たという意味の「mock(モック)」と「cocktail(カクテル)」を組み合わせた造語で、一般的なソフトドリンクと異なり、消費者の好みに合わせてオリジナルで作ることができます。世界初のクラフトノンアルコールスピリッツ『SEEDERIP』、スウェーデン発祥のノンアルコールジン『CEDERʼS』、日本初のノンアルコールジンブランド『NEMA 』などが人気となり、レストランやバーだけでなく、自宅で手軽にモクテルを楽しむ消費者も増加しています。

これらをストレートで楽しむ人もいますが、基本的には100%ジュースなどで割ることで、さまざまな味わいを作ることができます。

このように、ノンアルコール飲料そのものを嗜好品として楽しむという考え方もあれば、一方で脱アルコールをすることで、コミュニケーションに重きをおいた媒介としてのノンアルドリンクの楽しみ方もあります。

今回の調査では、ノンアルコールを嗜好品という意味合いで捉えることで、今後の飲料の変化を深掘りしました。

セグメントとインサイト

今回のレポートでインタビューをおこなったセグメントは以下のとおりです。

①スイッチドリンカー

自分の気分を変えるために夜だけでなく朝や昼間にノンアルコールを飲む。それによる気分の高揚感で朝や昼間のテンションアップをはかったり、贅沢気分に浸りたいという飲み方。

②ブレンドドリンカー

モクテルのように様々な飲料を混ぜ合わせて飲むことを楽しむ。アルコールが飲めないからノンアルコールを飲んでいるわけではなく、アルコールも飲めるが、ミックスさせる行動を楽しんでいる生活者。

➂ケアドリンカー

自分の健康を気遣ってノンアルコールを飲む人たち。ノンアルコールだけではなく、健康食品にも感度が高い。発酵食品や発酵飲料などにも感度が高く、自宅で作って楽しんでいる生活もいる。

 

今回の調査で発見したインサイトのひとつが、健康である身体作りをすることや、自分の身体をケアするために食生活を変える行動自体が贅沢につながるという「健康は贅沢」という考え方です。

インタビューでは、アルコールはこれまで基本的に夜に飲むものでしたが、ノンアルだからこそ朝や昼、間食の際などあらゆるシーンでノンアルドリンクが登場し、その結果生活者の行動や価値観が変わっていることが分かりました。

 

事例のひとつとして、「ノンアルコールドリンクをあえて朝に飲むことで景気づけをする」という行動がありました。「月曜朝からほかの人は過ごせない時間を過ごしている」という満足感や特別感を感じて仕事に向かうため演出に使っているといいます。

このように、夜に消費するのではなく、あえて朝や昼と時間をずらすことで、消費した以降の時間に高揚感を得ながら、その時間をより充実して過ごしたいというインサイトを発見することができました。

これまでアルコールを昼間に飲むことで特別感を味わう行動はありましたが、アルコールを飲むとその後行動ができなくなったり、あとの時間を無駄に過ごして後悔してしまったりするため、それを回避したいと考えているのです。

 

また、特徴的だったのは、「お酒を飲みながら動画鑑賞をすると集中力が途切れるが、ただのジュースでは空間として没頭しきれないから、ノンアルウイスキーを飲んでその世界に浸る」という発言です。ノンアルコールドリンク単体で高揚感を得るのではなく、ノンアルがアクティビティへの没頭をより高める存在として機能しているという発見がありました。

生活者変化行動仮説:ピボットシーン消費

このようなインサイトから考えられる未来の生活者変化行動仮説が、ルーティンと異なる場所・空間で行動をすることで、気持ちの変化を楽しむピボットシーン消費です。

これまで飲み物や食べ物、とくにお酒は、夜に、高いウイスキーならいいバーで飲むものなど、ある程度時間帯やシーンに限定されていました。それはアルコールが仕事を完全にオフにするモードスイッチのために活用されてきた側面があるからです。

しかし今後は、アルコールとの組み合わせで本来夜にしかできなかった活動をノンアルに置き換え、仕事オフモードやテンションアップモードなど、昼時でも朝でもその気分に自分をスイッチするというのが生活者行動が出てくると予想されます。

 

アーリーウォーニングサインとしては、お昼ノンアルシャンパンという飲み方が主婦層の中で流行っています。家事育児に追われる中でも、ノンアルシャンパンをお昼に飲むことで、スイーツなどよりもちょっとしたパーティ気分を感じることができ、その瞬間の充実度が上がるだけではなく、その後の活動もミックスアップすることができるといいます。

ビジネスチャンス

さらに、この生活者変化行動仮説からから考えられるビジネスチャンスですが、まず「日常の生活の中で時間や場所が固定された体験は一体何か?」を考えます。

時間や場所が固定された体験を別のシーンに変えるときにどんなビジネスチャンスがあるか?というピボットシーンを考え、その体験を別のシーンに変える場合に生じる障壁をどのように乗り越えるかを考えていきます。

時間帯のピボットであれば、甘いものを食べたいが夜は糖分が吸収されてしまい、朝は糖分をとりすぎてしまうという課題があったとき、夜用のスイーツ兼ドリンクの提案などが考えられます。

また、場所のピボットシーンとして、基本的にアルコールを飲むシーンは夜の飲食店ですが、昼の時間にオフィス用のノンアルドリンクというシーンを変えた提供も考えられます。

場所や時間を変えておこなうことで、オフィスにいながらスイッチング効果や、ちょっとしたチル体験を味わうといった効果もあるでしょう。

さらに応用して、キャンプは一般的には休日に朝早くから遠出し、肉や海鮮を生から焼いて楽しむものですが、この体験をオフィスや自宅でできるようにするアイデアも考えられます。

 

このように、ピボットシーン自体は飲料業界以外にも転用できるものなので、シーンで期待しているインサイトと、そのインサイトを実現するための環境を用意することが、課題を乗り越えるポイントとなります。

トライブレポート本編では、このほかにもさまざまなインサイトやビジネスチャンスを紹介しています。トライブレポート本編の内容につきましては、information@seedata.jpまでお問い合わせください。

 

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