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SEEDATA
公開日:2019.06.04/ 更新日:2021.06.10

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介52】投資系新サービス・新規事業開発のヒント(クラウドキャピタリスト)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

2008年に融資型クラウドファンディング「maneo」が日本に上陸して以来、購入型クラウドファンディングの「makuake」や「readyfor」、寄付型クラウドファンディング「JAPANGIVING」など、様々な形式のクラウドファンディングが日本に定着したといっても過言では有りません。

そんな中、2017年に日本で初めての株式投資型クラウドファンディングが登場しました。株式投資型クラウドファンディングとは、未上場の中小・ベンチャー企業が自社の資金調達のために、クラウド上の投資家から資金を集め、その対価として株式やSO(Stock・Option)を発行するというものです。

SEEDATAでは、株式投資型クラウドファンディングを活用している生活者(投資家)をクラウドキャピタリストと名付けリサーチしました。これまで未上場企業の株を購入する権利は、ごく一部のエンジェル投資家やVC(ベンチャー・キャピタル)に限られていましたが、株式投資型クラウドファンディングの登場により、個人投資家にもその権利が普及したことにより、近い未来、未上場企業へ誰でも投資ができるようになるとすれば、投資における価値観に変化が生まれるのではないでしょうか。

そこで、SEEDATAでは、株式投資型クラウドファンディングの中でも国内初のサービスである「FUNDINNO」https://fundinno.com/)を活用しているクラウドキャピタリストにインタビューし、今後の投資行動や投資における価値観がどう変化していくのか調査しました。

まず、世の中の動向として、これまでも海外ではベンチャーやスタートアップの資金調達のための株式投資型のクラウドファンディングはありましたが、日本は法律の関係でおこなうことができませんでした。しかし2017年に金融法が変わり、資金調達をクラウド上でおこなえるようになり、その仕組みを一番最初に導入していたFUNDINNOと、積極的に使っている人たちを着目しました。

MakuakeやCAMPFIREなどこれまでの購入型クラウドファンディングでは、「こんなプロダクトが作りたい」というプロジェクトにファン(出資者)が資金を出し、目標が達成されたら金銭以外のプロダクトなどを渡すモデルでしたが、FUNDINNOは、プロダクトではなく非上場企業の株式をリターンとする投資型クラウドファンディングです。

われわれはFUNDINNOを利用する先進的ユーザーを調べることで、株式投資に対する価値観の変化の洞察に加え、既存ユーザーのロイヤリティ向上や、新規ユーザー獲得のための施策を考えることができるのではないかと考えました。

これまでの投資と株式投資型投資の違い

まず、これまで一般的だったVCやエンジェル投資からの資金調達と、株式投資型での資金調達の違いを簡単に説明します。

株式投資型の特徴として、不特定多数からの資金調達が可能ということがあげられます。

ベンチャー企業目線からすると、これまではエンジェル投資家やVCに対して資金調達を依頼するということを人力でおこなっていたため、資金調達先も限られていましたが、一般の投資家からも調達できるようになったというメリットがあります。

また、投資家目線では、スタートアップを応援したいと考える人はこれまでもたくさんいましたが、一般の投資家は、ベンチャーに対してコンタクトできる機会もありませんでした。スタートアップやベンチャーのシード時期への投資は、自身に起業経験があったり、資金がある人しか関われないものというこれまでの常識を変えたのが投資型クラウドファンディングなのです。

これにより、ベンチャー投資に関してはセミプロともいえる多くの人たちから小口で資金を集めることが可能になりました。返ってこない可能性は高いが、一口が小口のため投資家にとってはある意味低リスク投資といえます。だからこそ多くの投資家から少額ずつを集め、数千万などの資金を集めることが可能になりました。

前提として上場企業の株を買うことと、非上場企業の株を買うことのリスクはまったく異なります。

投資型クラウドファンディングで非上場企業の株式を購入しても、その企業が上場、もしくは事業売却しなければ、株式は本当の紙切れになってしまうからです。

一方上場企業の場合、ある程度市場価値は決まっているため、それが増えるか減るかはあってもゼロになることはほぼありません。数多くのベンチャーが勃興している昨今、それを一般の投資家が見つけてきて投資するにはかなりの目利きが必要でした。

FUNDINNOでは、前提としてある程度の基準を満たした上場の可能性が高いベンチャーを集めており、かつ、事業概要、企業の魅力、上場までのストーリーが分かりやすく掲載されているため、一般の投資家でも数多あるベンチャーの中から、低リスクで未上場企業に投資することが可能になったのです。

この新しい行動をSEEDATAでは「エンジェル投資の民主化」と名付けました。

これまでベンチャーやスタートアップのシード期などへの投資するのは限られた人たちの特権でしたが、このサービスによって民主化に大きく前進したといえるでしょう。

そして真っ先にこのサービスを利用し始めた投資家たちは、より感度の高い人たちであり、トライブといえます。

今回のセグメントは以下の三種類です。特徴的な投資行動が横軸、縦軸はデモグラ属性(資産や年収が1000万未満と資産や年収が1000万以上に分類)になります。

キャッチアッパー

リサーチ(2018年5月)時点でFUNDINNOに公開されているものの8割に投資している人たち。

そもそも彼らが何故投資をしているかというと、ひとつは力だめしだといいます。自身が会社経営などしているスキルやノウハウを生かして、自分の先見の目がどれほど当たるのかを未上場企業に投資することでエビデンスにしたいという考えを持っていました。

また、お金のリターンではなく、応援できるという体験自体がひとつのリターンと考えていることも特徴的です。投資した会社が頑張っている、いい感じで成長している、そしてどのように自分が関わり支援できるかを考えることが楽しみであると発言していました。

また、上場企業に投資する場合、投資家化のほうが立場は上になりますが、キャッチアッパーのミレニアルズの特徴として、ベンチャーに対しては対等な関係だと思っていることがあげられます。

お金を払ってリスクを負うが、リターンを返してほしいというより「自分たちを頼ってほしい」という発言があり、自分の持つ人脈やスキルというリソースをベンチャーが上場するために使ってほしいと考えています。

こだわりセレクター

FUNDINNOの中でも投資する企業を自分なりに分析して投資している人たち。

いちばんエンジェル投資家に近く、資産もある彼らは、投資活動をすることで世の中の潮流を見出すヒントにしたいと考えています。こんなベンチャーが出てきていると知ったり、資金調達に成功していると知ることで、日経新聞を読むより最新の動向が知れる考えて、情報取集投資としてお金を出していることが分かりました。

だからこそ自分で選んだ会社に投資したいという思いが強く、自身の仕事の領域とはあえて異なるジャンルの企業に投資することで、自分の知識を増やしたいと考えています。これは未上場企業ならではの特徴といえるでしょう。

離脱ユーザー

最近はFUNDINNOで投資していない人。

FX、上場企業、未上場企業、仮想通貨でそれぞれ何%と決めてポートフォリオを築き、その割合を達成したため離脱したというのが彼らの特徴で、応援の文脈というより投資の基準はリターン目的が強いこともポイントです。

最初のほうに出ている案件はおそらくFUNDINNOのセレクトで角度が高いという意味で投資したり、FUNDINNOの中でお金の集まり具合を見て投資を決めていました。

SEEDATAでは他力本願型の投資と呼んでいますが、この行動は一般層がエンジェル投資する文脈で今後メインになっていくと予想しています。

クラウドキャピタリストの共通の価値観は、これまでの上場企業への投資がリターンで儲けることがメインだったのに対し、未上場企業への投資はかなりのリスクだと理解したうえで、リターンを100%求めているのではなく、「未上場企業、スタートアップやベンチャーを応援したい」というマインドがあります。

クラウドキャピタリストはリスクを踏まえたうえで、ベンチャーやスタートアップを応援できるようになったということに対して喜びを感じています。

これがインタビューから分かった一般的な投資家とクラウドキャピタリストの特徴的な違いです。

あるトライブは、上場企業の株は株価の変動を日夜追い続けることがストレスになっていましたが、未上場企業の株の場合、変動もないのである意味ストレスはないといいます。さらに、ただ上場を待つだけは嫌なので、なにかしらのコンタクトやインタラクションしたいというのが彼らの特徴です。スタートアップやベンチャーからの進捗報告を受け、投資家は自分のネットワークや知識といったリソースを提供することも可能です。

このように、応援したいというマインドだけではなく、どう応援するかまで具体的に考えている人が多かったことも特徴といえるでしょう。

彼らのリサーチから得られたプロファイルのひとつをご紹介すると、今後の投資の体験として、上場企業の株を購入するローリスクでいわゆるリターンだけの投資ではなく、余剰資金を用いて小口かつハイリスクな投資が増えていくのではないかということです。

株式投資型のクラウドファンディングがきちんと市場を作っていけば、これまでベンチャーに触れることがなかった一般の投資家にも、小口で余剰資金が一発当たればいいというハイリスク投資が普及していくのではないでしょうか。

上記を踏まえると、今後の投資活動におけるビジネスチャンスとして、ポイントなど余剰資金で細かく稼ぐのではなく、リターンがゼロでもハイリスクな投資に活用する機会を求めていくと予想しています。

ポイントは余剰資金なので多くの人はあまり自分のお財布の中身とは思っていません。この余剰資金で、小口かつハイリスクな投資ができるようになれば、ベンチャーやスタートアップへの投資がさらに広がり、エンジェル投資の民主化が進んでいくのではないでしょうか。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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