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SEEDATA
公開日:2018.12.08/ 更新日:2021.06.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介34】住宅・建築・建材・工具業界向け新規事業開発アイデアのヒント(セルフリノベーター)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

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昨今の日本は少子高齢化の影響を受け、住居購入世代となる 20~30代の新築需要は格段に下がっています。加えて、住宅性能表示(2000)制度や長期優良住宅(2009)制度が創設されるなど、政策としても住宅の長寿命化が図られ、解体の環境負荷やコストを抑えた、ストック型住宅へと転換してきています。

こういった背景から、既存の住宅をリノベーションやリフォームし、長いスパンでの活用が求められるようになってきました。

賃貸物件でも、これまでは部屋を改修した場合、現状復帰が必要でしたが、それを必要としない「DIY賃貸」をURが数年前からスタートさせています。また、国も空き家解消の手法としてDIYリノベーションを推進するなど、中古住宅や物件の空室対策としてDIYによるリノベーション活用が注目されています。

当レポートはこれらの社会的な動きに合わせ、自分らしい住まいを生み出し、暮らしの質を上 げていきたいという想いを持ち、先進的なアプローチで住居をDIYリノベーションするユーザーに焦点を当てています。

SEEDATAではデベロッパーや空間開発など住宅産業の方からもお問い合わせいただくことがありますが、まず、住宅・空間・建築・建材・工具新規事業サービスを考える際に、どういった人たちに着目すべきかということをお話します。

一般的に、住んでいる場所、年収、家族構成などから「こういう人たちに売っていこう」とするのがこの業界のマーケティングの基本スタイルです。それらに加え、おしゃれな雑貨やデザイン性のよいものに囲まれたいという人もいれば、ジムのようなガレージを作りアクティブに暮らしていきたい人など、ライフスタイルに関する考え方をセットにして、さまざまな商業施設や住宅施設などの商品やサービスを作ってきたのが、これまでの不動産業界や住宅業界でした。

当然これらはやりつくされ、そうなったときに業界としてどのように新しい芽を見つけていくかということが、ここ5~10年ほどの課題となっています。

このときに着目すべき点として、共働き、ネオノマド、2拠点生活など働き方系のライフスタイルの変化があげられます。

もうひとつは、住宅にIOTデバイスを設置することや、商業施設に行くだけでクーポンがもらえるスマートビーコンなど、ネットワークやITと絡めてスマート化で顧客体験を変えていこうという流れです。

ただ、この2点は、前者はライフスタイルの変化で、後者はプロモーションであるため、どこに住んでいて年収はいくらということにあまり影響を及ぼす話ではありません。このへんが今のこの業界の閉塞感のポイントなのではないかと私は考えます。

商業施設は広すぎるため今回のレポートでは住まいに焦点を絞り、住居を再定義したときに、どういう人達が住まいの未来を示しているのか、この業界でリードユーザー的な人は誰なのかということを考えました。

そもそも住宅は、新築がよいものとして長年売られてきました。

そこに建築家と作る注文住宅が増え、古いモノも大事にしようとリフォームの流れがきて、さらにリフォームをもっと発展させたのがリノベーションです。

リノベーション費用もかつては高額でしたが、パッケージ化されたものが登場し、誰でも手に入るようになり、もはや単にデザインがよいというだけでは誰も驚かない世の中になってきました。

ここまで住宅そのものが行き詰まってくると、今までのものはすべて決められたものでしたが、やはり最後は自分たちでいじるという方向に当然行きつきます。

つまり、この業界で着目すべき人たちは、自分たちでDIYをこえて、リノベーションレベルまで到達しているセルフリノベーターたちなのです。

彼らに共通しているのは、「既存の建て売りやリノベーションの世界では満足できず、自分で手を動かしてリノベーションを行うことはよいことだ」という価値観です。

彼らが考える新しい住まいの在り方をみることで、今後の住宅業界の大きなヒントが得られるはずです。

これまでの住宅業界の、デモグラフィック変数できってライフスタイル価値観を入れる方法ではなく、もっと彼らが具体的に作っているモノや空間などを取り入れ、パッケージ化していけばよいのではないかと考え、ハードウエアも含めた住まいの在り方としてセルフリノベーターの調査を行いました。

当然この背後にはDIY意識の高まりがあり、アメリカでは昔からDIYは盛んでしたが、日本でも近年リフォームに補助金ができたり、DIYができる賃貸物件ができたりするなど、どんどん裾野は広がってきているといえるでしょう。

企業側もこのリノベーションブームを受け、以下のようなさまざまな取り組みを行っています。

・工具会社が作った20~30代女性を対象にしたDIYの学校

・リノベーション可能な賃貸物件をまとめた不動産サイト

・古い団地の良さを見直したMUJI×UR 団地リノベーションプロジェクト

・セルフリノベーションした写真を共有する人気アプリの登場

また、セルフリノベーションの対象となるのは団地や賃貸マンションにとどまらず、通常20年を経過すると価値がなくなるといわれている中古戸建や、古民家への注目が集まったり、空きビルや空き倉庫のメリットを活かしつつリノベーションしてオフィスなどにするという流れも増加しています。

このように、リノベーションを自分で行える環境はどんどん整っていき、今後もこのマクロトレンドがなくなるということはないでしょう。

今回のセグメントはシンプルにアプローチ違いで、体格の問題やインテリアに対して求めるものは男女で異なるため、同じセルフリノベーターでも男女で分けています。

 

哲学実践型リノベーター

単身の人で、住みやすくなるためというより、自分の住まいに関する哲学を表現する活動としてリノベーションを行う人

リノベ思考DIY女子

DIY女子が発展し、扉や壁の配置を変えて間取りを変更することまでを行うリノベーター

ワーク発展型リノベーター

自分でセルフリノベーターをやっているうちに仕事になってしまったというもっともエクストリームな人

哲学実践型リノベーターのひとりは、給料のほとんどを家具についやすところから始まっています。やはり入り口は家具で、そこから住まい全体を統合的に考えたいという流れなので、今後は家具と一緒に住宅をどう売っていくかが、ビジネスモデル的には非常に重要です。

家具のレンタルサービスなども最近登場していますが、家具はリノベーションの入り口、ゲートウェイになるということを意識しましょう。

哲学型のもうひとりは「家は自分の皮膚」と表現し、家を自分の体の一部と捉えていることが特徴です。「リラックスしたときはまさに自分の内部のような感覚になる」という発言からも分かるように、家は自分の体の一部という価値観でものごとを選択しています。

このことから分かるのは、今後重要なのは、単に「デザインが好き」というようなことではなく、その人そのものの価値観が体現できているか、その人の人生観を表したようなものになっているかということを考えて、リフォームのコンサルティングをしていかなければいけないということです。

また、哲学実践型リノベーターのインタビューから分かった興味深い点は「この椅子が辿ってきた道のりは自分の人生に重なりあう」など、デザインや機能とは一見関係のない「ストーリー」で椅子や木を選んでいるということです。

古いということよりも、その木材や家具を人とみたてたときに、どういう人生を歩んできたものなのかという見せ方をすることで、十二分に中古品や傷ものもその人にとってはビンテージ化することができるのです。

今までビンテージは十把一絡げに、産地や保存方法など誰しも理解できる基準で、客観的に「これはビンテージ」と定められていましたが、彼らのような価値観が増えてくると、「その人にとってはビンテージになる」というものがどんどん出てくるため、これからは単に古いものもどんどん価値化できる、ここはひとつビジネスチャンスといえるでしょう。

また、最近は週4日会社員をしながら、セルフリノベーターとしてほかの人のリノベーションを手伝うような人たちがいたり、キャンピングカーで移動しながら生活する人など、どんどん暮らし方も住み方も自由になってくることでしょう。

 

女性のリノベ思考型はもう少し生活に密接したリノベーションをしている人が多く、基本的には子ども部屋、キッチン、リビングなどの部屋ごとのカラーを大事にしています。

彼女たちには哲学というより「〇〇な部屋にしたい」など自分のデザインの趣味や理想の空間があるのですが、それがお仕着せのものでは費用面も含め自分の理想にマッチしてこないため、それを実現するために自分でどんどんやっていこうと考えています。

マクロトレンドとして「持ち家はいらない」という思考がどんどん高まる中、一方で彼女たちは「賃貸っぽく見せたくない」という強い思いがあることが分かりました。このあたりを踏まえると、スマートホーム化などにいくまえに、まだまだできることはあるのではないでしょうか。

 

ほかにも、ユーズド加工で「馴染んだ頃合い」に見せるようなものは今後さらに研究すべき技術テーマです。かつては新品でいかにきれいに見せるかが重要でしたが、その後新品の木材のようにいかに見せるかというイミテーション技術が登場し、今後はリアルなユーズド感を出す技術が求められています。

セルフリノベーターのような人たちをペルソナとして、リノベーションの部材を売るサービスや、リノベーションを手伝ってくれるコミュニティ作りなど、リノベーションはまだほぼどんなビジネスでも作ることができるオススメのジャンルです。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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