前回から始まった商品開発プロセスに関する当連載ですが、前編では商品開発プロセスの簡単な流れと、多くの企業で陥りがちな4つのリスクがあるということを説明いたしました。
後編でも引き続き4つのリスクについて解説していきます。
前編はコチラ→【商品開発のプロセス①】商品開発のアイデア作りの心得と4つのリスク(前編)
商品開発プロセスのリスク③タコツボ化のリスク
社内メンバーだけで何度もプロジェクトを進めていくと、どうしても同じようなアイデアになりがちです。この背景には、普段から常に同じ商品に向き合い、アイデアを考えているメンバー同士では、どうしても考えが似てきてしまうという現実があり、これらを含め、一つの部署に閉じてしまうことを我々はタコツボ化のリスクと呼んでいます。
タコツボ化のリスクには、以下の3つの問題点があります。
①プロジェクト内に上下関係ができてしまう
本来はアイデアを出すうえでは全員平等なはずが、若い人だけがたくさんアイデアを出し、上の人は審査するだけという関係性ができやすいというデメリットがあります。
②アイデアが似てきてしまう
普段から面と向かっている同士だと、結局同じ話ばかりになってしまい、新しい情報が出て来ないため、プロジェクトメンバーはなるべくオープンにして、異なる部署から意見を交換することを心がけましょう。
③盲目的になってしまう
同じ部署内の人間ばかりだと、共通理解がありすぎて、盲目的になり、普段お互いが思っていることが暗黙知のうちにスルーされてしまいがちですが、外部の人間を入れることで、暗黙知になっていたことをあらためて言語化することができます。
たとえば消費財の分野で、よく突き当たるのが不適表示の壁です。「これは法律的に言えない」「〇〇法的に表示できないからこの方向性はやめよう」と、コンセプトで良い内容が出ても、アイデアを丸ごと捨ててしまうという場面があります。
これはとてももったいないことで、「法的に表示できないのであれば他の見せ方はないか」「どこをブラッシュアップすれば突破できるか」など、ほかの方向を模索する必要があります。
しかし、この場合、組織内のメンバーだけで話していても、それを打ち破るアイデアがなかなか出てきません。何故なら同じ組織のメンバーは同じようなマインドを持っているため、「もうこれはできない」と思い込んでしまっているからです。
このタコツボ化を防ぐために、SEEDATAのような組織外のファシリテーターを入れることをオススメします。マインドの違う存在が自分たちの考えとは異なる問いを投げるため、新鮮な状態で新しいアイデアを生み出すことが可能になります。
SEEDATAはこれまで多くの企業の新商品開発に、組織外のファシリテーターとして入らせていただきました。我々は一見関係のない生活者の情報をたくさん知っているからこそ、たとえば「他の業界ではこういう考え方がある」などと他の分野の考え方を転用できるため、壁を突破することにつなげることができます。
また、タコツボ化のリスクを防ぐもうひとつの方法として、社内の横断組織でプロジェクトを実施することをオススメします。
たとえば、研究所のメンバーがマーケティング部署のプロジェクトに参加してフィードバックをしたり、その逆もまたしかりで、とにかく一部署のメンバーだけで進めないことが重要です。
商品開発プロセスのリスク④ビジュアル化のリスク
デザイン思考の考え方がさまざまなところで活用されるようになって以降、プロジェクトの初期からデザイナーやイラストレーターを入れて一緒に考えるプロジェクトが増えてきました。
デザイナーをプロジェクトに入れることで、マーケティングや営業部署などとは違う、新しい考え方・気づきを手に入れることができるようになったことはメリットですが、ここにもひとつ大きな問題があると私たちは考えています。
デザイナーやイラストレーターの方は、出たアイデアをすぐに「今の話はこういうことですか?」ときれいなイラストなどのビジュアルにまとめることができます。ビジュアルがすぐに描けると、全体のイメージ統一を図りながら進めることができるというメリットがあります。
これは一見良いことのように感じますが、実は初期の段階できれいなビジュアルにまとめてしまうと、普段からあまりビジュアルを活用して仕事をしていない人は「いいものができた、これでOK」とそこで発想が止まってしまうという事態に陥ることがあるのです。
ビジュアルは雑なくらいでいいので、低い精度で何度も何度も失敗を繰り返してブラッシュアップしていくことのほうが重要です。初期段階でビジュアル化が進むと、失敗の回数が減ってしまい、アイデアの幅がそこで止まってしまうというリスクに陥ります。
デザイナーやイラストレーターが初期段階からプロジェクトに参加すること自体は良いことですが、大事なことは参加する人たちが、ビジュアルがきれいだからとそこで思考停止しないことと、きれいなイラストをすぐに書かず、ラフスケッチで共有を続けるということです。
商品開発のアイデア初期においては、デザインをきれいにしすぎるとそこで満足してしまうというのは往々にして起きる問題だということを理解しておきましょう。
new SEEDATA流商品開発コンセプト開発(ゾウガメ)
当連載をまとめたホワイトペーパーができました。商品開発のプロセスを分かりやすく解説しています(全31ページ・1.86MB)
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