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SEEDATA
公開日:2020.09.04/ 更新日:2024.08.14

DNVB

カン・ハンナさんが手がける、日本の化粧品業界にイノベーションを起こす新D2Cブランド・mirari

SEEDATAでは事業創造支援メソッド探求の一環として、「連続起業家」の研究であるエフェクチュエーション研究に取り組んでいます。2020年7月、8月に3回連続でオンラインセミナーを開催し、SEEDATAの出資先の創業者の皆さんをゲストに迎え、熟達した起業家の認知パターンであるエフェクチュエーションの観点から起業家の皆さんの創業ヒストリーをお伺いしてきました。

今回は2020年8月26日、D2Cコスメブランドを立ち上げた株式会社Beauty Thinker代表取締役のカン・ハンナ氏をお招きし、最先端のブランド構築、D2C、およびDNVBを作り上げていくプロセスとそのヒントを語っていただいた様子をレポートします。

BEAUTYTHINKERとは

 

カン・ハンナ(以下:ハンナ)「BEAUTYTHINKER代表のカン・ハンナです。2011年に来日し、タレント活動をおこないながら、現在は『NHK短歌』に出演し、昨年歌人として初の歌集『まだまだです』(KADOKAWA)を出版しました。同時に横浜国立大学大学院で都市イノベーション学府の博士課程に在学中で、国際文化や社会に関する研究をしています。日本でタレント活動をしながらアイム・ハンナというコスメを販売させていただいたことで「この活動を本気でやっていきたい」と思い、それを実現するためにBEAUTYTHINKを立ち上げました」

ブランドの立ち上げに際して、「日本の化粧品業界にはイノベーションが必要だと感じた」というハンナさん。ハンナさんが感じた日本の化粧品業界の課題は以下の3点でした。

①低すぎる原価率

既存商品は容器コストが9割と大きく、消費者のためになっていないため、もっと原価の高いものを届けたい

②消費者は化粧品の成分に無関心

食べ物にはどのような成分が入っているか確認する人は増えているが、化粧品の成分に何が入っているか見ない人は多いことを変えたい

➂化粧品業界のEコマースがいまだ弱い

多くのメーカーは卸に依存するルートが中心という状態を変えたい

 

韓国時代を含め20年以上メディアに出演する仕事をしてきたハンナさんが最も大切にしてきたことは、「正しく伝えれば人は気づく。きちんと知らせることによって人は変わる。新しい発見の喜びを感じることで人は行動を変えて成長していく」ということだったといいます。

ハンナ「BEAUTYTHINKERのメンバーは私以外日本人で、アートチームとテクノロジーチームが連携しながら。美にまつわるさまざまな事業を展開予定です。その中でブレずに守っていきたいことは2つ。

ひとつめは人に知らせていく、気づかせたいという気持ちでサービス提供すること。もうひとつはブランドのいちばんの理念でもある「More Digital.More Analog」ということ。世の中がどんどんデジタル化する中で、人のあたたかみやアナログ的なアプローチを大切にしていきたいと考えています。

BEAUTYTHINKERは自社ブランド事業としてD2Cの化粧品ブランドを持つだけではなく、

B2B事業としてさまざまな企業や団体とのコラボ商品の企画開発や、OEM開発としてD2Cをベースに消費者のニーズをデジタルで分析や、私の強味である東アジアや東南アジア地域での海外事業展開も視野にいれています」

D2Cブランド・mirariについて

BEAUTYTHINKERが手がける2020年11月誕生予定のD2C化粧品ブランド・mirariは、「フィロソフィー(哲学)の強いブランドにしていきたい」というハンナさん。mirariに込められた哲学について次のように語っています。

 

ハンナ「歌人活動をおこなう言葉の表現者として、言葉を大事にしていきたいと考えています。mirariというブランドの語源はmirror(鏡)ですが、これには「Look Into your self、自分自信を見つめましょう」というメッセージがこめられています。そのほかにも、Do you know your self?(あなた自身のことを知っていますか?)、Everything is ok(すべては大丈夫です)、Your are not alone (あなたはひとりじゃありません)など、まずは自分のことを深く知ってほしい、素の自分になって、そのままの自分を愛してほしいという思いが込められています。mirariを通して消費者同士がつながることで、女性同士の絆を強く結ばれていくことを望んでいます。

mirariは「Do you know your skin types?」という問いかけをしていますが、肌には人それぞれのタイプがあります。肌は私たちが気づかない間に今日も明日も変化し続けていますが、変化する自分自身のことをよく知らないまま、「この化粧品がいい」「この化粧品が自分に合う」と判断することは困難です。そこで「もっと自分自身の状態を知らせてくれる化粧品や、自分自身の肌に合わせてくれる化粧品があればいいな」と思っていました。mirariは、これまで世の中にありそうでなかった、新たな世界を作りたいという思いから始まっています」

「植物」「花」「自分自身」「鏡」「反射」「自然」「光」「透明」「みずみずしさ」などmirariの世界観を表したアートデザイン

100%ビーガン、エコフレンドリー、非動物実験で作られたmirariが大事にする3つの要素は以下の通り。

①クオリティーの高い良質なプロダクト

肌に良くない有害成分は一切入れず、100%植物由来の原料で商品を作り、ビーガンの国際認証を取得するなどクリーンビューティーを目指す

②肌診断アプリ+簡潔な決済

webページだけではなく、専用アプリを開発し、肌チェックやさまざまなコンテンツを準備中。簡潔に決済できる点も重視

➂熱狂的なファンコミュニティーの構築

D2Cコスメブランドとしてユーザーとのコミュニケーションをもっとも重要視。定期的なオフ会の開催やPodcast、マガジンも発行予定。積極的なオウンドメディア活動により世界観を共有し、熱狂的なファンを作り相互コミュニケーションをとっていく。

 

ハンナ「mirariの掲げる信念のひとつが、「mirariはプロダクトブランドではなく、ライフスタイルブランド」であるという点。単なる化粧品の提供ではなく、「女性が自分自身を知るための生活」を提供するためのブランドを目指しています。

また、そのために、プロダクトに対する情報だけを発信することはせず、自分自身をもっと知りたい、自分自身ともっと向き合ってみたいという気持ちを喚起するようなコミュニケーションをマルチチャンネルでおこなっていきます。

ほかにも、店舗には卸さずオンラインで簡潔にオーダーできるシステムの実現、これを実現するための現代的で洗練されたUI・UXのアプリとECサイト作り、そして何より、フィロソフィーに共感してくれる熱狂的なファン作りを目指しています。購入してくれる方がたを「お客様」ではなく「mi-you(mirari is you)」と呼び、「mirariこそあなたです」というメッセージを伝えていきます。

この熱狂的なファンを作ることで、ユーザーデータ取得を取得し、ユーザーをより理解しながらプロダクトを共創していくことも可能となります」

mirariの第1弾プロダクト

2020年11月1日に発売予定のmirariのプロダクト第1弾となるフェイシャルトリートメントマスク(マスクパック)は、シートマスクパック界の世界売り上げナンバーワンといわれる韓国大手化粧品製造企業とタッグを組み、1年以上の時間をかけて商品開発をおこない、肌タイプに合わせた6種類のマスクを開発しました。マスクの商品コンセプトは以下の通りです。

 

①肌は私たちが気づかないうちに毎日変化します

今のあなたの肌に寄り添ったコスメが誕生、あなたの肌の状態を聞きながら提案させていただく6種類のフェイシャルトリートメントマスク。

②100%ビーガンコスメ

海外では関心が高まっているものの日本ではまだ少ないビーガンコスメ。単にビーガンを宣言するのではなく、最も厳しい審査がおこなわれるフランスのイブビーガンの国際認証を取得。

➂肌によくない有害成分や有害物質成分は入れない安全安心プロダクト

低刺激、アレルギー肌やトラブル肌、敏感肌にも使える、優しい成分

 

ハンナさんはこのプロダクトに込めた思いを次のように語ってくれました。

ハンナ「Good mind→Good product→Good standardという風に、よい考えを持つことよい商品を使うことにつながって、それが自分の人生の中でよいスタンダードを持つことになると考えています。また、時間がたっても中の水分は飛ばない技術を独自開発し、日本では見たことのない、中のシートとエッセンスが外側から丸ごと見える透明なパウチを実現しました。

また、肌診断から「乾燥肌」「オイリー肌」「混合肌」と肌タイプを決めるのではなく、できるだけメッセージ性があって、プロダクトの名前を見るだけで自分自身のことを考えられる時間となるような、心に響くようなプロダクト名をつけたいと思ったので「more moisture」や「more balance」「more love myself」といった名前にしました。ユニセックス仕様なので、香りも甘すぎずアロマ効果もあるので、男性でも使うことができます。

デザインに関しては、プロダクトごとに短歌を作り、その短歌をアートディレクターに見せて世界を作ってもらいました。多様性を大事にするためにさまざまな色を使い、ひとつの色に決めつけないことを大切にしています」

BEAUTYTHINKER創業ヒストリー

セミナー後半は、BEAUTYTHINKERの創業ヒストリーとして、SEEDATA宮井がインタビュー形式でハンナさんにmirariのプロダクトの詳しい内容と世界観や哲学をどのように作ってきたのかをお聞きしました。また、BEAUTYTHINKER・COOの羽田さんにもご登場いただき、創業前の知られざるエピソードも語っていただきました。

 

宮井(以下:宮)「いつ頃からmirariを構想されていたのでしょうか」

 

ハンナさん(以下:ハンナ)「アイム・ハンナという化粧品ブランドを日本で出した2017年以前から韓国でも芸能活動をおこなっていました。その頃からK-Beautyという韓国の化粧品メーカーの方がたと親交があり、日本と韓国の市場はどちらも魅力的で、日本と韓国の両国で活動している自分だからこそできるものがあるんじゃないかと考えるようになったんです。アイム・ハンナ時代にショックだったのは、大手の卸しに持っていったら「原価が高すぎて利益が出せないかも」と言われたこと。私の中ではこれでも原価は低いと思っていたので、そこから「原価が高いものをどう売っていくべきか」を考え、その仕組みを作りたいと思うようになりました」

 

宮「BEAUTYTHINKERのメンバーは、どのように出会って広がっていったんでしょうか」

 

ハンナ「私はタレントでもあるため、これまでは自分のやりたいことすべてをいえる状況ではなく、オファーがくれば受けるという感じでした。そんなとき、歌人として、日本人の経営者の方々に短歌を広めるためのワークショップがあり、短歌の話から自分自身を見つめなおすきっかけになったという話にまで話題が及び、そこで意気投合したのが現COOである羽田さんです。羽田さんから「ハンナさんが本当にやりたいことは何ですか?」と聞かれ、「どうしてもいいプロダクトを消費者に直接届けて、それで喜んでもらいたい。消費者とつながりを持って絆を作りたい」という気持ちを伝えました。

今まで誰にも言えなかった気づきやイノベーションを起こしたい気持ちはありましたが、外国人が日本で起業するにはさまざまなハードルがあります。そこで優秀な日本人の羽田さんが「やりましょう!」と背中を押してくれたことが大きな自信となり、「よしやってみるぞ!」と。それが去年ののことですが、そこから2人で、まずはひたすら事業計画書を死ぬほど頑張って作りました」

 

宮「事業計画で苦労したことやこだわった点についてお話しいただけますか?」

 

ハンナ「この話はオフィシャルでするのは初めてなんですが、私が一番最初に羽田さんと話したときは、コスメブランドを立ち上げたいというより、日本で化粧品の成分があまり知られていないことにイノベーションを起こしたい気持ちが強かった。アメリカ、フランス、韓国にはその国ごとの基準に基づき、この化粧品の成分がよいのかよくないのかを検索できるアプリが存在しますが、日本にはありません。そこで、もともとは化粧品の成分を教えてくれるアプリを開発したいという気持ちからスタートし、事業計画書も100枚くらいのものを作りました。

ところが、一番最初にプレゼンをさせていただいた社長さんに、「ハンナさんがやりたいことってこれ?」と言われ、いつもは割と何でも答えられる私が何も答えられなかったんです(笑)。「あなたが本当にやりたいことは、よくない成分が入っていない製品をダイレクトで届ける。その新しい世界を作ることがあなたの一番やりたいことじゃないの?」と言われて、あまりにもその言葉が心に残って、「そうかもしれない!」と思い、そこから徹夜で羽田さんと二人で事業計画書を作り直して、化粧品ブランドを作るという方向に変えました」

 

宮「羽田さんにもお伺いしたいのですが、事業計画やmirariの立ち上げに携わり、ポイントやこだった部分はどのあたりでしょうか」

 

羽田さん(以下:羽田)「やはり創業者が本当に自分のやりたいことにどこまで向き合えるかどうかだと思っています。ハンナさんの先ほどの話ですが、資金調達をする際、経営者の方がたと壁打ちをして、経営経験が豊富な方から「あなたは本当にそれをやりたいの?」という問いかけがあると、「私はこれでいいんだ」と思う方が多いんです。一方ハンナさんは、他人の意見を聞き入れ「自分が本当にやりたいのはどこなんだろう」ということを繰り返し考えていました。そこに向き合った時間、向き合った深さはとてもよかったかなと今も思います」

 

宮「羽田さんはCFOも兼ねてらっしゃいますが、ハンナさんが哲学や理念を磨いたり、世界観を磨いていくことと、CFOとして事業計画の数字を見せていく折り合いはどのようにつけていましたか?」

 

羽田「どこまでいっても役割分担だと思っています。お互いの持つ役割に対し圧倒的に尊敬し合うというか、この領域はこの人がこういうならば背中を押そうと。逆にファンナンスに関してはハンナさんは絶対的に聞きいれてくれます。役割分担をして背中を預けられるというところは大事ですね。私もいくつのか会社をみてきた中で、それぞれ自信のある人が起業をしていますが、逆に自分が弱いと思うところは素直に認めて意見を聞くという姿勢は大事だと思いました」

 

宮「mirariはの第一弾はフェイスマスクですが、どのような検討を経てたどりついたのでしょうか」

 

ハンナ「最初からビーガンコスメを考えていたわけではありません。有害成分や有毒物質を入れないことを実現するには、手間や費用がどんなにかかっても国際認証をとる必要があると思い、自然とビーガンコスメにたどり着いたんです。日本と韓国のOEM工場をたくさん回る中で、韓国のコスメブランドで世界80か国くらいに進出しているブランドの代表の方に、私の考えているプロダクトと、どこのOEMなら実現できそうかご相談しました。

そこで紹介していただいたのが、現在組んでいる製造元で、なんとすべての国際認証に対応してくれるんです。いろんな担当者にお会いしてきましたが、この会社の担当者にお会いした瞬間「この人しかいない!」と思い、すぐに話をつめていきました。国際認証には工場内の審査も含まれていますが、私たちが毎日工場にいて成分を見られるわけではないので、少しでもリスクがあるところは避けたかったんです」

 

宮「OEM工場のパートナー決めでも、成分を知らない人が多いことに対する義憤と、それを伝えていきたいという思いが強く影響したんですね」

 

ハンナ「はい。それと、クリーンビューティーはアメリカではすでにトレンドになっていますが、これは成分をクリーンにするだけではなく、自分たちのプロセスもすべて見せていく透明性も含まれています。このような手法は化粧品だけでなくアパレルや食品などこまざまなブランドで盛り上がっていますが、これを目指したいと思ったときに、OEM工場の方から「じゃあ透明のパウチを開発しましょうか?」と積極的に提案してくれたことは嬉しかったですね。日本と韓国のOEM工場はほぼすべて回りましたが、同じよい成分でも、韓国のほうが原価を半分以上安く抑えることができました」

 

宮「先ほど、ブランドの哲学、理念、信念、言葉についてお話いただきましたが、初めて聞いた人は「何故こんなに哲学の話をするんだろう?」と思ったかもしれません。ハンナさんにとってmirariの哲学や理念、信念を伝えていくことは、起業の中でどんな効果や意味があるのか教えてください」

 

ハンナ「私自身が2、3年前にさまざまな悩みに直面して、「頑張って生きているけど、幸せじゃないかもしれない」と思うつらい時期がありました。SNSや誰かのInstagramを見たら「いいな」とか「うらやましい」とか、誰かと比較したりされたり、ほかの人のことに目が向きやすくなっていたんです。そのときに、「他人と比較するのではなく、自分自身は何がいちばん幸せと感じるのか、自分自身はどんなものが好きでどんなものが嫌いなのか、自分自身のことをもっと見ていくべき」と気が付くことで、乗り越えることができました。「自分自身のことをもっと知ることで自信にも幸せにもつながる」という発見を広く女性たちに伝えたかったので、フィロソフィーの強いブランドを目指しました。

本来肌タイプによってよいと感じるものは人それぞれのはずなのに、「何故みんな売れている商品をよいというんだろう?」という疑問も、フィロソフィーとプロダクトにつながっています」

 

宮「フィロソフィーはどういうプロセスを経て作っていったのでしょうか」

 

ハンナ「フィロソフィーを作る際はSEEDATAさんに大変協力していただきました。まずはおかしいと思っていることにフォーカスする必要があります。そこに共感してくれる人がどれくらいいるかですが、「Do you know your self?」では大きすぎるため、もっとミクロなところを見ていきました。オイリー肌や乾燥肌、混合肌などいろんな人がいるのに、みんなが同じものをオススメして、同じものがよいという世界で本当にいいの?という疑問を投げかけてみようと。

最初にこの質問をして、「(今使っている)この化粧品って自分のためのものじゃないかも?」と思わせることで、もっとマクロ的に「Do you know your self?」にたどり着いて欲しかったんです。

BEAUTYTHINKERは最初は化粧品ブランドとしてスタートしますが、ゆくゆくはライフスタイルを提案したり、多くの女性に共感してもらえるような仕組みを作れるのではないか、女性たちを支えられる立場として存在感を出せるのではないかと思っています」

 

宮「おかしいと思ったことに注目して自分自身に質問を投げかけながら深めていったんですね。デザインや写真でのビジュアル的な世界観はどのように進めていったんですか?」

 

ハンナ「会社を立ち上げて事業計画を作る中で、羽田さんに「私が一番力を入れたいのはアートディレクターとアートです」と言いました。私は言葉で表現する人間ですが、言葉は集中しているときには心に響くけど、ぱっと見たときの第一印象はビジュアルには勝てません。だからこそ、見た瞬間のビジュアルでmirariっぽい世界を作って、周りから「mirariっぽいね」と言われることを目指したかったんです。

色や写真、プロダクトデザイン、アプリのUI・UXなど、すべてがmirariらしいという世界をアートで作っておけば、アートから入ってくれる人もいるし、私の中ではプロダクトデザインはすごく重要だと思っているので、一番mirariらしさを意識しながら作っています」

 

宮「ハンナさん自身は言葉が専門でデザイナーではありませんが、起業家としてデザイナーにこだわりをうまく伝えていく際はどんな工夫をされましたか?」

 

ハンナ「mirariのアートディレクターたちはもともと幅広く活躍していた人たちなので当然センスはよいのですが、やはり伝わることと伝わらないことはありました。そこで、たとえば事前に「mirariはこういう世界観を持ってるからこの色とこの色を使う」といった風にキーとなる部分を議論しながら決めていったんです。ほかにもmirariっぽい言葉として、「植物」「花」「自分自身」「鏡」「反射」「自然」「光」「透明」「みずみずしさ」など、さまざまな単語を並べたり、mirariを使ってくれる人はどんな人でいてほしいかなどを言語化し並べていきました。そこから今度はどんどん削っていき、いちばんmirariっぽい言葉を単語で表現しました。これをちゃんといかせられるようなデザインにしようと決めたので、アートディレクターは「mirariはこういう世界を作りたいんだよね」と理解してくれました。水彩的な表現にすることで、ひとつの世界にまとめあげてくれてすごく嬉しいです」

 

宮「事業計画的な売り上げ計画や、目標数値的なものは決めているのでしょうか?」

 

ハンナ「アイム・ハンナの経験から、このくらいは売ることができるかもという目安があって、その4倍くらいを目指しています。ここまで1年かけてブランドを磨いているからこそ、4倍くらいの目標値まではいくつもりです。うちのメンバーにも伝えやすい表現にしたいので、明確な数値を出し、「ローンチして4カ月で2万ボックス売ります」というのはひたすら言っています(笑)。実現するかはさておき、それを伝えることで、まずメンバーもそこをひとつのゴールと考えて「4カ月で2万ボックスを売るのはすごいことだよね」と共感してもらい、一緒にそこを目指していく。それが達成できたら次の投資や、新商品開発などを進めていくつもりです」

 

宮「コスト面の管理はどのようにしていますか?」

 

ハンナ「メイドインコリアになるので輸入の仕組みをとることになります。輸入に関する資格を自分たちで持つかも悩みましたが、資格を持つためには在庫管理のプロが必要です。スタート段階から自分たちでおこなってもしっかりとした在庫管理ができない可能性もあるので、資格は1年後に学んでから取得することにして、ひとまず信頼できる輸入代行企業を探す必要がありました。そこで、昔からお世話になっているQVC(テレビショッピング)で化粧品部門の売り上げナンバーワンの会社の社長に私の思いを伝えて、輸入代行をしていただくことになったんです。すごく厳しい会社だからこそ、mirariの商品もリスクを減らすことができると考えています」

 

自らの義憤からブランドの哲学を作り、その考えをプロダクト作りやパートナー選びにまで反映しているmirari。今後の展望としては「アメリカ発でグローバル展開しているD2Cブランド・Glossierのように、日本初のグローバルブランドを目指していきたい」と語ってくれました。

今後もさまざまなプロダクトを出し、さまざまな企業とコラボしていく予定のBEAUTYTHINKERにご興味をもたれた方はぜひinfo@sd-g.jp までご連絡ください。

デジタル時代のブランディングとしてのD2C・DNVB