当ブログでは以前、Pattern(パターン)というDNVB創造会社と、Patternが手がけた第一弾のキッチンブランド『Equal Parts(イコールパーツ)』についてご紹介しました。
今回はそのPatternが半年ぶりにリリースする『Open Spaces(オープンスペーシズ)』という収納家具のブランドをご紹介します。
Patternは家庭に寄り添ったブランドをリリースしていくということを名言しています。自社のブランド群のことを「Pattern family」と呼んでおり、家庭というものは家族に紐づくものだからこそ、家族のようなブランドを作っていくとmediumに書かれています。
彼らがブランドをリリースする際の共通点として、まずプレサイト(予約サイト)を用意し、ブランド哲学をmediumに掲載し、共感してくれた人にプレサイト上でメールアドレスを登録してもらい、初期ファンを集めるという方法をとっています。
メールアドレスを登録したユーザーは、SNSに誘導される場合もありますが、この時点ではプロダクトの説明をほぼされていません。ユーザーに「どんなプロダクトが出てくるのだろうか」と期待感を醸成させることが目的です。発売前からいかに期待させるか、これもDNVBを作っていくうえで重要な要素のひとつになります。
mediumの記事によると、Open Spacesは「本来家はもっともくつろげる、落ち着ける場所であるべきなのに、家の中がごちゃごちゃで汚いと家に帰ってもストレスがたまってしまう。家ってもっとも快適な場所であるべきはずなのに、家に帰ってストレスが溜まってしまうのっておかしいよね」という義憤から生まれたブランドです。
この義憤から着想を得て、家の中を整理整頓して、綺麗に保つことができるホームオーガニゼーションブロダクト(収納家具)のブランドを立ち上げており、ブランド哲学がしっかりと存在する、非常にDNVBらしいブランドといえるでしょう。
Equal Partsしかり、Patternの作るブランドは、生活者の義憤が背景にあるのが大きなポイントなのです。
また、PatternはOpen Spacesを作るにあたり、日本のSpaceからも影響を受けたと述べています。日本の「場・間・和・所」という概念が、それぞれどう違うのかという研究を参照したそうです。
参照記事:
記事によると、
輪:関係構築のためのスペース
場:情報交換のためのスペース
所:所在地としてのスペース
間:休憩としてのスペース
といった風にそれぞれの空間表現ワードを解説しています。
「日本語の空間表現は、その空間における人々の行動や関係性に重点を置く」と考えられ、日本人がスペース(空間)というものを非常に感情的・精神的に捉えていると分析しています。
これまで、アメリカ人にとってスペースといえばあくまで物理的なものとしか捉えられていませんでした。
しかし、物理的なスペースをきちんと整理整頓することで感情的、精神的にも余裕ができたり、気持ちの整理整頓にもつながる、つまり空間と気分・感情・精神は非常に密接につながっているということに気付いたと言います。
彼らは「日本人は古くからこのことに気が付いていたからこそ、床の間を作ったり、茶道で気持ちを和らげたりしていたのではないか」という仮説を持ち、ここから学ぶことがあるのではないかと分析してからOpen Spacesは誕生しました。
Open Spacesが目指すのは部屋を単に片付けることではなく、スペースを作り、それにより心のスペース(余裕)を生み出すことなのです。
Patternはこれまでも「enjoy daily life」=「日々の生活を楽しむ」をブランドミッションとして掲げていますが、「日々の生活を楽しむ」ということは、人間の根源的な欲求です。
キッチンウエアブランドのEqual Partsも、「料理」という根源的な欲求を捉えています。レトルトや半調理品、外食が増え、人びとを日々の料理から解放し生活を楽にしてくれましたが、料理の時間は短縮され、どこかおざなりになっていました。しかし、「料理をしたくない訳ではない。時間があれば、面倒でなければ、できれば料理はしたい」というのが人間の根源的な欲求なのです。一方で整理整頓や綺麗にしたいというのも、料理と同じように人間の根源的な欲求といえるでしょう。これらの根源的な欲求が妨げられている理由や障壁を分析し、これらの欲求をストレートにかなえていくブランドがPatternのブランド群であり、Equal PartsやOpen Spacesなのです。
その結果、社会課題を解決にも繋がっているという点が大きなポイントです。Equal Partsは料理の時間で疲弊している現代人の心の疲れを取り除き、Open Spacesは整理整頓で、空間だけでなく心のスペース(余裕)を持たせることを使命としています。
またこのタイミングで収納家具ブランドをリリースしたのも重要なポイントになっています。米国で、こんまりブーム、断捨離ブームがあった一方で、断捨離を勧めながらも企業は商品を売りつけるという矛盾が生まれている状況でした。断捨離がよしとされる世の中でも、消費者に買ってもらえる商品として収納家具はうってつけであり、時代を読んだ現代ならではのブランドといえるのではないでしょうか。
まだ全容が明らかになってはいないOpen Spacesですが、今回ももしかするとEqual Partsのようにプロダクトとサービス(例えばコーチングサービスなど)がセットになっている可能性があります。なぜなら整理整頓や収納も料理と同じようにノウハウが必要な分野だからです。プロダクトだけでなくサービスを売っていく可能性はおおいにあり得るでしょう。
Open Spacesが目指すのは、上手に収納をして何もない空間(スペース)を作り、その何もない空間から精神的な安らぎを届けることです。この目的に対して、どのようにブランドを創造していくのか、今後も注目していきたいと思います。