日本国内外の先端事例や生活者トレンドをSEEDATA独自の視点で分析し、ブログ形式で配信しています。News

Written by
SEEDATA
公開日:2019.12.19/ 更新日:2021.06.11

DNVB

【DNVBの事例26】ギルティフリースナック定期配送サービス・snaq.me

当ブログではこれまでも国内外のD2Cブランド、DNVBについて解説してきましたが、今回は日本のDNVBの第一人者ともいえる「snaq.me(スナックミー)」をご紹介します。

D2C、DNVBにご興味のある方であれば、一度は聞いたことがある、またはよくご存じのサービスではないでしょうか。

今回は我々が実施したsnaq.meのユーザーインタビューの内容も少しご紹介しながら、snaq.meがなぜ愛されているのか、継続購入につながっているのか、その秘訣をご紹介します。

 

「おやつを変えたい」から生まれたsnaq.meの哲学

 

 

snaq.meのサービス内容を簡単にご紹介すると、snaq.meは2016年にスタートした、スナックのサブスクリプションサービス(定期配送)です。2週間に1度、または4週間に1度の頻度で8種類のスナック(リアルフード)が自宅ポストに届けられます。毎回、開けてみるまで中身が分からない点も、飽きることなく続けてもらうための設計になっています。

また、提供するお菓子は「リアルフード」と呼ばれているように「シンプルであること」をモットーとし、保存料や人口添加物を使用しない、体に優しいスナックです。

さらに、ユーザーからのリクエストや評価情報等をもとに、ユーザーの好みに合わせたスナックがパーソナライズされて届くことも大きな特徴といえるでしょう。

もともとは家族層をメインターゲットとしたサービスでしたが、現在の利用者は単身世帯やDINKSの方もいらっしゃるようで、多くの大人の女性に人気を博していることが分かります(事実、利用者の95%が女性だといいます)。

 

ホームページにも記載されているとおり、snaq.meは「おやつを変えたい」という強い想いからスタートしています。

創業者たちはもともとおやつが大好きなメンバーでしたが、

「コンビニに並ぶラインナップは代わり映えしない」

「原材料を見ると罪悪感を感じる」

「子どもに気持ちよくあげられるものが少ない」などなど…

それぞれが大好きなおやつを「心から楽しめていなかった」といいます。

そんな「おやつ好きにとっての大きな課題を解決したい」という想いから、ギルティフリー(罪悪感を感じない)で種類豊富なお菓子を届けるため、snaq.meを立ち上げました。

現在は、毎月変わるBOXのデザインや、お菓子と一緒に届けられる小冊子も自社で手がけ、梱包、配送までを一貫して自社でおこなっているそうです。

 

snaq.meのようなサービスは海外でも存在します。例えば、イギリスの「graze」やアメリカの「SNACKNATION」というサービスです。

 

SNACKNATIONは、73の禁止成分リストを独自に作成し、自分たちが食べないスナックは提供しないという哲学を掲げているサービスブランドです。

日本ではコスメやスキンケアなどのD2Cは数多く登場していますが、snaq.meのようなD2Cは他に類を見ません。

他社がsnaq.meのようなサービスを始められない理由として「賞味期限の短い商品は在庫を抱えることができない」という問題があります。

大手メーカーが作るスーパーやコンビニのお菓子は、基本的に賞味期限を長くすることで大量生産し、途切れることのない流通を実現していますが、そのためには保存料や添加物を使うことが常識とされてきました。

snaq.meは、その常識を覆し、「ギルトフリーのスナックを作る」という信念があったからこそ、在庫を持たず、生産したらすぐに出荷するという体制を整えることに成功したからこそ、無添加を実現できたのです。

 

snaq.meは無添加を実現するため、ただのお菓子ブランドではなく、テクノロジーとの融合を図っています。

例えば、自社で開発した需給予測システムや、ユーザーからのフィードバックや評価データを商品開発に反映するシステムを組み合わせ、常時150種類以上のスナックの中からユーザーの好みに合わせたスナックを配送することを実現しています。

最初のうちは8種類のスナックのうち、リクエストしたスナックとsnaq.meがキュレーションしたお菓子が半々程度の割合で届きます。回数を重ねるうちにsnaq.meが自分の好みを覚えていくため、サービスを利用すればするほど、より自分好みに最適化されたスナックが届くという仕組みです。

 

とはいえ、サブスクリプションサービスは継続的にお金を支払う必要があるため、やはり最初に申し込むハードルは高くなっています。そのため、多くのサブスクリプションサービスではランディングページで「初回限定〇%オフ」という限定価格で顧客獲得を試みています。

しかし初回に大幅な割引をおこなってしまうと、2回目以降の正規価格が急に高くなったように感じ、結果離脱率が高まってしまいます。

もちろん、「限定価格で購入してくれた100人のうち、1人が続けてくれればいい」という考え方もマーケティング戦略のひとつです。ただし、この方法はDNVBとしてはブランド価値が大きく下がってしまうというデメリット孕んでおり、これではDNVBのコアなファンを生み出すことが難しくなっています。

そこでsnaq.meが初回限定割引の代わりに採用しているのが、招待コードでのユーザー獲得です。招待コードは限られた人しか知ることができないものであり、既存ユーザーからの招待でもあるため、質のいいユーザー=ファンとなってくれるユーザーが集まりやすいというメリットがあります。

snaq.meのユーザーは完璧なパーソナライズを求めていない

では、ここから後半は、われわれが実際におこなったsnaq.meのユーザーインタビューの内容を少しだけご紹介していきます。

 

今回のユーザーは半年前からsnaq.meを愛用しているDINKSの女性です。

サブスクリプションサービスや新しいものが大好きで、これまでもスキンケアやコスメなどのサブスクリプションサービスを試してきましたが、ほとんど続いたことはなかったそうです。

特徴的だったことは、健康的なギルティーフリースナックをうたっているsnaq.meですが、彼女はとくに健康志向が強いわけではなかったということです。サプリメントなど、飲んでいて美味しくない、義務感があるものは飲みたくないという考え方の持ち主でした。

snaq.meを始めたきっかけは、YouTubeでsnaq.meの開封動画をみて、お菓子がおいしそうだったからという理由で、初回500円オフの招待コードが、購入の後押しになったとのことでした。しかし2回目以降継続するかは一度迷ったようで、それでも継続した理由は、snaq.meによって「1カ月のうち1週間はsnaq.meの期間になったから」だといいます。

snaq.meの利用者は、お菓子が大好きで、以前からほぼ毎日お菓子を食べているような人たちが多いと考えられます。1か月間全てコンビニやスーパーのお菓子を食べることには罪悪感がありますが、snaq.meを利用することで、1週間はギルティーフリー週間を作ることができます。

毎日なにかしらのお菓子を食べることに変わりはないのであれば「せめて1か月のうち1週間は無添加で罪悪感のないものを食べる期間があってもいいのではないか」と考えたそうです。

 

また、8種類で約2000円という価格は当初割高に感じたものの、1週間ほかのギルティーな(不健康で罪悪感のある)お菓子を半強制的に食べなくて済むということは、トータルで考えた際、体にとってプラスになることから、現在も継続しているそうです。

スナックの量に関しても、もう少し多ければ嬉しいとは思いつつも、ギルティフリーだからこそ、「健康に配慮してこの量なのだ」と自分自身でポジティブに変換して納得していたことも印象的でした。

 

また、ギルティフリースナックを一度食べ始めると、snaq.meをやめて、もとの生活に戻ることに対してギルティを感じてしまう人もいるといいます。

やはり、お菓子を罪悪感なく食べられるということは、お菓子が大好きなユーザーにとって大きな価値といえるでしょう。

 

snaq.meは、以前ご紹介した「開封の義」をおこなうユーザーが多いことでも有名です。

【DNVBの事例27】DNVBにみられる開封の儀(Unboxing Experience)

 

 

 

BOXを開けると「We Love snaqs made from real food」という企業メッセージが目に入ります。

「real food」という言葉のとおり、添加物は一切入っていないため、賞味期限は短く、コンビニやスーパーに卸す商品には向いていませんが、彼らはギルティフリーで、子どもにも食べさせることができる、安心安全のスナックであることを信念にしています。

パッケージには手書きのメッセージが添えられていることもあり、このように手書きメッセージでブランドとの親密度を高めることができるという点も、DNVBの魅力のひとつといえるでしょう。

 

今回インタビューした方も、やはり毎回snaq.meの箱が届くたびに、開封写真を撮影し、Instagramにアップしていました。彼女は基本的にInstagramには気分が高まったものしか投稿しないといいますが、snaq.meは届くたびに気分が上がるため、開封写真は毎月あげているといいます。

また、同じようにsnaq.meの開封写真をあげている人たちの写真をハッシュタグで検索し、ほかの人には何が届いているか、自分の届いたものとの比較をするのも楽しみのひとつだといっています。

 

届いた商品に対するフィードバック機能についても質問してみたところ、「8個中2個は好みではないスナックが入っていることもあるが、それがいい」と答えてくれました。好みではないものが入っていることをあえてポジティブに受け入れていたのです。

彼女は健康的であること自体は別に嬉しいことではなく、「何が入っているか分からず毎回すごくワクワクすることに価値を感じているので、パーソナライズの打率は7割でも満足している」といいます。

パーソナライズされる部分だけでなく、あえて外してくる部分があることも価値となっているというのは実に興味深い発見といえるでしょう。自分では選ばないスナックが入っているということは、自分好みの素材や味とは異なる、新たな好きを見つける可能性を秘めています。

むしろ1、2種類はつねに新しいもの、予想していなかったものが入っているからこそ、飽きないしおもしろい、続けたいと感じるのです。

 

このように、snaq.meはサプライズやセレンディピティを大事にし「完全にパーソナライズしない」という仕掛けも重要なポイントといえるでしょう。

ただしこれは、嗜好品であるお菓子だからこそ成り立つことであり、お菓子は日常に彩を与えてくれるものなので、遊び心があって然るべきなのです。

スキンケア用品などの場合はマイナスをゼロにする必要があるため、パーフェクトなパーソナライズが求められています。

このように全てを参考にできるわけではなく、商品やサービスによって、細かな設計に配慮することが顧客体験上、重要になってきますので、新商品・新ブランド・新サービスをお考えの方は、ぜひ一度ご相談ください。

 

コメントする

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です