この連載ではコロナウイルスの影響による現在の情勢とアフターコロナを見据え、これまで生活者調査をおこなってきたSEEDATAが、生活者の価値観や行動の変化や、これらを反映した新商品・サービスなどのニュース5選を紹介し、解説していきます。
当連載では毎週、以下のテーマごとにお届けしていきます。
購買・所有/美容・ファッション/健康・医療/娯楽・エンタメ/仕事・働き方/IT・メディア・コンテンツ/家事・家族/人間関係・コミュニティ/飲食/学習・教育/居住・暮らし方/金融・保険/移動/地域・社会活動
アフターコロナでは以上の14カテゴリがメインの変化になっていくため、このテーマに即していくことで、ほぼ全ての生活者起点での社会変化をとらえることが可能であると考えています。
今回は購買、商品の消費について解説します。
①消費意欲の解消・リベンジ消費
アフターコロナの消費行動変化を捉える際には、短期的視点と長期的視点が必要ですが、とくにコロナ収束直後に起きる短期的な消費の傾向として、消費意欲の解消・リベンジ消費があげられます。とくに今自粛されている居酒屋、外食、イベント、へのリベンジ消費は非常に高まることが予測されます。
すでに公的な自粛が解禁された中国では、オンラインフードデリバリープラットフォーム「Eleme」で、業務が再開された途端にタピオカミルクティを1人で1回に77杯を注文したり、焼き肉店で全メニューをオーダーしたりする行動がみられました。
長い間我慢していたり抑圧されていた結果として、業務再開後にコロナ前の消費習慣に一気に戻そうとする爆発的な消費行動が高まると予測されます。
「消費者は心理的な混乱期と適応期をたどるのが一般的で、出来事を消化するプロセスをたどる必要がある。この消化プロセスは1、2カ月間」と言われています。アフターコロナの1、2カ月程度はこうした爆発的な消費傾向を見据える必要があるでしょう。
また、消費だけではなく、前回ご紹介した備蓄にも影響を及ぼし、自宅でも楽しめるようなお気に入りの商品をストックする考え方も増加していくのではないでしょうか。
②「Just Walk Out」技術による買い物の時短・非接触化
Amazonは「Just Walk Out」というレジなし店舗技術をほかの小売業者に販売開始しました。
この技術は消費者がレジに並ぶことなく、かつキャッシュレスで店舗の商品を持ち帰ることを実現しています。公式発表ではカメラ、センサー、コンピュータービジョン、深層学習などの技術を用いて、支払い列に並ぶことなくそのまま店を出ることを実現しています。以前からこのような技術はありましたが、アフターコロナを踏まえて、レジなし店舗の拡大は今後加速していく可能性があります。
われわれの解釈としては、衛生面という観点から店員対消費者、消費者対消費者のような不特定多数との「非接触化」が今後のキーワードになり、消費者の対面接触をできる限り短くするといった購買行動が今後増えていくと考えられます。
結果として、買い物時間を短くするだけでなく、運営にかかる人件費もおさえることができるため、消費者と店舗側、両側面にメリットのある技術といえるでしょう。
➂利他性・持続可能な生活を守る、互恵的応援消費の登場
スマホアプリ「ごちめし」内の「さきめし」というサービスで、行きつけの店に滞在せず支援する動きが登場しています。登録された飲食店とメニューを選んで料金を払うと、6ヶ月以内であればいつでも食べにいくことが可能なサービスです。
自分が好きな店舗や行きつけのお店がコロナの影響で潰れないよう、事前にお金を支払い、お店のランディングコストを支払おうという動きが社会全体で起きています。
④先払いによる支払いタイミングの変化と持続可能な経済の実現
上記と似た動きで、新型コロナウイルス感染拡大の影響で休業要請が相次ぐなど、経営の危機にあるライブハウスを支援するプロジェクト「SAVE THE LIVEHOUSE」(https://savethelivehouse.com/)の動きが登場しています。
専用のサイトを通じて1枚600円のドリンクチケットをインターネット上で前払いすることで、8%の手数料を引いた、1枚につき552円が各店の口座に振り込まれます。「いつか行く」ことを前提にドリンク代の前払いでライブハウスを支援しようという動きで、支援先は、サイトに載っている全国のライブハウスから選ぶことが可能です。
この事例から考えられるのは、ライブハウスのようなオフライン店舗の持続可能な運営を社会全体で支援する動きが今後さらに加速していくのではないかということです。
また、生活者の大きな変化としては、支払いタイミングの変化が上げられます。事前予約自体は以前からありましたが、あくまで利用時期が決定している場合で日程確定型でした。今後はいつ行くかは不明でも、店舗が継続するための日程不特定型の支払い形態が増えていくというのは、消費行動における大きな変化のひとつといえるでしょう。
もう一点、価値観としての変化は地域共生という考え方があげられます。以前は「店や人を応援したい」という応援消費の傾向がありましたが、今後は単なる応援消費ではなく、「互恵的な応援消費」にシフトしていくでしょう。
アフターコロナ後は「これまで永遠にそこにあると感じていた店が、いつ失われるか分からない」という恐れが高まっていくため、自分の好きな店には先に支払いをすることで長く続いてほしい、お互いにメリットがあるからこそ支援するという流れが続くと考えられます。
一方通行的な支援ではなく双方向的な支援になることで、持続可能な生活を守っていくという考え方は強まっていくでしょう。
アフターコロナ以降の飲食店は、いつ訪れるか分からない不景気のためにも、ロイヤリティの高い顧客を作るためのブランディング施策が必要になるかもしれません。
⑤テイクアウト・通販による名店お試し消費
最近、ネパール料理の宅配を「Namaste eats」と呼ぶなど、カテゴリ別にUber Eatsを利用する生活者が登場しています。
その事例として、一ツ星獲得レストランなどが、期間限定でテイクアウトやデリバリーを実施しています。これまで価格や行列、予定などがネックになり行けなかった人気レストランのメニューや、贈答用途でしか購入したことのない食品などを、テイクアウトや通販で購入する動きがますます活発化していくでしょう。
これまで宅配デリバリーといえば、ピザ、外食チェーンを中心に提供されてきましたが、今後はさらに個人の嗜好に合わせたデリバリーサービスや、そのカテゴリに特化したものが増えていくのではないでしょうか。
アフターコロナにより家庭内での贅沢消費が加速していくひとつの示唆といえるでしょう。
今回ご紹介したコロナクリップのまとめは、コロナウイルスの影響により、ひとりひとりの生活者行動の変化や新しく登場した商品・サービスをサマリーし、50~100ほどにまとめたものの一部です。
現在、SEEDATAは購買・所有、美容・ファッションと言ったテーマごとに事例を解析することで、アフターコロナ/ウィズウイルス時代の社会変化を洞察しています。
コロナの影響により現在はSEEDATAもリモートでの活動となっているため、リサーチもインタビューもオンラインでおこなうことが可能です。
業界別ごとにクイックに調べることも可能ですので、ご興味のある担当者さまはお気軽にdaisuke.gouma@seedata.jpまでご連絡ください。