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SEEDATA
公開日:2019.03.15/ 更新日:2021.06.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介48】最新テクノロジー系美容の新規事業開発や新サービス開発のヒント(ビューティーテック)

はじめに~トライブレポートとは

SEEDATAは今後増えていくであろう考え方や行動を示している先進的な消費者グループ=「トライブ」を独自のリサーチによって発見、定義し、調査した結果をレポートにまとめています。

トライブ・リサーチから得られた知見を通じて、推進される企業のイノベーション活動を「トライブ・ドリブン・イノベーション」または「トライブ・マーケティング」と総称し、コンサルティング、支援を行っています。

トライブレポートの詳細と読み方については、こちらの記事をご一読いただければ幸いです。

トライブレポートの読み方

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昔から美容の世界は、サイエンティフィック(科学的)な部分と、物語やビジュアルといった必ずしも科学的ではない要素がかけ合わさり、ひとつの価値をなしています。これまではテクノロジーも物語の作り方もそこそこ進化して、美容の価値もそれらに折り合いをつけながら進化してきました。

しかし、近年、テクノロジーのほうが急速に進化してしまったことにより、ストーリーの部分との折り合いがつかないという現状があります。この新しいテクノロジーと物語の関係性を見直し、新しい価値観やトレンドとして考えようという問題意識がありました。

ビューティーテックを理解するには、まずはこれまででてきている美容の価値観の進化過程をおさえておく必要があります。日本人のヘアケアの歴史を例に考えていきましょう。

そもそも日本人に洗髪するという習慣が定着したのはかなり近年のことで、これは歯磨きも同様です。初めてシャンプーが出たのは昭和初期(昭和5年)ですが、その当時のキャッチコピーには「せめて月二回は!髪を洗ってください」と書かれています。

そしてその三年後にはそれが「週に一度」になり、その30年後の昭和40年には「夏は5日に1回」、さらに昭和58年になり「毎日洗う」というキャッチコピーがついています。

つまり、昔はほとんど行動することもなかった「洗髪」という行為を、どんどん頻度を増やしていったのは、ある種のマーケティング効果であったといえるでしょう。

(参考URL:https://togetter.com/li/1224540)

同様に昔は毎日歯磨きをしているのは日本国民の20%ほどしかいませんでしたが、今では1日3回、さらに歯間ブラシまで登場するなど進化をとげています

ヘアケアの歴史では、最初は洗ってすらいなかったものを、まずはきれいにするところから始まり、次にブリーチやパーマという技術が登場しました。それにより髪が痛むようになり、リンス、コンディショナーなどが登場し、ダメージをケアする流れに。そしてダメージケアの次は見た目の問題として、ハリ、ツヤ、こし、ボリュームなど付加価値型の競争に移行していったのです。

歯磨きも同様で、1日3回の歯磨きの習慣が、歯垢をとることで虫歯を防ぐプラークコントロールという歯科医の言葉から始まり息のブレスケア、そして歯の見た目をよくするためにホワイトニング、歯周病や知覚過敏のケアなどが大きなニーズとしてあり、マイナスをゼロに、ゼロをプラスにするという流れで美容の価値観は進化してきました。

そして外側を美しくすることはもはややりきってしまい、次にやってきたトレンドが内面の美への干渉です。

商品のストーリーの中に「内面も美しいものでなければ本当に美しくはならない」という禅問答のような世界がやってきた、それがインナービューティーというトレンドです。

大きな流れでみると、このインナービューティーというトレンドは今現在も続いています。

ビューティーテックというトライブの説明をする前に、美容に関しては外側の美と内側の美という大きな2つの方向性があります。

外面の美は、たとえばパーマ技術の圧倒的進化、アウトバス、美容機器の圧倒的進化、細胞技術の進化など、外面が劇的に変わる進化などがありますが、大きなトレンドとしてはまだ黎明期といえるでしょう。

一方、内面の美、すなわちインナービューティーというトレンドは最終段階にきています。ストーリー的な部分はインナービューティーをおさえながら、腸内環境などのインナービューティーに関係しそうな技術との関係にフォーカスして調査したのがビューティーテックです。

美容の歴史的な長い経緯を踏まえたうえで、幹細胞テクノロジー、酸素カプセルといった最新のテクノロジーが、インナービューティーの観点からどういう風に位置づけられるのかを洞察した、テクノロジー&インナービューティーについての調査したのがビューティーテックのレポートです。

ビューティーテックの定義は「最新の美容テクノロジーにより、ふだん知覚することのできない細胞の活性状態などにアプローチして潜在的な美を引き出そうとしている」人たちなので、技術をすごく活用しながらも、トレンドとしてはインナービューティーであることがポイントです。

ただし、インナービューティーと聞いて単に「心の健康」と捉えてしまうのはもはや古い考え方です。

最新のインナービューティーは「本来自分の目に見えない・感じられないものもコントロールしようという流れ」であり、例としては腸内細菌、細胞の状態、身体機能、インナーマッスルといったものがあげられます。

この図のように、体内の深層部や自分の目では見えないところまで、いかにアプローチできている実感を得られるかどうかがポイントです。

たとえば「ヨガをして心が美しくなるというのもそのひとつではありますが、心がきれいになるだけではなく、コントロールできないものにアプローチできているかが彼女たちにとっては重要なのです。

美意識の変遷とインナービューティーの登場

一般の人の考える「美」はなかなか言語化できないものですが、それを体現しているのがロールモデル、ファッションアイコン、セレブリティ、カリスマなどと呼ばれる人々です。その彼らがどのように変化してきたかを表したのが美意識の変遷です。

美意識に関しても近年は大きな意味でのインナービューティー型になってきています。90年代の「盛る」、そのカウンターカルチャーとしての「落ち着き」、そして現在では「盛ってる」「盛ってない」という軸ではなく、もっと内面に向いて「自分らしさ」が求められています。

「自分らしさ」という言葉も、「周りにとって自分らしいか」ではなく、「自分にとって自分らしいか」という風に、より内に考え方が向いているのが大きなトレンドといえるでしょう。

このトレンドを踏まえたうえで、美容アプローチも目指す美しさによって異なり、

・スポーツによって美しくなろうとする女性

・食事によって健康的な美をめざす女性 

・素肌を活かしたメイクにこだわる女性

という方向性があります。

単に「この腹筋が美しいから」ではなく、インナービューティーという流れの中で内側にアプローチしているということが評価されているからこそ、スポーツやフィットネスで美しくなろうとしている女性がもてはやされていると考える必要があります。

「フィットネスが流行っている」という表層的なことではなく、インナービューティーという大きなトレンドの最終章としてこういったブームが起きて、健康と美容のクロスオーバーが起きているということを理解しましょう。

美容意識が内側に向いているからこそ食事にも注目が集まり、だから彼女たちは食事をInstagramにあげているのです。その食事も、単に「オーガニックやインスタ映えする食事をあげている」という分析は表層的で、この流れから「(自分が)インナービューティーの意味で美しくなっている感じのする食事」という風に考えることができます。

そう考えると菌活や、サプリよりもスーパーフードのほうが流行ることにも納得がいきます。サプリは科学的に見えている部分にだけアプローチしていますが、スーパーフードは「全体的にコントロールできない部分にも触れている感じがする」というのがインサイトです。

メイクの概念でも綾瀬はるかさん、石原さとみさん、吉岡里帆さんといった「素肌感」のあるロールモデルに人気が集まっています。

彼女たちのアプローチは食事、筋トレ、素肌感と異なりますが、ひとつの大きなトレンドでくくれるということを理解しておきましょう。

そうすると素肌を隠すのではなく、素肌をぼかすファンデーションが出てくる意味も分かりますし、リップも血色のよさがひとつの価値になることも頷けます。

これらはすべて素肌や見えない部分をよくしている、底上げしているという大きなインナービューティーの流れにすべて内包されています。

インナービューティー自体はおそらく今最終章に来ていますが、あと5年はこの流れは続くでしょう。

物語の作り方としては「インナービューティーの意味の拡張」がキーワードです。

つまり「今まではインナービューティーだったが、これからはインナービューティーではない」ではなく、「今までのインナービューティーはこうだったが、これからのインナービューティーはこうだ」というインナービューティーの意味の拡張や変化がおこなわれていくはずです。

この大きなトレンドにテクノロジーが加わっているのがビューティーテックなのですが、どういったテクノロジーが入り、どのような機会領域があるかは最新のものばかりなので、詳しくはお問合せのうえレポートをご参照ください。

今回調査したビューティーテックたちのセグメントと、彼女たちが取り入れている最新の美容テクノロジーの一部をご紹介します。

セルフフューズ

自分の血液の成分をアップデートして取り入れる生活者(PRP療法・オゾン療法)

オーガニックフューズ

人間や植物由来の成分を 培養し取り入れる生活者(ヒト幹細胞美容液)

アレルギーリアクト

異物を取り入れて細胞を刺激し 跳ね返す作用を利用する生活者(マイクロスピア)

PRP

PRPとは多血小板血漿のことで、血小板から採取される成分のことである。血小板とは出血をした際に止血す る役割があり、それと同時にかさぶた=新しい皮膚を作る効果を持つ。新しい皮膚を作ることができるPRPは皮 膚の修復だけではなく、骨や関節を修復する作用もあるため、歯科領域や整形外科領域でも扱われることが多い 成分である。 美容領域では肌を修復させる作用に着目し、ターンオーバーの再生やリフトアップ、くすみなど加齢とともに 抱える悩みの改善に役立てている。

マイクロスピア

マイクロスピアとは海綿から超微粒子加工技術によって取り出した微細なニードルのことだ。それを顔全体に 塗ることによって肌を刺激し、歳を重ねるごとに遅くなる細胞分裂の速度を加速させ、若い頃と変わらない期間 での細胞再生サイクルを行う手助けをしてくれる。 また、マイクロスピアの特徴としてニードルが目視できないほど微細であるため、美顔鍼とは異なり24時間肌 に刺しておくことができ、天然成分でできているため使用後は自然と肌に馴染んでなくなるため、取り外す手間 もかからない。基底層から細胞再生を行い、若い頃と変わらない肌を手に入れられる美容法だ

ヒト幹細胞

ヒト幹細胞とは人の皮下脂肪から再樹した脂肪由来の細胞のことであり、それから分泌される脂肪由来幹細胞 培養液には様々な生理活性物質や組織再生に必要なタンパク質が豊富に含まれている。そのため、ヒト幹細胞培 養液は細胞そのものに働きかけることができると考えられ、再生医療や美容の分野で組織再生に効果的だと期待 されている有用成分だ。特に美容分野ではヒト幹細胞が持つ成分が細胞の受容体と結びつくことで細胞を活性化 する鍵の役割を果たし、また、細胞外のタンパク質やコラーゲン、エラスチン、ヒアルロン酸などの組織形成の 材料にもなると考えられており、アンチエイジングにおける美容効果が高いとされている。

これだけを読むと、まるでサイボーグ人間のように感じる方もいるかもしれませんが、彼女たちをプロファイルリングしていくと、先進的な消費者ですら「最新技術にはまだ十分な安全性がない」と感じていることが分かりました。ポイントとしては「なるべく体内に入れず、いったん表面的にとどめたい」と考えている点です。たとえば整形は、一度してしまえば元通りには戻れませんが、何かあったときにリセットできるレベルの利用をしたいというのがビューティーテックたちの考えです。

実際は皮膚からでも十分全身に広がるものもあるため、この考え方は科学的ではないのかもしれませんが、彼女たちは「飲む行為では内臓を介して全身に影響が広まってしまう」と感じています。

科学的に安全を謳うことより、感覚的にリセット可能であったり、影響を一部分にとどめられそうというアプローチを提案しなければ、最新テクノロジー系美容のPoCは成功しません。

ある程度メーカーが安全を担保し消費者が安心感を感じられる形で出してあげなければ最新技術の押し出しは受容されないでしょう。

もうひとつ、オーガニック系のビューティーテックたちは、自然のものを取り入れたいのでテクノロジーとは無縁なように感じますが、紫外線などの自然の力は強すぎると考えているため、それをテクノロジーの力で取り除いた形でオーガニックを取り込みたいという重要なインサイトも発見することができました。

記事ではこれ以上はご紹介できませんが、ほかにもトライブレポートにはおもしろい機会領域が数多く掲載されているため、お問い合わせの際は、まずは気になるトライブレポート名と「〇〇ビジネスをやっています」ということをお伝えしていただければ、我々がトライブレポートをもとにビジネスアイデアをいくつかご提案し、コンサルティングさせていただきます。

あとは皆さんの会社がすでに持っているリソースと掛け合わせて、新規事業の場合はビジネスモデルを変える、または新商品・新サービスを生み出すなど、それぞれの課題に対応いたします。

たとえば、新商品を作りたいという会社の場合、SEEDATAが提携している会社とこのトライブが世の中に何万人いるかを調査し、その人たちにテストマーケティングしてみて伸ばしていくことも可能です。また、サービス開発の場合もプロトタイプを作ることができますし、ビジネスモデルの場合でも、ビジネスモデルに関する検証された知識を手に入れるPoB(Proof of Business)のプロセスに入ることも可能です。

SEEDATAへのお問合せはこちらから(コンタクトフォームに移動します)。

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