メガトレンド洞察とは?
今回ご紹介する「メガトレンド洞察」とはトライブ調査・マクロ調査・先進的なサービス・プロダクト事例など広範な調査を元に、ライフスタイルやワークスタイルを、一つの視点だけでなく、より幅広い領域から生活者起点で捉えた洞察資料です。
SEEDATAは日頃からトライブや生活者ひとりひとりの声を聞きデータベース化していることが強みですが、一方でそれぞれのトライブを横断的に見ていくと、それらに共通する大きな社会潮流が見えてきます。これらを包括的にまとめたものがメガトレンド洞察です。
メガトレンド洞察の事例
今回はある企業の事例をもとに、実際にメガトレンド洞察の内容と、活用方法をご紹介します。
【与件内容】
今回紹介するのは、大手IT系企業の事例です。我々にご相談いただく以前から、この会社は、技術、政策、人口動態などの大きな社会変化のマクロ情報を捉え、自社にとっての事業機会を探索するプロジェクトを半年ほど実施していました。
しかし、マクロ情報は大きなボリュームの数量的なものは考えられますが、事業アイデアを考えていく際、具体的にすべきサービス内容や、生活者にとって本当にニーズがあるのかなどに確信が持てないという課題を抱えていました。
政策や法律、技術的な問題は分かっても、肝心な生活者のライフスタイルがどのように変化していくのか見通しがたたず、上申できないので、生活者に詳しいSEEDATAに未来洞察から一緒におこなってほしいというご相談をいただけました。
そこでSEEDATAは、たとえば流通、小売り、ヘルスケア、介護、金融、保険、農業、食…といった、大きな市場のジャンルとカテゴリを捉えたうえで、それぞれの領域、業界ごとのメガトレンド(社会変化を受けてN1の生活者ひとりひとりの生活がどのように変化していくのか)まで紐づけて、行動変容の様子と特徴を捉えていくというプロジェクトを提案しました。
実際のワークフローは、1.テーマ設定、2.デスクリサーチ、3.未来洞察という順でおこなっていきます。
1.テーマ設定
まず始めに領域設定を行います。健康、金融、介護などのテーマ設定を実施します。
基本的に、各社様がターゲットとしたい市場はある程度決まっていることが多く、今回のケースもいくつかのテーマをクライアントからいただいていました。
※ここで介護にテーマが決定(他にも領域はありましたが、今回は介護の事例を中心にお話をします。)
2.先進事例のデスクリサーチ
1.に応じた先進事例を調べていきます。
それぞれの領域に対し、たとえばこの分野ではこんな新しいサービスがある、こんな生活者の態度変容がおきているなど、既存の商品・サービスと、行動の変化といった切り口でデスクリサーチしていきます。
今回は介護がテーマだったため、まずは介護に関する先進事例の調査をおこないました。
調査の際に「市販の紐タイプの介護用エプロンはだらしなく見えるから、マジックテープにつけかえている」という発言がありました。市販品は外に出て人と接するときに明らかに介護されているように見えてしまうことが多く、生活者は人からサポートを受けているという感覚をできるだけ避けたいと考えているのです。これは介護されてることへのポジティブな言い訳が欲しいとも言い換えることができるでしょう。
これらのトレンドを踏まえた先進事例として、株式会社フットマークが販売している高齢者専門のエプロンがあげられます。
食事用の介助エプロンは首の後ろで紐を結ぶタイプが一般的でしたが、マジックテープがついているだけでなく、シャツの襟がついたオシャレなデザインを採用しているため、一見するとシャツを着ているようにしか見えません。ジャケットなどを羽織れば正装にも見え、介護用エプロンをつけているとは誰も思わないでしょう。
3.未来洞察
先進事例のデスクリサーチにプラスして、各領域に活用できそうなトライブのインサイトを抽出し、各領域3~5つずつ、合計30個ほどの未来洞察を出します。
未来洞察は共通するものを群にして抽象化をおこないます。たとえば「介護されていると感じたくない「非介護然」のような社会変化がある」という未来洞察が出たときに、その背後にあるものはなにかをを分析し、マクロ環境としてはヘルステックの革命などがあるというようなちょっとした社会洞察も含めて整理していく作業をおこなっていきます。
ここで活用したトライブレポートが、ひとりで介護をおこなう人たちを調査した「ソロ介護」で、「非介護然」(介護然と非ず)はソロ介護ら見えてきた大きなインサイトのひとつでした。
先進事例の中にはすでに「介護されていると思われたくない」生活者に対し、精神的負荷を与えないという提供価値をもたらす商品やサービスが登場し始めています。
トライブインサイト+先進事例を踏まえ、あらためて生活者は「介護を受けていると思われたくない」ということが分かります。ここから、介護者と被介護者の相互が負担軽減できるような商品・サービスが必要ではないかという未来洞察を出すことができます。
他にも、老いた自分を受け入れられない、視力や筋力をこれ以上低下させたくないから、あえて身体機能の維持のために身体に負荷をかける「ストレスシーキング」や、ダンスや食事、あるいは大学に再入学するなど社会的なつながりを増やし、いわゆる寿命を長くするのではなく、健康寿命を長くしていくような価値観や行動といった「健康寿命延伸ケア」もヘルスケアの領域からは見えています。
今ご紹介した二つの未来洞察から、「楽しくヘルスケアしていきたい」という共通のトレンドがみえてきます。
つまり、日々の健康管理の負担が少なく、むしろ健康管理をしているという実感をもたずとも健康管理でき、楽しみながら、自立的というキーワードを前提としたヘルスケア活動が必要になってくるのではないか、というのがメガトレンドになります。
「健康管理の実感がないままに管理をする」「自律的なヘルスケアの支援をするためにはどんなサービスが必要になってくるのか」という問いを立てることで、よりブラッシュアップした状態で機会領域を作ることができるのがメガトレンドの特徴です。
このメガトレンドを約15くらいだすことで、N1から現状の先進的なサービスも踏まえたうえでの社会潮流を捉えることができます。
このように、先進事例、生活者トレンド、社会トレンドを踏まえたときに、生活者にどんな大きな態度変容が起きていくのかという未来の生活全体の変化をメガトレンドと呼んでいます。
メガトレンドを洞察したあとには事業機会を自社のアセットを活用して価値提供できる事業や商品を作り出せるか検討したり、その手段があるか検討しながら、事業アイデアや3~5年後の構想を策定していくことが可能です。
メガトレンド洞察の活用法
メガトレンド洞察は応用幅が広く、今回ご紹介した事例のように新規事業を考えるためのアイデアの着想として使う場合もありますが、たとえば研究所でも活用可能です。研究所は短期的な技術開発ではなく、10年後にマスになるような技術を開発したいという意図を持っていることが多いため、この未来にマスとなる技術開発をどのようにおこなうべきかを探るうえでもメガトレンドは活用できます。
また、たとえばフィンテックや金融業界を見ていくうえでは、ブロックチェーン技術の発達などが新サービスの発展や生活者の行動にある程度影響することもあるため、マクロトレンドを抑えたレポートのデータベースを蓄積しています。マクロ環境の変化を合わせて捉えることでロジックの整合性もあるため、企業で上申をおこなううえでも有効です。
新規事業をやる以上、市場規模に一定のボリュームが必要になるため、その推定をするためにもマクロトレンドは必要です。今回のようにコロナウイルスでリモートワークが推奨され広がるといったこともひとつのマクロトレンドといえるでしょう。
このような不可逆性も捉えていかなければ時代遅れの新規事業になってしまい、3~5年後の生活者の行動が変化したときに対応するのは難しくなります。
ただし、一般的におこなわれているマクロ調査だけでは、最終的に使う一般消費者におとしこまれておらず、アイデア着想やアイデアの磨きこみにあまり生かすことができません。最終的にはN1調査や生活者変化の潮流が必要になるため、この2つをかけあわせてみていくことが重要です。
マクロデータとSEEDATAの持つ生活者起点というデータベースに加えることで、マクロからN1まで、一気通貫して社会潮流を捉えることができるのが、メガトレンド洞察の大きな特徴といえるでしょう。
メガトレンド洞察は、とくに新規事業部を立ち上げたばかりという方におすすめです。たとえば、「5年後までに300億円の売り上げ達成してほしい」「自社の技術、人員といったリソース使ってほしい」といった命題だけで、カテゴリすら決まっていない(またはカテゴリしか決まっていない)、どのように機会領域を見つけ、どのように事業アイデアを設計したらいいか分からないという方は、まずはinfo@sd-g.jpまでお気軽にご相談ください。
幅広い領域、幅広い業界、幅広いサービスを網羅できるメガトレンド洞察の中から、自社のケイパビリティを含めたうえで、どの領域を攻めるかを絞っていくうえで機会領域を検討することができるのが、メガトレンド洞察の大きなポイントです。