今回ご紹介するDNVBは、米Time誌で「世界一快適なシューズ」と紹介されたシューズブランドAllbirdsです。メリノウール(羊毛)から作られた、環境にも優しいブランドになっています。
地球にも優しいAllbardsのスニーカー
元サッカー選手であるCEOティム・ブラウンは、現役時代さまざまな企業からスニーカーをもらっていましたが、デザインにこだわったスニーカーよりも、もっと上質な素材で、手頃な価格で、自然素材にもこだわったスニーカーはないのかという憤りを持っていました。そういったスニーカーがないのではれば、自分で作りたいと考えていました。
そこで持続可能な資源として、これまで靴に使用されることのなかった羊毛に着目したのです。そして再生可能エネルギーの専門家ジョーイ・ツウィリンジャーとともに、靴用に作られた革新的なウール生地(スーパーファインメリノウール)の開発に成功しました。肌に触れるスニーカーの内側はとても柔らかく、外側には汚れを防ぐ技術が採用されています。
Allbirdsはバラク・オバマ、ベン・アフレック、レオナルド・ディカプリオ、ヒュー・ジャックマンといった、エシカル志向の著名人が愛用していることでも有名になりましたが、CEOのティムは「サステナビリティは誇りに思うようなものではなく当然のこと」だと言っています。
サステナビリティ、ヴィーガン、クルエルティーフリー(動物実験禁止)といった考えがシューズブランドにまで広がっているのは、アメリカならではの現象といえるでしょう。北欧をはじめとした海外では、環境に配慮した製品を使用することは一般的になりつつあり、もはやクルエルティーフリーの表示がなければ商品を購入しないという人もいます。
一方、これらの思想が広がっている根底には、その国のカルチャーが大きく影響しています。アメリカやヨーロッパでは、多くの人が支持政党を持ち、政治について語り合う土壌があるため、そもそも「思想に関する感度が高い」といえるでしょう。
かたや支持政党を持つ人が少なく、無宗教の人が多い日本は「思想や考え方を表明する」ということが諸外国と比べると、今まで多くはありませんでした。
たとえば、他者への関心度合いが高いヨーロッパでは、フェアトレードという考え方が当然のものとして受け入れられているため、多くの人の共感を集める考え方になっていますが、他者への関心度合いがヨーロッパと比べて低い日本では、なかなかこの考え方は広まりません。
つまり、今海外で支持されているDNVBの哲学や思想・考え方をそのまま日本に横展開しても、日本人には受け入れられない可能性が多いにあり得るということです。
海外でDNVBを展開する場合はジェンダー論など、社会的メッセージが強いものが共感を呼びやすいですが、日本の場合はより日常や日々の生活に根付いた共感を集めることが必要です。
これが海外と日本で刺さる哲学の違いといえるでしょう。
出典:https://www.cuyana.com/stories/cuyana-x-marie-kondo.html
また、同じくDNVBのCUYANAは、「Fewer, Better Things」という、目先の流行に左右されず、高品質な素材の、本当によいものを長く愛用しようという哲学を提案をしています。
素材の質だけでなく使いやすいデザインにもこだわったバッグのラインナップを増やしたり、コンマリこと近藤麻理恵氏とのコラボレーションを発表するなど、日本でもじわじわと人気を博しているブランドのひとつです。
CUYANAのCEOカーヤ・ガヤルドはエクアドル出身で、貧富の差や大量消費による劣悪な労働環境に義憤を感じ、途上国や環境に貢献したいというビジョンを持っています。
やはり、海外で支持されているDNVBにはこれらの強い哲学が欠かせません。
そもそも「もったいない」という文化が十分に根付いていなかったアメリカで、コンマリの考えが支持されたのも、人びとの中でこれまで続いてきたた大量生産、大量消費、大量廃棄への抵抗感が出てきたタイミングだったからです。大量生産、大量消費、大量廃棄のアンチテーゼとして彼女の考えが受け入れられたといえるでしょう。
このように、社会や世の中に対する義憤が大きければ大きいほど、その反動で哲学が広まっていきやすくなります。