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SEEDATA
公開日:2021.08.04/ 更新日:2021.08.11

トライブ(tribe)

【トライブレポート紹介72】プロハウスワーカーにみる、家事効率化の未来

近年、共働きの増加やコロナ禍で在宅時間が増加し、必然的に生活者の家事の総量は増加しています。
家事の頻度と家事対する意識は高くなる一方で、共働き、もしくは単身者が多くの家事時間を捻出することは困難です。
そこで注目されているのが、家事の代行、お掃除ロボットをはじめとした自動家電ですが、今回は自動化ではなく、家事の外注をしている人びとに注目し、料理代行、テイクアウト、宅配、ハウスクリーニングなどを定期的に導入している人びとにインタビューをおこないました。

本記事では、家事を代替し、人間の手間を減らすことで、家事を効率化・代替化していくことを試みる人びと(Pro家事)の調査レポートの一部をサマリーしてご紹介します。

家事の外注が増加した3つの社会的背景

まず、家事の外注化が増加したおもな3つの要因は以下のとおりです。

①共働き世帯の増加

女性の社会進出に伴い、日本の共働き世帯の数と割合は増加し続けており、2007年には初めて1,000万世帯を突破、2014年には1,114万世帯まで増加している。

ダブルインカムで収入に余裕がある共働き世帯は、プライベートの時間を充実させるため、または仕事と家事/育児を両立させるために積極的に家事代行を利用している。

 

②単身者の増加

日本の生涯未婚率は年々増加しており、2035年には男性29%、女性19%の生涯未婚(単身者)となることが予想されている。

とくに都市部においては、仕事で忙しく、なかなか家事の時間がとれない単身男性が家事代行サービスを利用するケースの増加が見られ、単身層と家事代行サービスの親和性が伺える。

 

③COVID-19による在宅勤務の増加

都内企業(従業員30人以上)のテレワーク導入率は57.8%。令和元年度の調査(25.1%)に比べ2.3倍に大きく上昇。COVID-19の感染拡大がきっかけとなり、大企業だけでなく、中堅・小規模企業においても導入が加速した。

在宅時間が増えることで必然的に家事の総量が増加したことでまた、家事をアウトソースすることで負担を減らそうという試みが広がっている。

 

家事の外注ではなく、ハウスマネジメントの外注

調査で分かったのはインサイトの中でも重要なものが「考える手間、管理する手間を外注したい」というものです。

たとえば、これまで「洗濯物を干す」「掃除をする」という細分化されたタスクが外注されてきました。

一般的に家事をあまりしない人からすると、家事=「料理、洗濯、掃除」というざっくりとした認識ですが、実際はそれらに不随する細かな家事が多数存在し、最近ではネット上で「見えない家事」「名前のない家事」などと表現され、その存在が広まりつつあります。

 

たとえば「洗剤などの消費財の在庫補充」はどうでしょう。オンラインで注文すれば数秒で完了しますが、問題は「家事」と呼ばれるものの中にはこのような細かな管理が無数にあり、「洗剤を注文しなければいけない」と覚えておくこと自体が困難なのです。

人びとが家事を外注し、効率化していった先に、一体何が外注化されていくのかを突き詰めていくと、家事を効率化していく未来でもっとも重要なのは「家の中で(モノだけでなく行動含め)何が足りていないかを把握し、それを途切れることなく補充するという家全体のマネジメント」であることが分かります。

備品や消費財の補充以外にも、Wi-Fiとルーターの設定、普段は行わないフィルターなどの掃除、契約プランの見直しなどもあげられます。

これらは作業のひとつひとつが手間なのではなく、どのタスクをどんな頻度でいつおこうか(最後におこなったのはいつか)という一連の作業を管理しマネジメントしなければならないことが、家事の本質的な大変さといえるでしょう。

ハウスキーパーを雇うことで掃除の手間は省けても、「〇〇を掃除してください」と依頼する総務的な役割は自分で行わなければいけません。日本でハウスキーパーが普及しない理由は、単純に知らない人が家に上がることに対するプレッシャーだけではなく、管理コストが割に合わないという点もあげられるでしょう。

このことから、単にタスクを処理してくれる家事代行ではなく、何がタスクでそれをどう処理すれば効率的かを考えて一括管理し実行してくれる「総務部(=ハウスマネージャー)を家に雇う」感覚が、今後求められていくでしょう。

 

Pro家事の調査から分かった「清掃を代替してくれる清掃員が欲しいのではなくて、家庭内を管理してくれる総務部が欲しい」というインサイトは、家事を効率化するうえで今後もっともキーとなる考え方です。

生活者行動変化仮説:家のホテル化

ここから考えられる未来の生活者行動変化仮説として、「家のホテル化」があげられます。

ホテルのように、清掃や備品の補充をおこなうタイミングがすべて管理された状態を、サービスとして受けられることで、人は家に住むだけでいい未来がやってくる可能性があります。ハウスマネージャーに求められる仕事の一番分かりやすい例として、宅内在庫の管理をご紹介しましたが、宅内在庫管理は現在も依頼することは可能です。

このような家庭内の管理は、今後ファイナンスの領域でも求められていくでしょう。家を会社のような組織と捉えるのであれば、支出と収入の管理をしてくれる経理も、素人ではなく、プロに任せたいと考える人が増えても不思議ではありません。

保険加入を検討する際にファイナンシャルプランナーがライフプランニングをおこなってくれますが、月々や日々の収入や支出に関しても管理し、アドバイスをもらえればかなり楽になるでしょう。

 

家全体の総務、財務だけでなく、子どもの学校や習い事の選択も親のタスクとなっていますが、どんな教育ルートがあり、それに対して有効な塾を提示してくれる人事部的な役割も今後求められる可能性があります。

 

このように「考える手間はコスト」と考える人びとが存在し、今後ますます増加していくことを理解して、彼らに向けた家事代行サービスを開発することが重要です。

 

本レポートについてのお問い合わせはinformation@seedata.jpまで、タイトルに「トライブレポートについて」と記載のうえ、お問い合わせください。

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